「再エネビジネス」最前線

太陽光発電にもAI活用、O&Mコストが大幅に低下

<第19回>ベテラン技術者の「経験」と「労力」を代替

2019/07/31 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

イニシャルと同様に低下

 世界的に太陽光発電のイニシャルコストの低下が進んでいるが、実は並行して保守メンテナンス費用の値段も継続的に下がっている。

 その要因として、AI(人工知能)を活用した遠隔監視システムのデータ分析が大きく貢献している。いままでエンジニアが長年の経験と勘で発見していた不具合を、AIが統計的に見つける手法に置き換わり、大幅な効率化を実現させているからだ。

 経済産業省の取りまとめ資料によると、太陽光発電システムのイニシャルコストは、24~28万円/kWまで下がった。5年前の2013年が37.3万円/kWだったことと比較して、23%の減少である。これは設備だけでなく、土地や造成、許認可取得のコストもあわせたものであるが、O&M(運営・保守)などのランニングコストは含まれていない。

 日本では固定価格買取制度(FIT)の売電単価に合わせて、イニシャルコストが低下し、投資家の利回りを保ってきた。そして、同じく投資家の利回りを保つために、O&Mコストも同様の比率で低下してきている(図1)。

図1●太陽光発電のシステム費用の推移
(出所:経済産業省・調達価格等算定委員会資料)
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メンテナンスに3タイプ

 メンテナンスの考え方は、飛行機の重大事故を引き起こさないために高度に発達した。そのなかでは、事故が起きたときの大きさからカテゴライズし、壊れる前に定期的に部品交換してしまうという「予防保全」によるメンテナンス、壊れそうになったことを察知し、修繕する「予知保全」、壊れたら交換する「事後保全」という3つのポリシーが採用された。

 太陽光発電のメンテナンスでは、パワーコンディショナー(PCS)など影響の大きい高額部品については予防保全のポリシーに基づき、メーカーによる定期点検が実施されている。一方、太陽光パネルやケーブル、架台などの部品は故障によるリスクが限定的であるため、「壊れたら交換する」という事後保全の考え方が採用されている例が多い。

 しかし、太陽光の場合には、出力2MW規模の発電所において、パネルが8000~1万枚程度設置されている。量が多過ぎること、検査のためにブレーカーを切らなければならないこと、移動コストなどを考慮して、日ごろは目視点検のみで、検査装置を利用した点検は年に1回程度で済ます発電所が多い。

 パネルの健全性チェックは、ストリング単位でデジタルマルチメータなどを用いて開放電圧を測定する必要があり、のべ数十時間ほどの作業量となる。

 ただし、事後メンテナンスも故障数が多くなる過ぎると、故障によるコストが無視できないほど大きくなってしまう。したがって、最近はストリング監視を取り入れ、コンピューターによる監視を行い、兆候が生じたときは、タイムリーに交換できるようになった。わざわざ現場に行って測定作業をしなくても、常時モニタリングができれば、メンテナンスの効率性は大幅にアップする(図2)。

図2●メンテナンスの考え方
(出所:筆者作成)
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AIがベテランの「経験」を代替

 太陽光発電のO&Mにおいて、とりわけ時間とコストがかかるのは、不具合を発見する点検作業である。

 しかし、遠隔監視システムによる常時モニタリングにより、人間による点検作業を大幅に削減できる。不具合を発生させる兆候を常に監視しておき、モニタリング対象が一定の閾値を超えたときにアラームを発生させる。ポイントは、モニタリング対象となるデータの特定と、アラームを発生させる兆候か否かの見極めである。

 AIには、外的環境データ(日射強度、パネル温度、日陰)、設備データ(パネル角度、パネル出力特性、PCSロス率、ケーブルロス、変電ロス)、劣化要素(パネル・ケーブル経年劣化、パネル表面汚れ)のパラメータを導入し、太陽光発電のシミュレーションモデルを構築する。このシミュレーターと実際の発電量との乖離から、発電異常をみつける。

 これまでの一般的な監視システムは、主に閾値(しきいち)より出力や発電量が低下しているかどうかで異常を判定していた。例えば発電量が一定値を下回ると「異常」と判断し、太陽光発電の管理者に通知される。

 しかし、発電量は、季節、時間帯、設置地域のほか、発電所の周囲環境などさまざまな要因に依存するため、単なる閾値判定による判断では信用性に乏しく、また判定後も人間による分析・判断が必須となり、実際の運用では、ベテラン技術者の経験と労力が必要という。

 こうした中で、住友電気工業は計測したストリング単位の電力値をAIによって異常内容を判定し、緊急度別に通知するストリング監視システムを開発した(図3)。

図3●予測機能を含む遠隔監視システムの例
(出所:住友電工資料)
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AIが発電予測も

 太陽光発電設備の発電量予測においてもAIが活躍している。発電量予測は、個々の発電所における場合と、マスデータとしての予測の2通りがある。電力会社は供給エリアにおける日射量予測を用いて、太陽光発電による発電量を予測している。

 その予測から、需要予測を差し引くことで、会社全体の発電計画を立てて、安定供給に役立てている。一方、個々の発電所の予測は、システム効率の分析にほぼ等しい。よりピンポイントになる分、高精度な日射量予測が必要となる。

 AIのはじき出す予測発電量と実際の発電量に乖離があれば、なんらかの不具合、エラーが生じているかもしれない。従って、乖離が大きい場合に、その要因を分析し、現場へ急行する必要があれば、現場にて対応活動を実施することになる。

 このように太陽光発電のO&M領域において、AI活用による精度の高い発電量予測は重要な手段となっており、それによる効率性アップが今後ともO&Mコストを押し下げていくと見られる。