「再エネビジネス」最前線

千葉・水上メガソーラー事故、強風で損壊したメカニズム考察

<第21回>アンカーケーブルが切れた理由を設計面から分析

2019/09/25 06:25
大串卓矢=スマートエナジー社長 

経産省が「注意喚起」

 今年9月9日、千葉県市原市のため池「山倉ダム」の水面にある「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」が台風15号による強風で大規模に損壊し、一時火災も発生した(図1)。

図1●台風15号で損壊した「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 今回の山倉ダムにおける水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)の事故を受け、経済産業省は9月19日、太陽電池設備設置者宛として改めて技術基準への適合性を確認するように通達を出した(図2)。普及の進んでいる水上太陽光発電設備へ安全性担保の注意喚起が狙いだ。

図2●経産省は水上太陽光発電設備の安全性確保に関して注意喚起を行った
(出所:経産省)
クリックすると拡大した画像が開きます

 今回のコラムでは水上太陽光発電設備の安全性について考える。

JIS基準を上回る風速か?

 技術基準解釈45条第2項に、「太陽電池モジュールの支持物は、支持物の高さにかかわらず日本工業規格 JIS C 8955(2004)『太陽電池アレイ用支持物設計標準』に規定される強度を有するものであること。また、支持物の高さが4mを超える場合には、更に建築基準法の工作物に適用される同法に基づく構造強度に係る各規定に適合するものであること」とある。

 そして、JIS C 8955は,下端から上端までの高さが 4 m 以下の太陽電池アレイを構築する支持物の設計標準について規定し、その中で千葉県の南部では38m/sの設計用基準風速に耐えられることが必要と記載されている。

 よって、水上太陽光発電設備は、JISに定められる風速に耐えられるように設計されていなければならない。問題としては、今回の台風15号が千葉県南部で最大風速38m/s以上の風が吹いた可能性があることだろう。もし、今後も台風による太陽光発電設備の事故が多発するようなことになれば、JISの見直しが必要になるかもしれない(図3)。

図3●山倉ダム周囲の並木が強風で折れていた
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

「まくれ上がり」には対策

 国内における強風による水上太陽光発電設備の事故としては、先端の「まくれ上がり事故」が2016年に生じた。各発電事業者はその対策として、先端のフロート架台にまでアンカーケーブルを設置したり、フロート内に水を入れたりするなど、端の「まくれあがり対策」を実施した(図4)。

図4●2016年には強風でフロート架台がまくれ上げる事故が起きていた
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 フロート架台は全てのフロート設備にアンカーケーブルを敷設するのではなく、エリアごとに1つのフロートだけにアンカーケーブルを付け、全体を固定する。

 例えば、図5で説明すると、フロートBにアンカーケーブルを設置し、フロートA、B、Cが動かないように係留する設計をしたとする。そのとき、フロート全体では強風に耐えられる計算となっていた場合でも、フロートAはフロートBとのジョイントのみで固定されることになっている。しかし、フロートAが強風にあおられて、中に浮いてしまった場合、それを打ち消すような力はフロートAには働かない。そこで、先端部分はまくれ上がりやすいという構造的な欠陥があることがわかった。そこで、フロートAが風にあおられにくいように、フロートAに水を入れて、重量を増したり、アンカーケーブルに支線を設置して、フロートAにもその支線をつなぐようにする変更が加えられた(図5)。

図5●先端のフロート架台の「まくれ上がり」
(出所:筆者作成)
クリックすると拡大した画像が開きます

「山倉ダム」事故の背景

 山倉ダムの事故は、先端フロートのめくれ上がり防止のため、一番先端にアンカーケーブルを設置していると推定される。それは、南端の1列が残っていることから推測できる。しかし、その1列目と2列目のフロートジョイント部分で、断裂が生じている。この断裂が生じた理由は、フロートB以降の風荷重に対して、フロートAとフロートBのジョイント部分の耐性が弱かったために生じたものだろう(図6)。

図6●山倉ダムの水上メガソーラーにおけるフロート架台の例
(出所:筆者作成)
クリックすると拡大した画像が開きます

 フロート架台のメーカーである仏シエル・テールの資料によると、フロート間のジョイントは耐荷重3.0tである。それに対して、シエル・テール製12度架台の38m/sの強風に対する風荷重は25kgとなり、フロートが 3000÷25=120列 以上になると3.0tの強度では、ジョイント部分が破壊されてしまう恐れがある。

 したがって、少なくとも120列に1つ以上のアンカーケーブルを敷設する必要があり、それ以下のケーブル敷設なら、38m/s以上の強風に耐えられない設計となる。例えば、200列の水上フロート太陽光発電設備があったときに、アンカーケーブルを南端と北端のフロートA、フロートCのみに設置した例を考えてみよう。この場合、アンカーケーブル1本あたりに、フロートは100列(200列÷2本)であり、計算上38m/sの強風に耐えられる計算となる(図7)。

図7●設計ミスになる事例
(出所:筆者作成)
クリックすると拡大した画像が開きます

 しかし、今回のケースのように南から強風が吹いたケースでは、フロートAとフロートBのジョイント部分で考えてみると、199列分の風荷重がかかることになり、3tの耐荷重では耐えられずに、破壊されてしまう。そして、AとBのジョイントが離れてしまうと、フロートCへのケーブル荷重は199列分となり、ケーブルもその力に耐えられずに切れてしまうのではないか。

さらなる強風対策が必須に

 水上太陽光は水上空間の有効利用として、日本だけでなく世界中で設置が進んでいる。しかし、「強風に弱い」という弱点を露呈し、その対応をしっかりすることが求められている。

 特に「山倉ダム」における水上メガソーラーの損壊では、火災が生じ、世界中に有名な事故となってしまった。電源は安心・安全・安価でなくてはならず、水上太陽光の一段の普及には、それらの弱点の克服が欠かせない(図8)(関連記事:台風15号で水上メガソーラーが損壊し火災、強風で流されパネルが折り重なる)。

図8●損壊した「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」の様子
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます