「再エネビジネス」最前線

なぜバイオマス燃料は集まらないのか? 国内外で「奪い合い」

<第26回>輸入も国産も前途多難、燃料調達の課題と注意点

2020/02/28 15:30
大串卓矢=スマートエナジー社長、

 バイオマスの材料をめぐって、世界中で取り合いが起こっている。バイオマス発電は、昔からあるが、それは廃材を燃やして発電するサーマルリサイクル(排熱回収)の方式であった。一方で、廃材の利用には、粉砕して固めることでパーティクルボードのような形の再利用の方法もある。これはマテリアルリサイクル(材料の再利用)と呼ばれる。

 かつてドイツでは、木材のカスケード利用が実現されていたが、バイオマス発電が固定価格買取制度(FIT)の対象となって以来、「サーマルリサイクルVSマテリアルリサイクル戦争」が20年以上前から“勃発”し、材料の奪い合いをやっている。今回は、バイオマス発電の最重要ポイント、木質材料の調達について考えてみる。

すでに売電量は太陽光に次ぐ

 再生可能エネルギー電源のFITによる発電量を見ると、バイオマス発電の買取電力量は太陽光発電に続く2番手となっている。これは、風力発電由来の買取量の約3倍のボリュームである(図1)。

図1●FIT認定量と導入量、買取電力量(2019年9月末時点)
(出所:経済産業省)
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 バイオマス発電量は経済産業省が当初予定していた計画を上回る勢いである。ただ、海外からの輸入バイオマスが中心となっていることから、今後は輸入材料・燃料のバイオマスはFITの範囲外となりそうである。

 そうなるとバイオマス発電は国内材の調達によらざるを得ないが、国内材の調達ができないという事業者が多く、多くのバイオマス発電事業の計画が頓挫している模様だ。その理由として国内であっても燃料調達が思うように出来ないという。

輸入バイオマスが急増

 バイオマス発電の燃料調達は、10MWを超える大規模な発電所は、海外材の輸入調達が主力であり、5MW以下のクラスの中小規模発電所は、国内からの調達が主力となっている例が多い。

 日本のFITの特徴は、燃料の調達ソースに応じて、買取価格を変えている点である。海外からの輸入燃料は、木質チップ、木質ペレット、PKS(パームヤシ殻)などがあるが、2020年度以降は大きな見直しが行われる。国内材料については、一般材と未利用材の区分があり、FITでは国産材を中心とする日本の林業と相互メリットがある間伐材利用を推進する意思がある(図2)。

図2●バイオマス発電の1kWhあたりの売電単価
(出所:経済産業省資料より筆者抜粋)
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 海外材の調達については、大量に輸入しないと運送コストの回収が出来ないので、発電所も規模が大きくなければ成立しない。しかし、規模を追求すると、材料の安定調達が難しくなっていく。今まで他に売られていたものをより高い値段で集める形で調達しようとするなら、それはヨーロッパで生じたサーマル、マテリアルリサイクル戦争のような争奪戦となる。

 それに対して、今まで海外でも使用されていなかったマテリアルであるなら争いは起きないが、そもそもそれだけのボリュームを集めるのも大変だし、どれくらいの賦存量があるのかも不明確である。当社は、カナダやニュージーランドで今まで山場に残してきていた未利用材や製材屑などを収集し、港で購入する事業を過去に実施していたことがある。

 その時は、山場に残している枝葉材をその場でチップにして、トラック、鉄道で運搬した。船一杯のボリュームになるまで集めるのがいかに大変なのかということを痛感した。元来ビジネスは質量あたりの価値が高いものが有利であるが、木材チップはトラック満載のもので数万円の世界である。需要地が遠ければ取引が出来ない。

 現在のFITによるバイオマスプロジェクトも前例が少ないためか、曖昧な調達プランの事業が多い。「調達責任を法的に課しているから大丈夫」という説明を良く聞くが、それで破綻したプロジェクト例がいくつもある。本当に大丈夫なのか、懐疑的にならざるを得ない。

調達は半径100kmが限界

 国内材の場合も材料調達は頭の痛い問題である。国内材のバイオマス発電も運搬コストの問題から、発電所から距離の近い場所から調達しなければならない。トラックで運べる距離を考えると半径100kmが限界となってくる。

 100kmを仮に3時間で運ぶとすると、往復6時間、積み降ろしの時間を考えると1日8時間となる。これ以上の距離を運搬するには、運転手の勤務形態などを工夫していくことが必要になり、長期安定、低コスト運搬という命題に無理が生じてくる。

 したがって、発電所周辺の山の所有者、林業事業者、森林組合などと材料調達の契約を締結し、調達していくことになる。32円・40円/kWhの売電単価を維持するためには、間伐材か森林経営計画の対象森林からの主伐材(主にC材利用)、林内に放置される端材や枝葉などの未利用部位(D材とも呼ばれる)を購入する必要がある。

 しかし、間伐材はどうやって集めるかという問題、未利用部位はトラックに積み込むとしても間隙が大きく運搬コストを回収できないという問題を解決する必要がある。また、木材資源は林業従事者が年々少なくなる中、売手市場となっており、林業関係者との丁寧な付き合いが求められる。新参者が高い価格で買いまくることが出来ない可能性もある。

 また、材の流通構造にも注意を払わないといけない。山林地主、材の出荷者、集荷者、購入者という取引関係者がいる中で、どの事業者にどのように接したら良いのかも重要だ。材を集めたいからといって、直接地主と交渉すると反感を買う場合もある。

 バイオマス発電を新規に設立するときには、時間をかけて地域の社会に上手に入り込み、地域社会のメンバーであることを認めてもらうこと、ビジネスだけではない人的な付き合いを大切にすること、取引関係者からの信頼を高めることなどを丁寧に積み重ねることが求められる。それをしない事業者は、材を集められないことになる。

FIT見直しでの扱いに注目

 バイオマス発電は林業業界に新しい需要を作った。木材という物理的な価値だけでなく、木材の熱量という価値で取引されるマーケットが創設されたためである。輸入材との競争で冬の時代と呼ばれた日本の山林に再び人が戻り、整備された森林が日本の国土に備わることにつながる。これを期待して、地産地消型バイオマス発電は、FIT抜本見直しでもFIT対象電源として残る可能性が高い。

 筆者は地域に根付いた小型バイオマス設備で、その地域のエネルギー循環が実現している岡山県西粟倉村のバイオマスプロジェクトを見学した。林業従事者が生き生きとしていたのが印象的であった。次のFIT期間において、林野庁、経産省はどのようにバイオマス発電を推進していくかが注目されている(図3)。

図3●岡山県西粟倉村のバイオマス集積場
(出所:筆者撮影)
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