「再エネビジネス」最前線

「コロナ不況」で、メガソーラー事業への資金供給が細る?

<第28回>感染防止対策が再エネ産業に与える影響

2020/04/28 10:50
大串卓矢=スマートエナジー社長

建設が止まる事態も

 前回のコラムでは、工事の完工遅れ、役所の処理遅れ、物流の問題など新型コロナウイルスが直接及ぼす影響について解説した。各地の建設現場では職人に感染者が出始めたため、現場が止まってしまっているというニュースも流れはじめた。

 しかし、影響はそれだけではない。中長期的に経済的な停滞、つまり「不況」という形で我々に大きな重しを課してきそうである(図1)。

図1●緊急事態宣言で臨時休業の続く都内の百貨店
(出所:日経BP)
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 新型コロナウイルスの影響により、経済活動の大幅な縮小が余儀なくされる。その状況は深刻である。こうした経済活動への悪影響が再生可能エネルギー業界へどのようなインパクトを与えるのであろうか(図2)。

図2●新型肺炎の世界的な感染拡大により世界経済が停滞している
(出所:ジョンズ・ホプキンズ大学のシステム科学工学センター・4月26日公表)
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不景気がやってくる

 2020年4月17日、中国は1~3月の実質GDPが前年同期比▲6.8%と発表した。その前の四半期(2019年10~12月期)が+6.0%であったの比べ、12.8%の大幅減速であった。その要因を見ると工業生産▲8.4%、個人消費▲19%、建設等設備投資▲16%となっている。全般的に需要が減っているが、設備投資・個人消費の落ち込みが特に激しいことがわかる。

 日本経済に与える影響についても、ここ25年で最大の落ち込みが予想される。ゴールドマンサックス証券が4月7日に発表した「日本経済フラッシュ:緊急事態宣言で、2020年4~6月期の実質成長率は1995年以降で最大の落ち込みへ」によると、2020年4~6月期実質成長率は▲25.0%になると予想を発表した。

 この数字はショッキングだが、それでも米国▲34%、EU▲38%に比べると、落ち込みは少ない。世界中で経済にとんでもないことが起きている。

 7月以降感染が終息に向かい、経済活動が回復するとした場合でも、2020年の年間成長率は▲6.0%が予想される。現在の状況が続く場合は、2けたマイナスの成長率となる。バブル崩壊時の1993年▲0.3%、リーマンショック時の2009年▲5.4%、東日本大震災時の2011年▲0.1%と比較すると、経済活動への影響の大きさが実感できる。もはや我々の生活へ大恐慌なみの経済的プレッシャーがのしかかってくるのは避けられないのだ(図3)。

図3●「コロナ不況」が現実味を帯びつつある
(出所:日経BP)
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太陽光業界への影響

 一般的に、企業は防衛反応として売上高の増加が見込めないときは、売上原価や販売管理費を圧縮し、利益を捻出する。「赤字の垂れ流し」という状況からいち早く脱しなければならないからである。

 その活動は原価や販管費といったPL(損益計算書)項目だけではない。BS(バランスシート:貸借対照表)上も、総資産利益率(ROA)、純資産利益率(ROE)の悪化による非効率経営を改善するために、資産圧縮を行うケースが多い。

 ここから予想されるのは、一般企業が実施するであろう、メガソーラーのような本業と関係の薄い資産の売却、自国集中のような活動エリアの縮小活動である。

 リーマンショック時には、海外からの不動産投資マネーの日本からの流出により、不動産マーケットには売り案件が大量に出て、不動産価格が大きく下がった。このときと同じように、外国人投資家の保有するメガソーラー(大規模太陽光発電所)が売り案件として、セカンダリマーケットに流れてきているようだ。

 日本のFIT(固定価格買取制度)市場に投資する外国人としては、米国、中国、台湾、韓国、タイ、シンガポール、ドイツ、英国、スペイン、カナダのファンドやデベロッパーが積極的であった。彼らの国でも、新型コロナウイルスによる影響は避けられていない。投資方針をどのようにするか、撤退か、現状維持か、より積極的に購入かが注目されている(図4)。

図4●スペイン系企業が日本に建設したメガソーラー
(出所:日経BP)
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金融機関に「貸し渋り」も

 金融機関は、市場から資金を調達し、企業などへの貸し出しにより、資金を供給している。このとき、金融機関は格付けにより、調達コストが変わるため、格付けの判断材料となる指標には一般の企業より敏感である。

 企業の設備投資が伸びず、貸出額が増えない、イコール売上高が増えない場合には、ROAやROEの悪化を避けるために、貸出額を減少させるケースが多い。同時に、不況時は貸出先の経営状態が悪化し、不良債権の増加、貸倒引当金の積み増しなどで、金融機関自身の経営体力が悪化する。

 そこから予想されるのは、新規の大型案件への融資が厳しくなるかもしれないというリスクである。貸出態度の推移グラフを読むと、リーマンショック時にマイナスとなった貸出態度であるが、それ以降は2020年までずっとプラスであった。不動産に加えて、メガソーラーへ積極的に融資し、貸出額を大きく伸ばせた金融機関も多かった。

 しかし、ここへ来て、一部の金融機関では前向きな融資はNGとなってきていると言う。多くの社員が自宅待機、勤務となり、事務処理能力も落ちているなかで、中小企業からの緊急融資依頼が多く寄せられているためだ。しかも、今後は自己資本比率の確保のために、貸出債権をあまり増やさないという方針を打ち出してくる可能性もある。どちらにしても、金余り状態の昨年度までとは、金融情勢は大きく変化しそうだ。

 メガソーラーへの融資も昨年度までのようにはいかないだろう。体力がかつかつとなった金融機関のなかには、もう太陽光発電プロジェクトには融資をしないというところも現れるかもしれない(図5)。

図5●金融機関の貸出態度の推移
(出所:日本銀行資料「短観」)
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ビジネス環境の変化

 不景気により被るかもしれない様々な影響もあるが、物理的に新型コロナウイルスによって移動が制限されることで、ビジネス環境は大きく変化しそうだ。通勤の問題、本社の東京集中の問題、オフィスのあり方、営業の方法など色々なところに波及している。

 そのなかで、「会って関係を構築し、そのやり取りのなかからビジネスのヒントをつかんで提案する」といういままでのような営業手法に大きな変化が求められそうだ。この観点については、重要なテーマとなるだろう。次回に改めて触れたい(図6)。

図6●本社の東京集中が見直される契機にも。非常事態宣言で人影もまばらな東京駅前
(出所:日経BP)
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