「再エネビジネス」最前線

太陽光「リパワリング」の可能性、出来ること、出来ないこと

技術革新と関連制度を睨みつつ、設備更新で発電量アップ

2020/10/28 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

 固定価格買取制度(FIT)が始まって8年が経ち、売電単価40円/kWhや36円/kWhの案件では、設備更新を検討する機会も増えてきた。2020年6月に「エネルギー供給強靱化法」が成立し、廃棄費用の外部積立が規定されるなど、世の中がFIT後の世界に注目し始めている。太陽光発電設備も建物のリノベーションのように、既存の設備の改良投資を行い、新しい発電所として再生させる動きも見られるようになった。今回は、この動きについて解説する。

リパワリングで出力アップ

 リパワリングは、耐久年数を過ぎたような古い設備を更新し、新技術で出力を増強することである。従来、火力発電所や水力発電所などで、実施されてきた。太陽光発電設備も10年経つパワーコンディショナー(PCS)のオーバーホールを機会に、リパワリングを計画するケースも出てきた。

 リパワリングは、技術革新がある場合に、既存パーツを最新式のものに交換することで、効率性を高めるケース、出力アップを狙うケースなどがある。

 例えば、水力発電などは戦前から使用されてきたものを、リパワリングで蘇えらせ、出力を高めるようなケースもある(図1)。

図1●リパワリングで出力を13%向上させたJNCの水力発電所。宮崎県高千穂町にある高千穂発電所
(出所:JNC)
クリックすると拡大した画像が開きます

 太陽光発電では、今のところ、土木工事を伴うような大規模なリパワリングはあまり聞かないが、太陽光パネルやPCSを最新の設備に交代させることで、出力アップを狙う場合が多い。

メガソーラーはパワコン更新も

 PCSは、半導体製品のため、7~10年で基板を交換することがメンテナンス計画上、予定されている。コンデンサー製品の寿命はそれほど長くないため、コンピューター基板自体が駄目になってしまうケースが見られる。それに合わせて、PCSを、新しい設計思想のもと、異なる製品に交換してしまうことで効率性を高める。いずれもメガソーラーが前提であるが、例として、(1)空調レスタイプのPCSに交換して、電気の自家消費量を節約しようというもの。(2)大型のPCSから、小型分散型PCSへ交換し、影の影響を低めて有効稼働率をあげようというもの。(3)力率を考慮して、より高出力のPCSへ変更するものがある。

 PCSには、空調設備を必要とするタイプと、空調の不要のエアコンレスタイプがある。PCSはコンピューターと同じように熱暴走を防ぐ目的から、温度一定以下で運転させる必要がある。よって、多くはエンクロージャー内にPCS本体を納め、エアコンを同時に設置することが必要とされた。

 しかし、最近のPCSは、強制送風機を備え、エアコンレスで動くタイプのものも見られるようになった。これにより、自家消費電力を削減でき、売電量が増えることが期待される(図2)。

図2●エアコンレスタイプのPCSの設置例。東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製2.5MW機
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 ただ、最近では、夏の気温が異常に高く、それで故障しないか、耐久性はどうかという心配も出てきた。

 また、PCSには出力規模により、大容量の集中(セントラル)タイプと、小型分散タイプがある。小型分散タイプのPCSに変えるメリットは、過積載パネルと合わせることで、朝、夕の日照が少ない時の出力を高められること。影の影響が大きい発電所で、その影響を受けにくいストリング設計を採用可能であることである。

 それにより、大型PCSと比較して変換効率が敵わなくても、システム全体では、より高出力なものに生まれ変わることが可能である。ただ、小型PCSは、当社メンテナンスメンバーの間では、良く壊れると嫌われている。それでも、壊れてもすぐに交換復旧が可能ならば利点の1つとも言える。

有効電力の出力を上げられることも

 こうしたPCSタイプの変更ではなく、定格出力自体を上げられるケースもある。

 配電網の電圧を一定内に保つために、系統連系の取り決めで、一定の無効電力を含めて出力が要請されている場合が多い。このとき、無効電力と有効電力の比率はそのままに、有効電力の出力を上げることが可能なケースがある。この時は、PCSの定格出力がより大きいタイプに更新し、無効電力の出力を保ちつつ、有効電力の出力を増やすことが可能となる。

「力率」の理解は欠かせない

 PCSに関するリパワリングには、パワーファクター(力率)の正しい理解が欠かせない。現在では、太陽光発電設備が増えたため、配電線などの系統電圧が高くなりすぎるのを防ぐ目的で、力率調整運転が要請されるケースが一般的である。

 例えば、低圧発電所に要求される95%の力率制御運転では、5%の無効電力と95%の有効電力の比率で電力を出力する。そのとき、売電収入は以前の95%となるのだろうか。確かに、ピーク時には95%になるが、それ以下の時は、影響がない。最高出力付近では、出力が足りなくなってしまうからだ。PCSの定格出力値は、あくまでも皮相電力値であるため、それが一部無効電力の出力に取られてしまうのである(図3)。

図3●有効電力出力とパワーコンディショナー出力の関係
(出所:筆者)
クリックすると拡大した画像が開きます

パネルの更新はFIT期間後

 太陽光パネルは、発電効率(変換効率)の改善が著しい。8年前は1枚210~230W程度であった太陽光パネルの定格出力は、今や400W以上となっている。また、単結晶タイプがほとんどであり、多結晶タイプはほぼみられなくなった。FIT単価が下がり、同じ面積でもより高い出力が求められるようになり、発電効率を求めるニーズが強くなったためである。30年以上の実績があり、耐久性の高さが証明されている多結晶パネルはあまり使用されなくなった。市場が高出力を求めている証拠である。しかし、単結晶パネルの耐久性を不安視する意見もある。

 FIT制度では、太陽光パネルの定格出力を上げる増設は認められていない。過積載が流行ったことから、それを禁じる措置を経済産業省が行ったためである。したがって、太陽光パネルの更新が本格的に行われるのは、FIT後になるだろう(図4)。

図4●太陽光パネルの張り替えはFIT期間後になりそうだ
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

廃棄費用積み立て制度への対応

 廃棄費用の積立制度案の詳細が明らかになってきたが、リパワリングは積立金を利用可能だ。廃棄費用の強制積み立ては太陽光FIT事業者のすべてが適用され、最後の10年間に源泉徴収的に売電収入から天引きされる。積立金額は、パネルの容量(kW)やパワコンの容量(kW)に比例するのではなく、売電量(kWh)に応じて徴収される。

 適切に管理運営している発電事業者にとっては、資金効率が下がるため、工夫したいところだ。しかし、内部積み立ての認定を取ったとしても、積み立てについては厳格であり、あまり資金効率が上がるとは思えない。むしろ、リパワリングと組み合わせて、積立金の取り崩しを上手く活用すべきであろう。「調達期間終了後は、事業終了・縮小のほか、パネルを交換して事業継続する際にも取戻しを認める」ようだ(図5)。

図5●廃棄費用の積み立て制度の方向性
(出所:経済産業省審議会・資料)
クリックすると拡大した画像が開きます