「再エネビジネス」最前線

FIPで生まれる「アグリゲーター」、その役割と真価は?

大手企業が参入するも、存在価値は「FIP認定再エネ」の増加次第

2020/11/30 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

 日本政府は、固定価格買取制(FIT)から、フィード・イン・プレミアム制度(FIP制度)によって再生可能エネルギーを普及させることを決定している。その中で、「アグリゲーター」という新しい概念が採用された。エネルギー供給強靭化法案によって、電気事業法に定義されたのだ。FIP制度の中で、重要な役割を果たすと見られている「アグリゲーター」とは何かについて解説する。

「アグリゲーター」とは何か?

 新しいエネルギー基本計画において、再エネが主力電源として機能することが目指されている。しかし、そのためには、再エネの不安定さを解消することが必要となる。分散型電源などを束ねて電気の供給を行う事業者、すなわち「アグリゲーター」がその不安定さを解消するというイメージが、新しい電気事業法の世界である(図1)。

図1●FIP制度で想定される再エネ発電電力の市場取引方法と主な課題。小規模の再エネ発電事業所はアグリゲーターを通じた売電が多くなる可能性が高い
図1●FIP制度で想定される再エネ発電電力の市場取引方法と主な課題。小規模の再エネ発電事業所はアグリゲーターを通じた売電が多くなる可能性が高い
(出所:経済産業省)
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 電気事業法上、アグリゲーターは適格要件が定められ、ライセンス制となった。リソースアグリゲーターは、小型で分散している太陽光発電のような小規模電源を束ねる役割を担うが、その他にもデマンドレスポンス(需要応答)を実施したり、蓄電池などで需給を調整したりすることも求められる。

 今夏、米国カリフォルニア州では、計画停電の実施を余儀なくされた。詳細な原因分析はまだであるが、今年8月、熱波に見舞われ空調需要が急増したため、需給が逼迫するなか、太陽光発電が夕方から急激に出力低下しため、と推定されている。8月14日午後6時30分ごろから約3時間にわたり、州全体で約30万世帯に影響があった。再エネの主力電源化は、日本にもこのような事態が生じる危険性が増えるため、アグリゲーターはその回避のために重要だと考えられる(図2)。

図2●アグリゲーションビジネスの例
図2●アグリゲーションビジネスの例
ドイツNext Kraftwerke ビジネスモデル全体図(出所:経済産業省・審議会資料、出典:IEEJ デジタル技術を活用した新たなエネルギービジネスに関する調査)
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発電量を予測、外れたらバックアップも

 電力系統を安定的に運用するという「アグリゲーター」の役割を果たす上で重要なのが、太陽光発電と風力発電の正確な発電予測である。FIP制度では、発電事業者側に供給責任があるため、供給を予測し、その通りに電気を供給することが必要となる。もし、その予測が外れた時は、バックアップ電源などでそれを調整しなければならない。「インバランスのペナルティを支払えばよい」という安易な態度は、業界から大いに睨まれる。

 太陽光発電の場合は、天気予報で雲の量を予測し、発電量を推定する。局地的な予測は難しいが、発電所数が広く分散していれば、総体として予測が的中する確率が上がる。風力発電の場合も同様である。また、小規模事業者も数多く集まれば、発電能力(kW)として大きな設備となり、バックアップ電源を備える余裕も生まれるようになる。

 バックアップ電源による需給の調整方法も、電力需要を意図的に増減させるデマンドレスポンスと呼ばれる方法、蓄電池を備える方法、ガス発電など出力を調整できる電源を備える方法などがある。アグリゲーターは、電力需要と再エネの出力状況をリアルタイムで見ながら、タイムリーに需給調整できる能力を備えなければならない(図3)。

図3●アグリゲーターによる提供が想定されるサービス
図3●アグリゲーターによる提供が想定されるサービス
(出所:経済産業省・資料)
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存在価値はFIP下での新規再エネ次第

 このような中、アグリゲータービジネスに参入する日本企業も現れ始めた。2020年11月、東芝エネルギーシステムズ(川崎市)は、世界最大規模のバーチャル・パワー・プラント(VPP=仮想発電所)事業者であるドイツのネクストクラフトベルケと新会社「東芝ネクストクラフトベルケ」を設立することに合意したと発表があった。

 「新会社では、日本国内を中心にVPP技術を活用し、再エネ発電事業者や需要家、発電事業者を束ねるアグリゲーター向けに、計画値同時同量への対応や電力の需給調整市場における最適なトレーディング運用などの支援サービスを提供する」という。まさにアグリゲーターのサービスを提供する会社が設立された。

 このサービスが必要となるのは、FIP制度で、相当の件数で太陽光や風力発電施設が認定を受け、建設される場合である。したがって、FIP制度の下で再エネ設備が数多く建設されるか否かで、アグリゲーターの存在価値は大きく左右される。FIPで大きく増えない場合は、卒FIT案件の大量出現まで待たなくはならない(図4)。

図4●新会社のビジネスモデルのイメージ
図4●新会社のビジネスモデルのイメージ
(出所:東芝エネルギーシステムズ)
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