「再エネビジネス」最前線

「再生可能エネルギー電気」をいかに調達するか?

まず「自家消費」を検討、環境価値は補完的に使う

2021/01/28 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

 固定価格買取制度(FIT)によって太陽光発電が普及した。しかし、その時、投資家のニーズは「投資利回り」であって、「電気」が欲しいというわけではなかった。2021年になって特に、「再生可能エネルギー電気が欲しい」というニーズが高まり、筆者にも相談にのって欲しいとの依頼が増えている。「RE100」への加盟やエネルギー供給構造高度化法への対応、米アップルなどサプライチェーンからの要請、自治体電気調達の入札など、再エネを調達すべき理由が増えていることが背景にある。今回は、再エネ電気の調達問題について考察する。

まずは、「自分で再エネを作る」

 再エネを自分で作り、それを消費するのはエネルギー問題の解決方法としては王道である。水力発電や温泉熱バイナリー発電、風力発電なども考えられなくはないが、多くの企業にとって再エネ電源は太陽光発電であると考えられる。自社設備や隣接地に太陽光発電設備を設置し、現在の小売電気事業者からの電気と一緒に電力を消費する方法である。

 日本では太陽光発電は、年間で1kW当たり概ね1000kWh発電する。15万円/kWで設置出来れば、20年の使用で7.5円/kWhで電気を作り出すことができる。O&M(運営・保守)費用や税金など諸費用は別途かかるが、十分に安い電源であることがわかる(図1)。

図1●日本の太陽光発電では20年使用で7.5円/kWhで電気を作り出せる
図1●日本の太陽光発電では20年使用で7.5円/kWhで電気を作り出せる
(出所:筆者作成)
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 太陽光発電設備を設置するには、計画を建てて、実際に発電を開始するまでに1年程度でできるが、10年、20年という単位で運用しなければ、採算を取ることはできない。従って、計画の見直しは簡単には出来ないということを前提に、設備設置計画を練らなければならない。

自家消費電気をいかに運ぶか?

 自分で太陽光発電設備を設置したとしても、電力消費施設と、太陽光発電設備が離れている場合、電気を運ばなければならない。その時、運ぶ方法として、自営線を引く方法と、自己託送制度(接続送電サービス)を利用する方法の2通りの方法がある。残念ながら、今は電池に貯めてトラックで運ぶなど、貯めて運ぶという方法は、現実的ではないだろう。

 自営線は、自分で電線を引き、発電設備から電力需要設備まで電気を送る。民地であれば架空電線を設置させてもらう地役権を設定したり、道路であれば占有許可をもらい、地下埋設線を引かなければならない。この工事費は、1km・1億円と言われるほどコストが高いので、太陽光発電設備のコストよりも、電線工事がイニシャルコストの予算を圧迫することがよくある。

 自分で電線を引っ張る規模でない場合は、電力会社の既存のインフラを利用すればよい。「自己託送」と呼ばれる方法だ。イニシャルコストを抑えることもでき、一般配送電事業者がそれぞれメニューを用意しているので準備期間を短縮できる。自己託送は、イニシャル投資が不要であるが、ランニングコストが高くなる。また、一般送配電事業者の送配電ネットワークを利用するには、送電する電力量を事前に予測する必要がある。高い精度で発電量を予測し、30分単位で送電会社へ報告しなければならない。送電量が不足した場合はインバランス・ペナルティの支払いを課せられる。ここの部分は専門事業者のサポートが必要となるだろう(図2)。

図2●接続送電サービス料金の例(消費税等相当額含む・単位:円)
図2●接続送電サービス料金の例(消費税等相当額含む・単位:円)
(出所:関西電力)
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小売電気事業者から購入する

 小売電気事業者によっては、再エネによる電気供給メニューを持っているため、それを利用することもできる。電気代は10〜20%程度上がってしまうが、ノウハウ不足の企業や、規模の観点から、アウトソースしてしまうという選択肢もあるだろう。

 事例としては、関西電力の「再エネECOプラン プレミアム」がある。このメニューは、RE100に対応すると同時に、省エネ法や温暖化対策推進法上も排出ゼロとして扱うことができる。温対法の「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」において、使用される電気の全部または一部を「CO2排出係数ゼロ」として、調整後CO2排出量を算定できることを売りにしている。

 国や自治体が電力を調達する際には、再エネ電気を指定することはまれだが、CO2の排出係数が決められていることが多い。環境省が定める電力調達の基本方針は、これまでより0.12kg下げ、0.69kg/kWhが定められている。小売電気事業者としては、自社の調達電源を見直し、「0.69」を守れる水準を達成できないと、公的機関に電気を販売することができない(図3)。

図3●関西電力の「再エネECOプラン プレミアム」の概要
図3●関西電力の「再エネECOプラン プレミアム」の概要
(出所:関西電力)
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「環境価値」の購入

 再エネ調達量のプラス・マイナスを調整する仕組みとして、環境価値の取引制度がある。再エネ由来の電力を電気そのものの価値と環境に良いとされる価値に分けて流通させる仕組み(制度)である。制度としての環境価値はいくつかあるので、それぞれの特徴に応じて利用するとよい。

(1)非化石価値

 「非化石価値」は、主として小売電気事業者のエネルギー供給構造高度化法上の義務達成手段として創設された制度である。従って、現在は会員である小売電気事業者しかJEPXから購入出来ない。しかし、大口電力需要家が直接購入できるような変更も検討されている。

 FIT電源由来の環境価値、原子力発電の由来のCO2無排出の価値が、非化石価値として購入でき、いずれもエネルギー供給構造高度化法に利用可能である。

(2)Jクレジット

 「Jクレジット」は、Jクレジット制度により発行される環境価値である。省エネ法の義務達成手段として活用できる。省エネや森林整備でのCO2削減が中心であるが、非FITの太陽光発電でも、第三者認証を受けるとJクレジットが発行される。

 Jクレジットは、政府が運用し、第三者認証も必須であるため、RE100には活用可能であると考えられる。

(3)グリーン電力証書

 「グリーン電力証書」は、非FITの風力発電や太陽光発電、バイオマス発電でその環境価値を証書化したものである。民間の取り組みであるが、適切な運営が確保されており、「CDP、RE100、SBT、日経環境経営度調査などの各種報告において、再エネの使用量として報告できる。また、温暖化対策推進法の調整後温室効果ガスの削減や東京都や埼玉県などの環境条例における再エネクレジットとしても活用」でき、広く認められた制度となっている。

 グリーン電力証書の制度は、FIT開始前から存在するが、FIT制度に移行してしまう再生可能エネルギーが多かった。FIT制度では、環境価値は国に移転してしまう仕組みであり、グリーン電力証書とFITは相反するものになった。しかし、今後のフィード・イン・プレミアム(FIP)制度は、環境価値を移転させない可能性もあり、その場合にはグリーン電力証書は、環境価値の見える化手法として有用性が高まる可能性がある(図4)。

図4●非化石価値取引市場の動向
図4●非化石価値取引市場の動向
(出所:JEPX)
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自社再エネの不足を環境価値で補完

 再エネ調達に際しては、自社設備として太陽光発電設備などを保有できないかを、まずは考える。金融機関からの借入という伝統的な手法だけでなく、最近は、「第三者所有モデル」など、資金調達手段のバリエーションが増えているので、上手く活用することをおすすめする。そして、足りない部分を、環境価値の購入で補う。環境価値は、いくつかの種類があるので、それぞれの目的に使用可能な価値を購入し、「環境価値」を「消費」することで、目標を達成するとよい。