「再エネビジネス」最前線

非FIT再エネ事業で求められる「電力市場」への理解

JEPX主要市場の動向、発電側基本料金の行方を概観

2021/04/28 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

 2021年度から、太陽光発電事業は固定価格買取(FIT)制度からフィード・イン・プレミアム(FIP)制度、Non-FIT(非FIT)による普及に向けて、本格的に動き出した。菅首相は温室効果ガスの排出量を46%削減する公約を発表したが、太陽光発電に大きな役割が期待されている。

 今回は、太陽光発電事業者がNon-FITで必須となる電力市場の知識について整理した。FITでは送配電事業者に電力購入義務があったため、知識が無くても事業が実施できた。しかし、これからは電気を売る事業者は、そのマーケットについて良く理解していないと、思わぬ損失を受ける可能性がある。

電力卸売市場は「プロ」が参加

 電気は日本卸電力取引所(JEPX= Japan Electric Power eXchange)で売買される。相対のものを除くと、マーケットは日本でここだけとなる。JEPXの特徴は、主に新電力会社が会員となっており、いわゆるプロを相手にした卸市場の位置付けである。

 JEPXには、スポット市場、時間前市場、先渡市場、分散型・グリーン売電市場、非化石価値市場、間接送電権市場、ベースロード市場があり、それぞれ別の商品が売買されている。そのなかで、最も基本となるスポット市場について、理解しよう。

 スポット市場では、翌日に必要となる電気を時間帯ごとに、量と価格の組み合わせで取引される。単位は30分単位の1日48コマで、最低取引単位は1000kWh(1コマあたり500kWh)となる。株式の売買のように、個別の売り札と買い札をぶつける板寄せと呼ばれる方式ではなく、1コマにつき1つの約定価格が決定され、全員がこの約定価格で取引する。したがって電力の価格は1つしかない。

 太陽光発電事業者が電気を売るとき、JEPXの会員でないとこの市場には参加出来ないため、分散型・グリーン電力市場が用意されている。小口の余剰電力を販売出来る市場として2012年にスタートした市場である。1000kW未満の電力も売電可能とし、売り手が売買条件等を設定できる。また、売電は、取引所の会員でなくても、誰でも販売可能であり、会費、手数料等の費用も無料だが、この市場はあまり活用されていない。

 現在の電気の価格を知りたいときは、JEPXのホームページを調べれば良い(図1)。

図1●JEPXのWEBサイトで、取引情報が開示される
(出所:JEPX)
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同時同量とインバランス

 電気は需要量と供給量を一致させないと、電圧など電力品質を一定に保てなくなり、安定した電気とは言えなくなる。途上国などで、電灯がチカチカするといった経験をした方もいるかもしれないが、品質の高い電気は、IT機器や製造業には必要不可欠な存在であることは想像に難くない。

 そこで、日本では制度上、発電事業者や小売事業者は、1時間前までに発電計画や需要計画を30分単位で提出することが求められる。しかし、風力発電など予測が難しい発電方式では、予測が外れることがある。その場合、インバランス料金を支払い、バックアップ体制をとる事業者に支払いを行う。

 インバランス料金は、ペナルティとしての位置付けから、通常の電気の価格よりも高く設定されるが、通常の価格とあまり変わらない値段になっていたり、実務的には予測が難しい価格設定となっていた。

 昨今の年末、年始では、このインバランス料金が跳ね上がり、インバランス料金の予見性の確保、価格決定の透明性確保、市場が過熱してしまうことを防ぐセーフティネットの機能などが求められ、制度改革が行われる予定だ。同時同量原則の観点から、太陽光発電は発電量の予測が重要となり、インバランス料金の支払い回避のための手法が重要となる発電方法であることがわかる。

「非化石価値取引市場」は制度変更へ

 過去にこのコラムでも何回かとりあげた、非化石価値であるが、非化石価値はJEPXで取引できる。現在、JEPX会員のみ購入可能であるが、会員でなくても購入できるように制度変更される。

 非化石価値取引市場は、「非化石電源(再生可能エネルギー、原子力)からの電気の持つ「非化石価値」を証書化し取引を可能にするために創設された市場」である。証書はエネルギー供給構造高度化法(高度化法)で電力小売事業者に課せられた非化石電源比率に使用することができる。(関連記事

「需給調整市場」がスタート

 再生可能エネルギーが普及してきたため(17%)、電気の周波数を一定に保つための調整力に対するニーズも大きくなっている。この調整は送配電会社が実施している。今まで、送配電会社ごとに公募調達してきたが、2021年4月から市場から調達することになった。

 需給調整市場には、蓄電池やデマンドレスポンス(DR=需要応答)、負荷設備を制御することで、調整力を売ることが出来る。これらは、一つの設備だけで大きな調整力は供給できないが、アグリゲータがこれらの調整力を集約し、社会に供給することが期待されている。

 将来は、電気自動車(EV)の電池、家庭の蓄電池を多数オンラインで制御し、その地域に予備力、調整力として役に立たせるアグリデータが活躍するかもしれない(図2)。

図2●需給調整市場でもアグリゲータの役割が期待されている
(出所:経済産業省)
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「発電側基本料金」の行方

 経済産業省は、電力自由化の度合いを毎年高めていく方針である。そして、電力品質を確保するための仕組みや透明性を高めつつ、コストを最適化することが、制度改革の趣旨である。太陽光発電事業者にもこれらの制度改正は関係がある。FIT制度は、「難しいことは電力会社に全てお任せ」というイメージの制度であったが、そのFITも終わりが見えてきている。

 例えば、「発電側基本料金」は、太陽光発電事業者にも2023年度から課金されることになった。これも電力自由化の文脈で捉えられる。今まで託送料として電力需要者が負担していたが、電力需要者だけ出なく、電力供給者も負担すべきとの意見から制度改正に至ったものである。

 電力供給者=電力会社、電力需要者=国民という図式であったものが、需要者も太陽光発電をしたり、余剰の電気を売却したりと、需要者と供給者の区分が曖昧になってきた。

 発電側基本料金を議論した1月25日の制度設計専門会合では、発電容量(kW)に加え、発電電力量(kWh)に対しても課金することが決まった。課金の比率を、発電容量と電力量で1対1とするため、全国平均の発電容量あたりの課金額は75円/kWとなる見通しである(図3)。

図3●国内で動き出した電力取引市場
(出所:OCCTO ホームページ)
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 このように電力自由化が進むことで、必要となる知識が増える。それにより、事業者の自由度が高まり、コスト効率的な市場が形成されるからだ。つまり、上手な事業者が選ばれる仕組みを作ること。これが現在、進んでいると理解している。