「再エネビジネス」最前線

「46%減」目標で低圧太陽光に脚光も、O&Mが課題に

AIを使った「スマート保安」で大幅にコスト削減も

2021/05/27 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

太陽光を低圧事業用で積み増し

 菅首相が表明した2030年度の温室効果ガス「46%減目標」の達成シナリオにおいて、再生可能エネルギーの普及は重要な位置付けとなっている。洋上風力発電が着目されるが、2030年までの大規模な普及は間に合いそうもない。

 消去法的に、太陽光発電設備に再びスポットライトがあたるだろう。しかし、今後も継続的に多くのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が新設されていくとも考えにくい。

 したがって、低圧連系する事業用太陽光が数多く設置されることになるのではと、私は推測している。その結果、問題となるのは、適切なO&M(運用・保守)である。現在でも、低圧太陽光の不適切な運営が問題となっているのに加えて、更にそれを積み増さざるを得ない状況となる可能性があるからだ。

低圧事業用太陽光発電所の設置例
低圧事業用太陽光発電所の設置例
(出所:日経BP)
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O&M費用を捻出できない

 日本では、連系出力10kW以上50kW未満の野立ての低圧事業用太陽光が多く、MWベースで37%、発電所数でいうと95%以上に達している。この低圧太陽光の保安は、事業者の自主的取り組みに委ねられている。そのため、個人が運営する発電所のメンテナンス不足が事故を引き起こすケースが目立つ。

 そのため、経済産業省は低圧太陽光の発電設備について、保安の取り組みを強化する方針を発表している。経済産業省が問題視しているのは、保安が不十分な設備が散見され、事故を引き起こしている現状だ。今後は、事業者に保安を外部委託することを促す制度を走らせようとしている。

国内太陽光発電の規模別・導入量推移(単位:GW)
国内太陽光発電の規模別・導入量推移(単位:GW)
(出所:経産省の資料を元に日経BP作成)
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 しかし、問題は、小規模な太陽光発電はO&M費用の負担能力に乏しく、適切な保安サービスを受けられないのではないかという点だ。保安のために専門技術者が動く場合に、1日数万円はどうしてもかかってしまうが、売電収入が少ない場合には、売電収入に対してO&M費の占める割合が高くなってしまう。義務化しても実効性を伴う施策にならない恐れがある。

 例えば、太陽光パネルの出力100kW(過積載比率2倍)で年間売電収入が200万円の低圧事業用発電所があるとする。そのオーナーのキャッシュアウトの一番大きなものは、期初のローン返済額である。設備購入を2000万円とすれば、15年返済の想定で、年間の返済額は元金返済額と利息の合計で、150万円前後となるだろう。その他に、償却資産税や借地料などを支払う必要があり、O&M費用の支払い原資はかなり限られていることがわかる。100kWは低圧の太陽光発電としては大きいものに分類されるが、それでもフルローンで調達するとオーナーの資金的な余裕はほぼない状態となる。

46%減達成シナリオの中心に

 菅政権が打ち出した「2030年度の温室効果ガスを46%削減する」という目標は、2019年度12.1億tの排出量を、7.6億tに削減するという野心的なものである。第6次エネルギー基本計画の策定が進むなかで、44%のCO2フリー電源比率を60%近くまで引き上げると推測される。

 風力発電と太陽光発電の新規設置で比率を高めることが計画されているが、太陽光発電は、設置場所の問題が大きい。現在は、農地や地球温暖化対策推進法で規定される促進地域の活用が現実的になるのかどうかに注目が集まる。同時に、電力系統への連系ができるのかという問題もある。

 しかし、洋上風力発電の普及が見込めない2030年までは、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーを増加する必要がある。そのときに、低圧事業用の太陽光発電設備が中心となる可能性が高い。

 これまでの経産省の有識者会議の議論では、低圧事業用太陽光はFIP(フィード・イン・プレミアム)制度による支援対象外だが、「46%削減」を受けて見直され、FIPの対象になる可能性もある。一方、すでに野立て型の低圧事業用太陽光をコーポレートPPA(電力購入契約)に近いスキームで開発する動きも顕在化しており、すでに採算ベースにのっている自家消費型に加え、野立て型でも低圧事業用太陽光の開発が継続する可能性がある。

2022年度における太陽光発電のFIP/FIT制度・入札制の対象イメージ
2022年度における太陽光発電のFIP/FIT制度・入札制の対象イメージ
(出所:経産省)
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「スマート保安」への期待

 小規模太陽光発電に対して有効な保安を実施するには、AI(人工知能)などを活用した「スマート保安」の体制が不可欠である。なぜなら、太陽光発電の専門技術者は現在でも不足気味であり、太陽光発電設備の増加ペースの方が早い。また、小規模太陽光発電設備オーナーが支払い可能なコスト水準まで、メンテナンスコストを下げる必要がある。

  データ分析によって設備状態の正常異常がAIによって評価され、状態監視コストが低くなれば、異常になるまでメンテナンスコストを節約できる。人間で例えれば、明らかに正常とわかっている事項について、高い検査費用を払って専門医師の診断を受ける人は少ないだろう。しかし、スマートウォッチなどで安く状態監視を実施し、異常である兆候があるなら、詳しく検査するコストを払う人も多いだろう。

  遠隔監視システムが普及するなかで発電設備の発電データは容易に入手可能となった。それにより、 その状況をAI に学習させることで、正常ではない状態の検知が可能となっている。それから異常状態のデータの特徴をAIが学習すれば、AIは発電設備の異常と、異常となっている原因を推定できるようになる。その推定の上で、人間が点検することで、異常の早期発見とメンテナンスコストの削減が可能となる。

  46%削減を達成したとしても、不適切な運営の太陽光発電所だらけになってしまっては意味がない。保安のあり方も議論の範囲に入れるべきであろう。

スマート保安による太陽光発電設備保安イメージ
スマート保安による太陽光発電設備保安イメージ
(出所:経済産業省「電気保安分野 スマート保安アクションプラン」)
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