「再エネビジネス」最前線

太陽光「セカンダリー案件」、売買時の7つのリスク

RE100企業の増加で事業会社にも買い手が広がる

2021/06/29 00:10
大串卓矢=スマートエナジー社長

FIT案件獲得の有力手段

 固定価格買取制度(FIT)による新規の太陽光案件の供給が、ほぼなくなってきた現在、稼働済み発電所を売買するセカンダリー市場はFIT案件を追加で取得する有力な手段となってきた。2021年度には1210MWに拡大するとの予測もある。

太陽光発電所セカンダリー市場の市場規模推移・予測
太陽光発電所セカンダリー市場の市場規模推移・予測
(出所:矢野経済研究所)
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 今回は、現在のセカンダリー案件市場の状況について、実例を交えながら解説する。

入札制度の改善で活性化

 セカンダリー案件を見る前に、グリーン(新設太陽光設備)市場の状況を見てみよう。入札制度が導入されて以来、グリーン案件の供給は目にみえて減った。しかし、2021年6月に太陽光向けFITの入札結果から、今後に期待できるようだ。

 なぜなら、今回の入札で初めて募集容量208MWに対して、その全てが落札されたからだ。今回は、事前に上限価格(11.00円/kWh)を公表した。落札されたのは135件・約208MWで、最低落札価格は10.00円/kWh、最高落札価格は10.98円/kWh、加重平均落札価格は10.82円/kWhであった。使いにくいと言われた入札制度の改正の効果が現れた。上限価格が公表され、入札価格の目安が事前に分かったこと、入札保証金の没収要件が緩和されたことが大きい。

今年度から入札制度の仕組みが変更・改善された
今年度から入札制度の仕組みが変更・改善された
(出所:経済産業省資料)
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 来年度から始まるフィード・イン・プレミアム(FIP)もFITの大規模案件と同じように入札によるFIPプレミアム金額を決定するため、FIT入札制度が閑散としていた今までの状況では、FIP制度も心配であったが、今後に期待が持てる内容となった。

セカンダリーの供給と需要

 FITによる新規案件の市場への供給は、ほぼなくなりつつある。FIT認定のID、土地売り情報はより貴重になり、セカンダリー案件はFIT案件を増やす手段としての価値が高まっている。ただ、セカンダリー案件の供給量は不明である。新型コロナによる経済危機が太陽光案件の売り圧力となるとの見方もあったが、今のところ、売却理由として新型コロナを挙げる売買事例は目立っていない。

 しかし、外国資本のSPC(特定目的会社)売買によるバルク売りは、取引規模が大きいので目立つようになってきた。税務メリットを考え、会社売買を希望する例が目立つ。特別高圧案件、高圧案件、低圧案件の規模を問わず、売りたいとのニーズは常にあると感じている。当社で言えば、常時50~60件程度の売り案件情報がある状態である。

 セカンダリー案件の需要は、以前から買い手の中心であるファンド・金融系投資家が相変わらず買い意欲が旺盛である。上場・非上場ファンドの規模は増加中で、上場インフラファンドの時価総額は、2021年1月に1300億円であったものが、1600億円まで上がっている。

 最近、新たな買い手として浮上しているのが事業会社である。彼らはRE100(再エネ100%目標)を自ら掲げ、もしくは掲げている企業を得意先に持つため、本業を続けるためにも、再生可能エネルギーを調達しなければならない。よって、FIT期間終了後の太陽光発電設備の価値(ターミナルバリューと私は呼んでいる)を値付けできる投資家となっている。ここで差がつき、ファンド系の投資家より高値で発電所を購入している状況が見られるようになった。

 また、金融庁と東京証券取引所は上場企業に適用するコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を改訂する。ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した事業に資金を誘導するため、気候変動が事業に与えるリスクや対応策を上場企業に開示するよう求める。

 その時、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づいた開示が求められるようになる。TCFDは、投資家向けに気候変動問題に関連した情報の開示フレームワークを提示する。企業にとっては脱炭素社会における経営戦略を立案し、投資家へ説明しなければならない。従って、上場企業は気候変動リスクヘッジのために、自ら再エネを調達するというプレッシャーを受けることになる。

SPC売買のメリット・デメリット
SPC売買のメリット・デメリット
(出所:スマートエナジー・JPEA講演資料)
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セカンダリー案件のリスク

 セカンダリー案件の売買時、デューデリジェンスという手続きでリスクの洗い出しを行うが、筆者が経験した、重要だと思うリスクの例をここに挙げる。

(1)パネルメーカーの倒産
パネルメーカーの長期保証が無い案件をどのように評価するかという問題になる。PID(Potential Induced Degradation)が大規模に生じたら、大きな損害が発生する。

(2)土地の地主が新たな買い手に「NO」
賃貸している土地の地主承諾が取れないケースがあった。新しい買い手との折り合いがつかないと土地賃貸借契約が締結できずにブレイク(不成立)してしまう。

(3)造成工事が不十分である
排水関係の不備、引抜き強度の問題、架台の洗掘などが見られるメガソーラー(大規模太陽光発電所)は多い。それが大規模に発生している場合は、そのメンテナンスコストの算出で、売買金額を下げてほしいという買い手からのリクエストに繋がるが、売り手が承諾しないケースが多い。

(4)元施工会社(EPC)の与信不足
EPC(設計・調達・施工)サービス会社の与信が不十分な場合、瑕疵担保責任の履行能力に備えて、引当て対応するが、ディスカウント要請となった。現在問題が発生していない場合が多く、売り手はなかなか承諾できないディスカウント要請である。

(5)接道に不備がある
よく調べると道路づけで不備があることがわかったが、改善できずに破談となった事例があった。開発時に接道の観点から、デューデリジェンスを実施しないと見過ごすケースがある。境界確定など事業地の確定に瑕疵がある場合が散見される。その場合に、「直す活動が取れない」、もしくは「取りたくない」場合にブレイクしてしまう。

(6)契約書の条項
損害賠償条項、表明保証などの内容が売り手に受け入れられないケースがある。金融機関系の契約書は欧米に準じた形式が多いため、売り手には馴染めないこともあり、文化的背景もブレイク原因となる。

(7)ハザードMAPで引っかかる
洪水危険区域にある発電設備に関して、取得するかどうか、買い手によってポリシーが異なる。一番厳しく考えているところは、一発アウトとなる。

セカンダリー案件の事例
セカンダリー案件の事例
(出所:スマートエナジー営業資料)
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