「再エネビジネス」最前線

「ポストFIT」時代の太陽光オペレーションとは?

注目される「アグリゲーター」の役割

2021/09/22 18:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

FIPで求められる「市場の実務」

 2021年度の上期が終わり、固定価格買取制度(FIT)からフィード・イン・プレミアム(FIP)制度へ移行が間近になった。それに伴い、太陽光発電は正式に電力市場に取り込まれ、免除されてきた各種義務が課せられることになる。

 つまり、FIP制度が始まると、電力市場の実務を実施しなければならないが、その担い手としてアグリゲーターの活躍が見込まれる。今回はこのアグリゲーターにスポットをあて、来期以降の太陽光発電について考える。

太陽光は今の水準を倍増

 パリ協定の「2030年46%削減」目標の達成に向けて、経済産業省が打ち出したシナリオでは、2019年時点の導入量である55.8GWの太陽光を、103G~117GWに増やす見込みが記載されている。大雑把に捉えると、現在の2倍のボリュームに増やそうという野心的な目標である(図1)。

図1●再生可能エネルギー導入見込量
図1●再生可能エネルギー導入見込量
(出所:2021年9月7日開催経済産業省合同小委員会資料)
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 現在の太陽光設置容量・約60GWは、ほぼFITで導入されたものであり、FITと同じ程度の投資インセンティブを制度的・社会的に与えることができるかがボリューム2倍を達成できるポイントとなっている。今年度は、政府は蓄電池や自家消費に対する補助金事業で、導入量を増やす計画であるが、もちろん補助金だけでは限界がある。

 FITのように超過利潤を与えてまで再生可能エネルギーを増やす選択肢はないが、投資家に魅力的な制度としなければ、太陽光のもう一段の普及はない。FIPの実効性に注目したい。

太陽光のコスト競争力は高い

 2030年までに2倍の導入目標を達成するうえで、価格シグナルは極めて重要である。FITで太陽光発電が爆発的に増加したのは、経済性が高かったからだ。太陽光発電をめぐる経済性に関する現状を整理する。現在、太陽光発電による電気は12円/kWhが目安となっている。したがって、太陽光発電による電気は、すでに電力会社から購入するよりも安い。

 経済性を考える上で、建設コストと売電単価、そしてオペレーションコストがポイントになる。

 まず、建設コストを考える。太陽光で電気を作るための費用には、部材コスト、建築人件費、連系コスト、土地取得費、維持運用コストなどがある。トータルコストは、ここ10年間で3分の1程度まで下がったが、最近、イニシャルコストの3分の1以上を占める太陽光パネルの値段が上昇している。一時、W(ワット)あたり30円を下回る水準であったが、現在35円以上になってきている。原因としては、コロナ禍による工場稼働率の問題、中国国内の需要が多く、海外分の量が確保できないからといった背景が考えられる。

 FITと異なり、土地関連費用は限りなくゼロでないと他の電源とのコスト競争には勝てないことがわかっている。そのため、屋根上、耕作放棄地、水上、農地上のソーラーシェアリングなど土地関連コストがゼロに近い立地が注目されている。

 次に売電単価については、最終需要家の購入価格との関係になる。電気の値段は最終需要家が20円/kWhで購入できれば太陽光発電は普及すると筆者は考えている(正確には、時間、季節、地域によって電気の価値は様々なのであくまでも参考値である)。

 太陽光発電のライバルは、主としてガス火力である。火力発電の燃料、LNG(液化天然ガス)は中国の輸入量が増加しているため、日本の輸入コストも高くなってきている。概況としては、太陽光発電による電気の価格競争力は比較的高くなっていると言える。

 オペレーションコストも重要である。いままで、太陽光発電所のO&M(運営・保守)が、保守メンテナンスが中心であったのに対して、これからの太陽光発電設備は、系統連系ルールに従う必要がある。具体的には発電量を予測して、系統運用者へ送電量を報告しなければならない。こうしたオペレーション業務が増えることから、O&M料金は現在より上昇する可能性が高い。保守メンテナンスはスマート保安によって合理化し、オペレーション業務はAIによる自動化で、コストを低減する必要がある。

 現在予想されるコストは、託送料金3.5円/kWh(高圧)、インバランス料金負担を含むオペレーション業務で4円/kWh、メンテナンス業務1.5円/kWhで合計9円/kWhである。託送料金は、厳密には需要家負担であるが、これからランニングコストの増加が予想される(図2)。

図2●運営コストのイメージ
図2●運営コストのイメージ
(出所:筆者作成)
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アグリゲーターの活躍に期待

 太陽光発電設備の運営には、今後、電気をデリバリーする実務が追加される。その実務を担う事業者として、アグリゲーターが活躍することも想定される(アグリゲーターのライセンス制度は2022年4月からスタートする)。

 アグリゲーターは、電力需要家を取りまとめるだけでなく、分散型発電設備も取りまとめ、電力品質を維持する付加価値を提供する。電力品質を維持する手段は、電力需要のコントロール、それを進めてネガワットの創出、蓄電設備の運営などがある。ネットワークを作り、その需要の凸凹を利用し、全体として整合がとれた運営を目指す事業である。

 これは、比較的小型で広く分散している太陽光発電設備の運営と親和性が高い。従って、FIT制度を利用しない太陽光発電設備のオペレーションの担い手としてアグリゲーターが活躍するのではないかと予想している(図3)。

図3●2022年度FIP制度の施行に向けたスケジュール(イメージ)
図3●2022年度FIP制度の施行に向けたスケジュール(イメージ)
(出所:2021年9月7日開催経済産業省合同小委員会資料)
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