「再エネビジネス」最前線

ポストFIT太陽光・成功のカギ、発電量の予測技術

AIで精度向上、O&Mの高度化・低コスト化にも寄与

2021/11/30 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

 固定価格買取制度(FIT)が収束段階となり、フィード・イン・プレミアム(FIP)制度やコーポレートPPA(電力購入契約)モデル、自家消費型太陽光発電に注目が集まる中、改めて太陽光発電設備からの発電量を予測する技術に焦点があたっている。その重要性や技術の特徴、将来性について解説する。

予測技術のニーズに変化

 太陽光発電所はFIT制度によって、導入量が大幅に増加し、系統運用会社である一般送配電事業者が太陽光パネルによる発電量を予測するようになった。太陽光発電量を予測しなければ、電力の需要と供給をバランスさせることが出来なくなったためである。

 例えば、東北電力ネットワーク管内では、2021年5月の大型連休中の電力需要724万kWに対して、太陽光と風力による発電量は635万kWに達したと発表されている。このような状態で、太陽光の発電量予測に失敗したら、系統運用が大変な事態になることは想像に難くない。

 太陽光発電を支援する仕組みがFIT制度からFIP制度になると、発電量の計画値を作成する義務は、制度上、発電事業者が負うことになる。したがって、太陽光発電所のそれぞれのオーナーが発電量予測をしなければならない。そこで、予測技術に対するニーズが一気に高まることになったのである。

 このニーズの変化は、予測技術に対する内容の変化ももたらすだろう。なぜなら、今まで系統運用会社(一般送配電事業者)レベルでの発電量予測であれば、それほど細かい単位での予測は不要であったが、個別の太陽光発電所の出力レベルで予測しなければならなくなるからだ(図1)。

図1●日射量の予測分布図
図1●日射量の予測分布図
(出所:日本気象協会ホームページ)
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精度向上のカギはAI

 太陽光発電の予測方法には、発電設備の発電量をダイレクトに予測する直接法と、太陽光の日射量を予測し、それを元に発電量を予測する間接法がある。主流は、気象庁による気象予測データ、日本気象協会、ウェザーニュースなどによる日射量予測サービスなどを活用した間接法である。この場合の予測手法は、日射量予測データに基づいて、発電量を統計的手法により修正する方法が多い。この計算はもはやAI(人工知能)を活用するのが一般的になっている。

 AIによる予測は、過去の日射量と、実際の発電量データとの相関関係を統計的に分析することによって行う。モデルを最も単純にして数式で表すと以下のようになる。


  Y(発電量)=α(係数)* X(日射量)

 XとYに、過去のデータを大量に代入することで、季節や日時、場所の違いにより、αがどのような値となるのかを、コンピューターでシミュレートしていく。この学習プロセスを数多く行うことで、αの精度を高めていくことができる。

 FIT電源でない発電設備は、48時間前、24時間前、1時間前までにそれぞれ発電送電量を報告しなければならない。そして、1時間前の発電計画と実際の発電量の差は、インバランスと呼ばれ、ペナルティを支払わなければならない。つまり、予測精度が低いと送電コストが高くなり、逆に予測精度が高いとコストが安くなる。そのため、高い予測精度を持つAIには高い価値があると考えられている(図2)。

図2●計画値同時同量制度の考え方
図2●計画値同時同量制度の考え方
(出所:経済産業省 電力・ガス取引等監視委員会資料)
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コンテストに見る技術潮流

 2018年には太陽光の発電量を予測する技術の優秀さを競うコンテストが開催された。東京電力ホールディングスと北海道電力の共催で、北海道内における太陽光発電設備を対象とした発電量を予測する手法の提案とその精度を競うオープンイノベーションによるコンテストである。

 コンテストでは、過去(2016年~2017年)の太陽光発電量実績データや気象データなどを用いて、太陽光発電量を30分単位で予測する。その予測手法を用いて、主催者があらかじめ指定した太陽光発電所を対象に13カ月分(2018年1月1日~2019年1月31日)の発電量を予測するものである(図3)。

図3●太陽光発電量予測技術コンテスト「PV in HOKKAIDO」の概要
図3●太陽光発電量予測技術コンテスト「PV in HOKKAIDO」の概要
(出所:東京電力ホールディングス)
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 これを見ると、AIによる予測技術も様々な手法があることがわかる。

 そもそもインプットする気象データにも、単なる天気予報だったり、気象データにもモデルを作ったりとそれぞれ独自の方法によって、インプットデータを決めている。そのデータを入力して発電量を予測するが、いずれも機械学習の手法を用いる。モデルには、物理モデルと呼ばれる日射量に係数を乗じて発電量を推測する方法が多く採用されている。

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のモデルも物理モデルである。ただ、機械学習は、誤差の特徴に着目して、誤差が生じた時に誤差発生の原因を特定するモデルなども作れる。また、物理モデル以外にも、類似の発電所の発電量の相関から、発電量を予測するモデルなどがある。これらの複数のモデルを作り、多数決方式で最終的な発電量を予測するアンサンブル学習と呼ばれる方法もある。これらの機械学習の手法を駆使して、最も精度が高いモデルを作ることに各社がしのぎを削っている(図4)。

図4●東芝の発電量予測モデル
図4●東芝の発電量予測モデル
(出所:東芝プレスリリース)
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期待される「予知保全」への応用

 近年、AI技術の発達により、インフラ設備の「予知保全」と呼ばれる手法がインフラ設備会社によって研究されている。予知保全とは、トラブルを予防するのではなく、予知することで、効率的に保全活動を行おうとするものである。

 日本のインフラ設備は、戦後に構築されたものが多く、老朽化が問題となっている一方、メンテナンス技術者の高齢化も加わり、現状では設備の有効性・安全性が確保できないとの危惧が出てきた。この問題への対応策として、ベテランの知識・経験をAIやロボットにより次世代に引き継ごうと試みられている。

 太陽光設備の故障診断は、太陽光の運用期間が長くなってくるに従い、今後、爆発的にニーズが高まることが予想される。不具合を予防し、メンテナンスにかけるコストを下げていくためにも、その高度化と普及が望まれている。

 太陽光発電所のトラブルを予測する「予知保全」は、発電量を手掛かりに行うのが一般的である。ドローンによって太陽光パネルの不具合を見つける手法は故障診断技術として知られているが、パネルしか見ることが出来ないという欠点がある。

 それに対して、遠隔監視システムによる実際の発電量データと、日射量など気象データを組み合わせることで、発電設備のシミュレーションモデルを構築し、それによる予測値と実測値の誤差を分析することで、不具合を予知し設備の健全性を担保するシステムが現在、開発されている。

 こうした予知保全のシステムが普及すれば、太陽光発電所のメンテナンスコストが削減され、耐久性のアップ、発電量の最大化などが期待できる。ただ、このシステムで重要になるのがシミュレーションモデルによる予測精度になる。この精度が低いと実際の発電量とのズレを分析しても、その信頼性が高まらない。

 太陽光の発電量を高精度に予測する技術は、FIP制度やコーポレートPPAなどによる売電事業で日々求められる発電計画の作成だけでなく、予知保全などへの応用によって、メンテナンスコストの削減にもつながりそうだ(図5)。

図5●今後、10年で増える再生可能エネルギー
図5●今後、10年で増える再生可能エネルギー
(出所:経済産業省資料から筆者作成)
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