特集

「バイオマス発電はFITに合わない」、バイオマス産業社会ネットワーク・泊みゆき理事長に聞く(page 4)

メガソーラービジネス・インタビュー

2019/10/10 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ
印刷用ページ

「熱」の低炭素化に本領発揮

ーーそうなると、20年後、国民負担で建設されたバイオマス発電所が、バタバタと運転を止めるという事態になるのですか。

 そうなる可能性が高いと見ています。現在、国内で稼働・建設されている数十MWの大規模バイオマス発電所は、FIT終了後、輸入材より安い建設廃材などにうまく転換できない限り、発電施設自体は利用できても、発電事業を停止することになります。

 発電事業は、20年間のFIT期間中に減価償却を済ませ、予定した投資収益を確保できますが、そこで一時的に生まれた雇用は失われ、部分的に地域からの間伐材を利用していた場合、その木材は行き場を失います。

ーーそもそも「木質バイオマス発電」には、事業性がないのですか。

  バイオマスのエネルギー利用を長らく調査・研究してきた立場から見ると、バイオマスは、化石燃料に比べて高効率発電が難しいため、ボイラー燃料として熱利用するのが本筋です。FIT前からバイオマス発電の試みは多くありましたが、いずれも事業性が確保できず、ほとんど普及しなかったのはそのためです。それはFIT後も変わりません。

 世界的に見ても、木質バイオマス発電には、厳しい目が向けられています。再生可能エネルギーの中で、太陽光と風力の発電コストは急速に下がり、入札などでは、太陽光で3円/kWh、風力で6円/kWhと、化石燃料を大幅に下回っています。国内でも、太陽光発電の発電コストは、トップランナーで8円/kWh程度まで下がっています。

 これに対し、設備の減価償却後も継続的に燃料を購入するバイオマス発電は、化石燃料による発電コストに比べ、安く発電するのは難しいのが現実です。

ーー自立できない「バイオマス発電」を、FITの枠組みの中で支援すること自体に問題があったということですか。

 そうですね。いまのFITは、バイオマスのエネルギー利用という視点からは、明らかにミスリードに思います。日本では、「エネルギー」というと「電気」というイメージが強いのですが、もう1つの大きな利用形態に「熱」があります。

 温暖化対策では、当然、「電気」とともに「熱」の脱炭素化が重要になります。企業活動のエネルギーを再エネ100%で賄う国際イニシアチブ「RE100」でも、電気に加え熱を再エネで賄う必要があります。バイオマスは、「熱の脱炭素化」にこそ活用すべきです。

 ただ、熱と言っても、暖房や給湯など家庭で使う低温度帯の熱は、太陽熱や地中熱を利用することもできます。しかし、企業の生産活動などで必要とする100度を超える高い温度帯の熱を再エネから得ようとすれば、バイオマスしかありません。

 そもそもバイオマス発電の熱効率は30%台以下と低く、電気に換えた場合はロスが多くもったいないのです。バイオマスボイラーで熱として利用すれば、ボイラー効率は8割以上になります。エネルギー全体の脱炭素を目指すならば、ボイラー燃料を、重油や灯油からバイオマスに転換していくべきなのです。

 もちろんコージェネにして、発電後の排熱を低温度帯の温水で回収することも効果的ですが、高温度帯を賄える再エネがほかにないことを考えれば、発電にこだわらず、すべて熱利用する方が社会全体の脱炭素化には好ましいと思います。

  • 記事ランキング