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「バイオマス発電はFITに合わない」、バイオマス産業社会ネットワーク・泊みゆき理事長に聞く(page 5)

メガソーラービジネス・インタビュー

2019/10/10 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ
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バイオマスボイラーの普及を

ーー重油ボイラーに比べて、バイオマスボイラーの経済性はあるのですか。

 欧州など海外では、バイオマスボイラーの導入が増えています。それは、温暖化対策とコストダウンを両立できるからです。カロリーベースの燃料コストでは、灯油よりもバイオマスの方が安いのです。

 国内でバイオマスボイラーの普及が進まないのは、バイオマス向けボイラー設備の導入コストが海外より高く、重油ボイラーにくらべて経済性に乏しいからです。多くの場合、オーダーメイドのような設計になり割高になっています。

 ただ、この点については、今後、導入が増えて汎用化が進んだり、エネルギーサービス会社などが介在して熱を販売するスキームにするなど、工夫の余地は大きいと思います。

ーー輸入チップを使った大規模バイオマス発電を運営している事業者のなかには、国内に木質バイオマスの受け入れ設備が増えていくことで、将来的に国内林業からの間伐材の供給量も増えていく、との見方もあります。

 日本では、年間に約2000万m3もの間伐が行われています。FITがスタートし、買取単価32円/kWhのバイオマス発電によって、そのうち約3割の600万m3が山から搬出されて燃料として利用されるようになりました。

 ただ、32円/kWhという高額のFIT価格の下でさえ、発電事業者によるバイオマス材の買取価格は安く、山主にほとんど利益が還元されていません。加えて、この600万m3という間伐材の搬出には、国から多くの補助金が投入されています。そうした意味では、いまの国内産の木質バイオマス発電は、FITと搬出補助金という、二重の補助金政策によってようやく成り立っているのが実態なのです。

 32円/kWhの買取価格が前提でも600万m3の間伐材の確保に汲々としているのですから、FIT後に買電単価が市場価格近くまで下がっていくなか、輸入材に代って国産材の供給が増えるという見方には無理があります。

図2●FITによるバイオマス発電によって600万m3の間伐材が山から搬出されるようになった
(出所:日経BP)
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ーーFIT後の木質バイオマス利用はどうあるべきでしょうか。

 FITによるバイオマス発電に批判的なことを言いましたが、FITによって、600万m3もの間伐材が山から搬出されるようになったのも事実です。FITの買取期間終了に伴い、バイオマス発電所は閉鎖されていくとしても、一度、地域に根付いた間伐材などの木質バイオマス流通システムが失われてしまうのは惜しいことです。

 20年後に備え、木質バイオマスボイラーの普及やペレットの需要を増やしつつ、FITで構築されたバイオマス流通システムをボイラー燃料向けのチップ製造拠点にしたり、木質ペレット工場を建設したりして、うまく活用していくことも検討課題です。

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