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「FIPはコーポレートPPAへの扉を開く道のり」。アキラ・キャピタルのユン・ジアン・チョン氏に聞く(page 3)

メガソーラービジネス インタビュー

2019/12/04 17:52
金子 憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ
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リスクとリターンが変わる

ーー最終的にFIPよりも、「コーポレートPPA」が選ばれる、という流れは、電力卸市場の価格によって買取価格の変化するFIPよりも、長期固定で売電できる「コーポレートPPA」の方が、再エネ事業者にとって有利ということですか。

チョン氏 確かに「コーポレートPPA」は、FITのように長期固定価格での買い取りというイメージがありますが、実際には、常に完全に固定価格というわけでもありません。基本的に固定でありながらも、状況変化などに柔軟に対応できる、という良さがあります。

 「コーポレートPPA」が選ばれているのは、別の側面もあります。政府による補助が減っていくなか、FITやFIPなどの公的な買取制度には、常に「制度変更のリスク」が付きまといます。一方で、民間ベースでスキームを構築する「コーポレートPPA」は、国の制度に依存しないので、こうした制度リスクがありません。

 つまり、再エネ資源が豊富で、十分に効率的に電気を生み出すプロジェクトならば、国の制度を使うより、むしろ民間ベースの契約スキームの方が、低リスクなのです。

 一方で、産業界にとって電力は重要なコスト要因で、10年、15年、20年という長期で、安定的に電気を調達できる「コーポレートPPA」は、使い勝手が良いのです。加えて、独ダイムラーのように環境に配慮する需要家にとっては、再エネ比率を増やせます。

 「コーポレートPPA」には、電気小売りとPPAを締結して、電力会社を通じて需要家に電気が届く場合と、直接、需要家とPPAを交わすケースがありますが、後者の場合、電力会社が間に入らない分、需要家にとって安く電気を調達できる利点もあります。

アキラ・キャピタルのユン・ジアン・チョン氏
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ーーとはいえ、FITによる売電事業に慣れてしまった日本の再エネ事業者や投資家、金融関係者にとって、「コーポレートPPA」へのハードルは高いように感じます。

チョン氏 そうですね。確かに、FITと「コーポレートPPA」では、対処すべきリスクが異なります。補助金を前提にした場合、政府自体や制度変更のリスクが大きくなりますが、民間同士の売電事業では、一般的なビジネスリスクである信用リスク、市場リスクが大きくなります。こうしたリスクやリターンの変化に対応しなくてはなりません。

 我々が、日本の企業や投資家に欧州での再エネ事業への投資を薦めているのは、「コーポレートPPA」ベースの再エネプロジェクトに参画することで、FITとは違うリスク・リターンとそれらへの対応を学ぶ絶好の機会にもなるからです。

 再エネプロジェクトに出資するだけでなく、「コーポレートPPA」ストラクチャーの決定に関与したり、PPAの契約交渉に参加したりするなど、一連のスキームプロセスに加わることで、貴重な知見が得られます。それが、今後の再エネ事業の在り方を考え、プロジェクト効率を高め、日本に来るべき2~3年後の変化に備えることになります。

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