メガソーラービジネス

太陽光発電市場――2020年の展望~市場規模、政策、事業モデルの動向

新設市場は堅調、「低圧事業用」の政策支援打ち切りで正念場

2020/01/05 22:29
金子憲治=メガソーラービジネス編集長(日経BP総研 クリーンテックラボ)

「FIT後」を見据え、次の一手

 太陽光発電業界にとって、2019年は固定価格買取制度(FIT)に頼らない事業モデルを本格的に模索し始める年となった。そして、2020年は、いよいよ「次の太陽光ビジネス」を見定めて手を打っていく時期になる。

 2019年度には、FITによる事業用太陽光の買取価格と入札上限価格が14円/kWhまで下がり、住宅に加え、業務用を含めた自家消費モデルの方が、FIT売電よりも経済性が増してきた。高圧に連系する事業用太陽光の分野でも、自家消費型の案件開発が活発化している。

 加えて、「FIT抜本見直し」の議論が始まり、市場ベースの買取価格(フィード・イン・プレミアム=FIP)や、自ら売電先と契約して発電計画を作成する仕組みが固まってきた。FIT後の政策支援の枠組みは、現在の「発電所を作って連系すれば売電できる」モデルに比べ、幅広い知識やノウハウが必要になることが明らかになってきた(図1)。

図1●フィード・イン・プレミアム(FIP)の仕組みイメージ
(出所:経産省)
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 一方で、停電時の電力供給など、「地域活用電源」の要件を満たせば、FITによる支援が継続する方向性も示され、低圧事業用太陽光には、2020年度から前倒しで適用される。2020年には、高圧連係の太陽光に求める「地域活用要件」も明らかになってくる(図2)。

図2●「地域活用要件」の考え方
(出所:経産省)
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 大規模な太陽光発電のFIPへの移行は、早ければ2021年度からになりそうで、太陽光デベロッパーは、自家消費型を開拓しつつ、野立ての全量売電モデルに関しては、大規模案件の「FIP売電」なのか、政策支援に頼らずに企業に売電する「コーポレートPPA(電力購入契約)」に取り組むのか、小規模案件を「地域活用電源」仕様にしてFITで余剰売電するのか、など「次」の開発手法を練っていくことになる。

 低圧事業用太陽光に関しては、早くも2020年度から地域活用要件が適用され、「自家消費率30%以上」と停電時の自立運転機能を要件にFITによる余剰売電か、営農型と停電時の自立運転機能によるFIT全量売電に移行する。野立て型全量売電への政策支援は2019年度認定分で打ち切られた。

 野立て型の低圧太陽光は、事業用太陽光の認定容量ベースで約3割、件数ベースでは約9割を占めるなど、FITスタート以降、国内の太陽光市場を牽引してきた。ただ、経産省は、この規模の太陽光に関して、FIT期間後の継続性や運用上の信頼性を危惧しており、今回、「支援なし」を決断した。これはFIT開始以来、最大級の制度変更といえる。

 投資家を募り、50kW未満の小規模太陽光を全国的に開発してきた「低圧開発事業者」は、2019年度までの認定案件を完工してしまえば、新たな案件はなくなる。自家消費型や高圧へのシフトなど2020年にも次のビジネスモデルに動き出す必要に迫られる。

新規導入量は2018年度から増加へ

 2019~20年は、こうした太陽光事業の転換期になるとともに、2019年度に14円/kWhだった買取価格と入札上限価格は、2020年度以降さらに下がることが予想される。加えて、2020年4月から、30MW以上のメガソーラー(大規模太陽光発電所)を新たに環境影響評価法(アセスメント法)の対象とするなど、開発時の負担が増す。太陽光を新規に建設する環境はますます厳しくなっていくことは間違いない。

 ただ、先行きの厳しさとは裏腹に、国内太陽光発電設備の新設市場は、2018年度から前年比で伸びており、再び成長期に入っている。この背景には、2019年度からの入札対象拡大を予期した事業者により事業用太陽光全体で「駆け込み認定」があったこと。加えて、運転開始期限の付いたFIT初期案件の完工時期が重なっているためだ。

 太陽光発電設備の新設市場の規模(容量ベース)を示す統計は、経産省の太陽光発電導入量と太陽光発電協会(JPEA)の太陽電池出荷統計、日本電機工業会(JEMA)の太陽光発電用パワーコンディショナー(PCS)出荷動向調査の3つがあり、2018年度の確定値が公表されている。

 これらの統計で2017年度と2018年度の集計値を比べると、経産省の導入量では5.43GWから5.63GWに、JPEAの太陽電池出荷統計では5.24GWから5.50GWに、JEMAのPCS出荷動向では5.48GWから5.55GWに、いずれもわずかながら伸びている。国内の太陽光発電の新設市場は、2014年度をピークに年々、縮小してきたが、ようやく下げ止まった(図3)(図4)。

図3●固定価格買取制度(FIT)による年度別の太陽光・導入量(単位:kW)
(出所:経産省の公表値を基に日経BP作成)
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図4●国内における太陽光パネルの出荷量の推移
(出所:JPEA)
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市場規模は7~8GW

 ちなみに、これらの数値をもとに国内太陽光の新設市場規模を推計すると、交流ベース(連系ベース・PCS容量)で6~7GW、直流ベース(太陽光パネル容量)で7~8GWと推察できる。

 なぜ、そうなるのか、以下で解説する。3つの統計では、経産省とJEMAの数値は交流ベース、JPEAは直流ベースになる。

 経産省とJEMAはいずれも交流ベースだが、経産省の数値は、FITを利用して連系した案件なので、屋根上などここ数年増えている全量を自家消費する案件は含まれない。また、JEMAの統計には、比較的シェアの高い中国ファーウェイ、仏シュナイダーエレクトリックなど一部の有力海外メーカーが含まれない。従って、両方の値とも実際よりもやや小さくなる。その分を補正すると、国内市場全体の規模は大雑把な推計で、交流ベースで6~7GW程度になると見られる。

 これにPCSの定格出力を超える太陽光パネルを積み増す「過積載」の比率が20%と仮定すれば、直流ベースでは7~8GWと推察できる。

 この数値(7~8GW)と、もともと直流ベースであるJPEAの数値(5.50GW)が合わないのは、JPEAの調査対象企業のカバー率が70~80%に留まると見られるためで、それを補正すると、やはり7GW程度になり、ほぼ一致する。

 同様の考え方で推定した2014年度の直流ベースの市場規模は11~12GW、2015年度の規模は10~11GW、2016年度は8~9GW、2017年度7~8GWだったので、太陽光パネル市場は、2014年度をピークにここ数年、年度ごとに1GW程度ずつ縮小してきたが、2018年度には微増に転じ、4年ぶりに下げ止まったことがわかる。

 今年度(2019年度)は、さらに盛り返し、再び8~9GWの市場に拡大する可能性が高い。2019年9月のデータまで公表しているJPEAの四半期ごとの出荷統計を見ると、2019年4~6月期は1.49GWで前年同期比19%増、同年7~9月期は約1.62GWで前年同期比18%増と伸びており、2019年度のさらなる市場拡大を予想させる(図5)。

図5●国内太陽光設備の新設市場規模の実績と予測(単位:GW、直流ベース)
(出所:日経BP推計)
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未稼働案件が市場を押し上げ

 こうした拡大基調は、2020~21年度まで続く可能性が高い。というのは、経産省が2019年11月に公表した資料では、太陽光の認定量約77.3GW、導入量51.3GWとなっており、未稼働分は26GWに達する。この数値には、経産省が2018年12月に公表した「未稼働案件への措置」によって事業化を断念した案件を部分的に反映していると思われる(図6)。

図6●太陽光発電の認定量と導入量、ミックス目標
(出所:経産省・2019年11月公表資料)
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 「未稼働案件への措置」では、系統連系工事着工申し込みの受領期限を2MW未満の案件で2019年3月31日、2MW以上の特高案件で9月30日とし、これに間に合わない場合、買取価格が切り下げられる。11月公表値には、この措置による特高案件への影響を加味したと思われ、2019年9月公表値に比べて未稼働分は6GW少なくなっている。

 「未稼働案件への措置」では、条例による環境影響評価(アセスメント)が適用される案件については、連系工事着工申し込み受領期限を2020年3月31日に設定しており、2020年4月には計画断念の案件がさらに増えることも予想されるが、その分を考慮しても、未稼働案件は少なくとも20GW程度になると予想される。

 これら20GWの未稼働案件のすべてが稼働に至るとは限らないが、「未稼働案件への措置」により、「着工段階になっている案件」と考えれば、かなりの確率で稼働すると思われる。そうなれば、「未稼働案件への措置」をクリアしたFIT初期の特高案件で「1年」、それ以降の新規案件で「3年」の運転開始期限が付き、超過した場合、その分、買取期間が短くなる。そのため2020~21年度に完工が集中しそうだ。

 そうなると、2020~21年度には、交流ベースで7~8GW、直流ベースで8~9GWと、再び二桁近いGW規模に拡大する可能性も出てくる(図5)。

「住宅太陽光」も持ち直す

 工期の長い特別高圧送電線に連系する大規模案件が太陽光発電の新設市場を牽引し始めていることは、経産省の公表する導入量でも明らかだ。2016年度に1.14GWだった特高案件の導入量は、2017年度に1.46GW、2018年度に1.83GWと着実に伸びている(図7)。

図7●FITによる年度別・容量別の太陽光・導入量(単位:kW)
(出所:経産省の公表値を基に日経BP作成)
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 それに加え、2018年度以降、太陽光市場を下支えし始めているのが、住宅向けの屋根上太陽光だ。住宅太陽光の設置件数は、2012年度をピークに減少し、2017年度には約662MW(約13万3000件)まで落ち込んだが、2018年度に約734MW(約14万6000件)となり、ようやく上向きに転じた(図8)。

図8●住宅太陽光(設置容量)の年度別の推移(単位:kW)
(出所:経産省の公表値を基に日経BP作成)
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 JPEAの太陽電池出荷統計を見ると、住宅向け出荷量は、2019年4~6月、同年7~9月とも、前年同期比で10%以上伸びている。この背景には、屋根上太陽光が設置されやすい「持ち家」「分譲住宅」の新築着工件数が2018年度に前年度比約5%増加したことや、太陽光パネルの価格低下と災害時の自立運転機能に対する認知度が上がり、住宅オーナーに対する遡及力が高まっていることなどが考えられる。

新規開発案件は3~4GWに縮小

 2022年以降の太陽光市場を予測する場合、住宅太陽光と業務用の自家消費型市場が堅調に推移し、この両市場で2~3GWの規模になる可能性があるものの、野立て型全量売電モデルの新規開発が滞れば、国内市場の大幅な縮小は避けられない。

 2018年度の事業用太陽光の新規認定量は約4.8GWに留まったが、2019年度は、これと同水準か下回る可能性が高い(図9)。

図9●事業用太陽光の年度別・認定量(単位:GW)
(出所:経産省の公表資料を基に日経BP作成)
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 2019年度上半期の500kW以上を対象にした入札による認定は195MW、下半期は324MW分が入札資格を得ていることから、仮にこのすべてが落札して認定に至ったとしても合計で519MWに過ぎない。これに低圧事業用案件で1~2GW、住宅太陽光で1GW、自家消費型で1GWが加わったとして、国内全体の新規案件は4~5GWに留まる。
 
 さらに2020年度には低圧事業用案件がなくなるため、新規開発件数が、さらに減るのがほぼ確実で、3~4GW程度まで縮小する可能性もある。

 2022年度以降の太陽光の新設市場は、FIT大型案件の完工が一段落するとともに、こうした2020年度以降の新規開発の停滞によって、4GW前後に縮小する可能性もある。

 その先の市場規模に関しては、2021年度から開始予定のFIPと地域活用電源によるFIT、そして民間ベースで取り組まれる「コーポレートPPA(電力購入契約)」などによって、野立て型全量売電の案件がどの程度、開発されるかにかかってくる。

 これに大きく影響するのが、今後、具体化されるFIPと地域活電源向けFITで、どの程度の政策的な支援を行うかになる。これら支援策の魅力が乏しい場合、RE100宣言企業などと組んで「コーポレートPPA」スキームを構築する動きが主流になることも考えられる。

 実際、欧米では、買取価格が変動し制度変更リスクのあるFIPによる再エネ事業よりも、「優良企業とのコーポレートPPAにより長期固定価格で売電する方が事業リスクが少ない」との評価もあり、民間ベースのPPAの導入も進んでいる。

 とはいえ、コーポレートPPAによる電力供給で、産業向け電気料金を置き換えるのは難しく、またファイナンスに耐える優良企業と契約でき、低コストで開発できる太陽光プロジェクトは、限られる可能性もある。

2018年度にミックス目標は達成?

 国内の政策支援の行方で、カギを握るのが、2021年に改定・公表される「第6次エネルギー基本計画」だ。これに記載される「エネルギーミックス」(あるべき電源構成)で、再生可能エネルギーの構成比率がどの程度、上乗せされるかで、支援策が影響される。

 現在のエネルギーミックスでは、「再エネ比率22~24%」で、そのうち太陽光に限ると「7%」が「あるべき電源構成」となっている。太陽光の「7%」は設備容量に換算すると、「64GW」になると試算・公表されている。

 経産省が2019年9月に公表した資料では、太陽光の導入量は約50GWで、ミックス目標の進捗率は約78%となっている。2019年時点で未稼働分の26GWのうち、16GWが稼働すれば、達成できることになる(図10)。

図10●第5次エネルギー基本計画で掲げた電源構成(エネルギーミックス)と2019年3月時点の達成率
(出所:経産省)
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 ここに来て経産省が、太陽光に対して、矢継ぎ早に抑制的な政策を打ち始めたのは、「ミックス目標の達成が見えた」という側面も影響していると思われる。

 この点、経産省は、公式には、「目標達成はまだ不確実」との立場だ。というのは、「残された未稼働案件の多くは何らかの課題を抱えており、実際に稼働に至るかは予断を許さない」、「低圧事業用太陽光は、FIT後の継続に不安があり、一度ミックス目標を達成しても、減っていく可能性も高い」などと、見ているからだ。

 とはいえ、太陽光のミックス目標は、すでに達成しているとの見方もできる。環境エネルギー政策研究所(ISEP)が公表した再エネの電源構成によると、2018年度で太陽光は、6.7%の構成比率になっており、目標の「7%」に近づいている(図11)。

図11●国内における再エネの発電量・電源構成比の推移
(出所:ISEP)
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 2018年度時点の太陽光の導入量は45GW前後だったので、設備容量目標(64GW)からの達成率8割程度で、目標の構成比率に近い水準になっていることになる。これは、太陽光の過積載比率が高まり、当初の想定よりも設備利用率が上がっていることが影響していると思われる。「7%」を目標とすれば、2019年度にはすでに達成する可能性もある。

 こうしたなかで、さらに太陽光の導入量を大幅に積み増すような政策が打たれることは考えにくい。そこで、注目されるのは、エネルギーミックスの再エネ目標である22~24%を引き上げ、太陽光の目標値7%をさらに上積みするかどうかになる。

 FITを運用した7年間で分かったことの1つは、「太陽光の開発余地は大きく、導入量は買取価格などの政策次第で短期的に増やせる」ということだ。仮にミックスの再エネ目標が30%に積み増され、太陽光の目標が100GWになった場合、政策的に屋根上太陽光を大幅に伸ばすのか、耕作放棄地を最大限に活用するのかなど、立地場所の誘導議論と共に、それに合った追加的な政策手法が議論されることになりそうだ。