メガソーラービジネス

「営農型も組み込みたい」「台風の影響は?」、カナディアンのインフラ投資法⼈・中村代表

メガソーラービジネス・インタビュー

2020/03/16 09:31
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 カナディアン・ソーラー・インフラ投資法⼈(東京都新宿区)は、その名の通り、太陽光パネル大手のカナディアン・ソーラー・グループによる、日本国内の太陽光発電所を投資対象としたインフラファンドである。これまでの7件の上場銘柄の中で、群を抜いて規模が大きく、市場を代表する投資法人となっている。資産運用を担うカナディアン・ソーラー・アセットマネジメント(同)の中村哲也社長に、投資法人や資産運用から見た太陽光発電所のあり方や、今後の可能性などについて聞いた。中村社長は、同インフラ投資法人の代表者(執⾏役員)でもある。

――カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントやインフラ投資法人の概要を教えてください。

カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントの中村哲也社長
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法⼈の代表者(執⾏役員)でもある(出所:日経BP)

 現在、インフラ投資法人に組み込み、カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントで運用しているのは、国内の21カ所の太陽光発電所で、太陽光パネルの合計出力は約120MW、資産規模では評価額ベースで約490億円となっています。

 いずれも、国内で太陽光発電所の開発を手がけている、カナディアン・ソーラー・プロジェクト(東京都新宿区)によって開発された案件です。

 投資法人では、目標として、将来的に資産規模1000億円を掲げています(上場時の関連ニュース)。カナディアン・ソーラー・プロジェクトのパイプライン(開発中・建設中の案件)のほかにも、他社が開発・運営している太陽光発電所も取得することも選択肢になります。

 インフラ投資法人が太陽光発電所に係る資産を所有し、その発電所の資産運用をカナディアン・ソーラー・アセットマネジメントが担当し、O&M(運用・保守)は、カナディアン・ソ-ラーO&Mジャパン(同)に委託しています。

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資産規模が大きく地域も分散
(出所:カナディアン・ソーラー・インフラ投資法⼈)
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 運用中の発電所は、太陽光パネルの出力で636kW〜47.7MWと、さまざまな規模となっています。太陽光パネルは、いずれもカナディアン・ソーラー製で、EPC(設計・調達・施工)サービスやパワーコンディショナー(PCS)は発電所ごとにさまざまです。

――所有者と運用者を別会社にするのは、効率が悪いように思いますが、どのような理由があるのでしょうか。

 東京証券取引所(東証)のインフラファンド市場の上場規定に基づくものです。確かに太陽光発電所について言えば、設備の所有者が発電事業も営んでいるのが、自然な形です。しかし、上場インフラファンド市場は、再エネ発電所だけでなく、ほかの社会インフラも想定して立ち上げられた市場です。

 インフラファンド市場の先例となったのが、不動産投資信託の上場市場であるJ-REIT(J-real estate investment trust:Jリート)です。東証に、2月末時点で64銘柄のJリート投資法人が上場しています。

 この市場に上場している投資法人は、不動産のハードアセット(施設などの不動産)だけを所有し、賃貸収入で成り立つ事業の仕組みとなっています。ビルであればテナント企業に貸す、住居用のマンションであれば個人に貸すのです。

 その中には、例えば、ホテルや介護施設のような、固有のオペレーション(運営)が必要な施設もあります。この場合も、投資法人はホテルなどの施設を所有して、運営事業は手がけていません。運営は、別の会社が担っています。これも、市場への上場の規定として、同じように不動産の所有者と運用者を分ける規定があるためです。

 東証がインフラファンド市場を創設した背景に、社会インフラに民間の資金を入れていきたいという国の意向や施策があると思います。それを後押しする意味で、Jリートの仕組みである、アセットの所有と運営を分ける仕組みが踏襲されています。

 そうは言いつつも、インフラ投資法人の太陽光発電所の賃借料収入は、事実上、固定価格買取制度(FIT)に基づく売電収入にリンクするように設定されています。投資法人ごとに違いはありますが、施設の所有比率と事業の比率が一致している場合、通常はおおむね売電収入に応じた売上高になります。

 われわれの場合、発電量の予測値の超過確率50パーセンタイル(P50)を基準に、7割を基本賃料、3割は実績連動という賃料を設定しています。

 P50というのは、過去20年間の日射量の分布から想定して、50%の確率で達成可能と見込まれる発電量、平たくいうと、平年並みの日照量で予想される発電量です。

 インフラ投資市場の良いところは、このように太陽光発電の売電収入を、うまく取り込んだ形で投資の間口を広げられることです。

 太陽光発電所というと、これまでは機関投資家や資産家と呼ばれるような富裕層による投資対象だったと思います。発電所の開発に投資する、あるいは、そこまでの規模ではなくても、中小企業や富裕層の個人で発電設備を導入しても、その投資資金は大きなものになるかと思います。

 それに比べて、われわれも含めて、上場インフラ投資法人では、上場時の1口あたりの投資口価格はおよそ10万円(カナディアン・ソーラー・インフラ投資法⼈の投資口価格は、3月11日の終値で11万1100円)で、1口から買えるので、小口で太陽光発電設備に投資できるのが利点です。

――太陽光発電事業の資金調達では、上場せずに私募ファンドを活用する手法もあります。

 太陽光発電所の運営そのものには、大きな差はないと思います。いわゆるIPP(独立系発電事業者)は、開発した後も所有し続ける事業モデルですが、カナディアン・ソーラー・プロジェクトの場合は、ずっと所有し続ける事業モデルではありません。稼働後の一定期間後に、われわれを含む第三者にプロジェクトを売却して開発利益を確保する事業モデルです。

 大型の太陽光発電所への投資として、機関投資家や公的・私的の年金基金が所有する例が、相当程度に多いと思います。国内でも有数のメガソーラー(大規模太陽光発電所)を、国内外の機関投資家や年金基金が買収する例も増えています。

 どちらがベターとか、優劣はありません。しかし、違いは明確にあると思います。

 機関投資家や年金基金に太陽光発電所に投資してもらおうと考える場合は、1投資家当たりの投資額が大きくなるので、例えば、特別高圧に連系し、太陽光パネル出力が数十MWというような規模の大きなメガソーラーを購入するような方針になると予想します。

 カナディアン・ソーラー・インフラ投資法⼈の場合、ここが異なります。特高の発電所もあれば、600kW台の発電所もあります。規模を問わず、投資の間尺に合えば取り込む方針です。

カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントの中村社長
(出所:日経BP)

 中でも、カナディアン・ソーラー・プロジェクトの開発案件には、優先交渉権を持っていますので、できるだけすべての案件を入手しようとしています。

 われわれのスポンサーでもある、カナディアン・ソーラー・プロジェクトのジェフ・ロイ社長と話しているのは、「われわれの特徴は、機関投資家か年金基金でないと投資できないような規模の大きな発電所まで、個人の投資対象として提供できていることです」ということです。

――小規模な太陽光発電所は、機関投資家だと扱いにくいのでしょうか?

 ファンドの運用における費用対効果が課題となります。一つの発電所に要する手続きなどは、ほぼ変わりません。そうなると、規模が大きいほど効率がよいため、私募ファンド系にとっては、大きな発電所の方が魅力に感じると想像します。

 実は、われわれの場合でも、カナディアン・ソーラー・プロジェクトの初期の開発案件で、取り込めなかった太陽光発電所があります。

 開発初期には、投資法人への仕み組みができる前で、私募ファンド形式で開発していたためです。プロジェクトファイナンスを活用し、FITに基づく20年間の売電期間を、資金面で固定された条件で最後まで運用していく仕組みが固まっていました。そういった案件は、資産だけを買うことが難しいのです。

 こうした案件は2件あります。山口県と青森県で、どちらも規模が大きく出力10MW以上です(関連ニュース)。

――プロジェクトファイナンス案件を組み込むことが難しかったというお話を、もう少し詳しく教えてください。

 プロジェクトファイナンスの手法を活用した太陽光発電所の開発では、SPC(特別目的会社)が土地や太陽光発電設備に要する資金を、融資などの負債性の資金とエクイティで調達しています。

 稼働後は、FITの売電期間(20年)のうち、17~18年間で元本を含めて負債を返済するような仕組みが多いかと思います。

 インフラ投資法人は、太陽光発電設備や土地だけを買う形になります。この設備や土地に対して前述の17~18年のプロジェクト・ローンが確定している場合、インフラ投資法人が取得する際には、ローンを前倒して期限前弁済することはできますが、残りの期間分の金利も払うことになります。これをブレイクファンディングコストと呼びますが、これが相当の額になるので、投資法人には組み込みにくいのです。

カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントの中村社長
(出所:日経BP)

 東証の上場の規定では、SPCのエクイティを取得することは可能ですが、SPCの中で一体となっている、資産保有と事業運営をそれぞれ別の会社に分けることが条件です。

 SPCの中でこの資産保有と事業運営を分離すること、さらにプロジェクトファイナンスのローンなどを期限前弁済する費用対効果を考慮すると、インフラ投資法人に組み込むという選択には至りませんでした。

――それ以外の理由で、所有を断念したカナディアン・ソーラー・プロジェクトの開発案件はありますか。

 あります。カナディアン・ソーラー・プロジェクトの設立当初は、われわれのカナディアン・ソーラー・アセットマネジメントも、インフラ投資法人も存在しませんでした。このため、稼働後に他社に売却した案件もあります。

 その後は、前述の山口や青森の案件のような例外を除けば、基本的にインフラ投資法人で購入しています。

 また、投資基準に合わずに断念したものもあります。営農型太陽光(ソーラーシェアリング)の案件です。

 本当は、営農型は、ぜひ所有したいと願っていて、今後も積極的にチャレンジしていきたい分野です。

 カナディアン・ソーラー・プロジェクトで1カ所、営農型の太陽光発電所を開発しました。お茶畑を活用したものです。しかし、インフラ投資法人による取得は断念せざるを得ませんでした。

 営農型は、単なる太陽光発電ではありません。農家の収入源を多様化して農業の活性化につながるといった、国の施策に寄与できる分野です。そこに投資の立場から関与できるなど、より社会的な意義が大きい機会となります。

 耕作している土地ですから、日射に恵まれていて、太陽光発電所の条件としても魅力的です。

 問題は、農地転用の一時許可でした。営農型の場合、支柱を立てている場所を農地転用します。認められる農地転用が、恒久転用の場合は問題ありませんが、一時転用の場合は、最長で10年間です。

 第三者のお金を預かるという投資の立場から見ると、10年後はどうなるかわからないというリスクは、大きいのです。

 営農型の趣旨は、農家が営農しながら太陽光発電を行うもので、農地転用を一定の期間にとどめるのは、適切に営農していない案件への対策であることは理解しています。

 農業委員会に相談すると、10年後の時点で、農作物の収穫量が近隣で収穫できると予想される量の8割から下回っていた場合、まじめに営農しているのならば、作物を変えることも含めて一緒に改善策を考えましょうと、たいへんに親身でした。

 しかし、投資の尺度からは、一時転用を延長できない恐れがあるという状況への挑戦を、うまく乗り越えられませんでした。

 それでも今後、営農型の案件は、社会的意義もあり、発電の立地としても魅力的なので再度挑戦していきたいと思っています。

――大規模な施設の屋根上を活用した案件も、同じように建物内の事業が20年間、続くかどうか未知数です。

 屋根上も発展の可能性を感じていますが、通常、地主から土地を借りる場合と違って、屋根上の利用権が借地借家法で守られていない点に難しさがあります。

 例えば、所有者がビルを売ってしまったときに、次の所有者が、屋根上の太陽光発電は継続させない姿勢だったらどうなるのでしょうか。契約上は、ビルの次の所有者が継承することになっていても、それが本当に実行されるかどうかは分からないのです。

 屋根上の太陽光発電については潜在的な成長性を感じますが、インフラ投資法人よりも、資産運用面の柔軟性が確保しやすい私募ファンドのほうが向くと思います。

――カナディアン・ソーラー・グループ全体では、世界各地で発電所を開発しています。運用でも、日本のような上場したインフラ投資法人を活用する地域もあれば、別の手法の地域もあると思います。

 地域の特性に合わせて運用されていると聞いています。第三者に売却して開発利益を確保している地域もあれば、他社の私募ファンドと協業している場合もあるようです。

 ただし、グループで資産運用会社を設立して、上場インフラファンドに開発したプロジェクトを売却して、引き続きアセット・マネジメントとO&Mに関与しているのは、日本だけです。

 日本でインフラ投資法人を活用している理由の一つは、インフラ投資法人には事実上、法人税がゼロになる利点があるためです。

 インフラ投資法人が配当可能利益の90%超を投資家に対して配当する限り、配当を経費として認められて、インフラ投資法人には法人税がほぼかかりません。これを「税の導管性」と呼びます。これが、配当の利回りが比較的高くなる理由でもあります。

 しかし、この「税の導管性」は、Jリートでは恒久的に認められている一方、インフラ投資法人では、最初の資産を買ってから20年間に限定されています。

――この20年間という期間は、FITの売電期間に基づいて決まっているのでしょうか。

 その通りです。最初に買ってから20年間なので、後から組み込んだ発電所は、一番最初に買った時から経過した期間分だけ、「税の導管性」が適用される期間が短縮されてしまいます。

 日本は国策として再生可能エネルギーの普及を進めている中で、FIT期間終了後に太陽光発電をやめるのではなく、その後も長期間、発電を続けて地域の電源として重要な役割を担うことが重要です。この意義を関係当局に粘り強く訴えかけていけば、Jリートと同じように「税の導管性」が恒久的に認められると期待しています。

 また、太陽光発電以外の施設を組み込むインフラ投資法人が登場してくることでも、通常の不動産と同じように「税の導管性」を恒久化すべきという議論が進むと期待しています。

 現在の東証のインフラファンド市場に上場している7銘柄は、たまたま、すべて太陽光発電所のみを所有していますが、本来は、風力発電などの他の再エネ発電所だけでなく、コンセッション(道路、空港、上下水道などの料金徴収を伴う公共施設)も対象です。これらは、20年間で使い終わる施設ではありません。

――インフラ投資法人が所有し、FITの買取期間が終わった太陽光発電所は、市場や地域新電力など、どのように相手を選んで売電することになるのでしょうか。

カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントの中村社長
(出所:日経BP)

 われわれも、FITの売電期間が終了した後に事業をやめるつもりはありません。追加の設備投資が必要な場合もあると思いますが、再エネの普及の趣旨を踏まえて、長く発電事業を続けていくつもりです。

 これからは、卒FIT後の事業を意識して、FITに頼らない発電所の開発や卒FIT後の発電電力の活用を、できるだけ早く確立することが大事だと考えています。

――今後、他社の開発案件をインフラ投資法人が購入する場合、その後のO&Mは、カナディアン・ソーラーO&Mジャパンが担当することが条件になるのでしょうか。

 そうできれば良いと思います。ただし、売却時の条件として、O&Mの委託先企業が指定されている場合がありますので、さまざまな形が出てくるかもしれません。

 われわれがカナディアン・ソーラーO&Mジャパンに委託していることの利点の一つは、発電所の開発時から関与して、デベロッパーであるスポンサーと一緒になって開発していることです。つまり、その発電所を熟知しているので、われわれも安心できます。

 他社の開発案件を買うときには、この点はあまり期待できません。ある程度割り切って、それまで2〜3年の稼働実績を信頼して、O&Mを担当してきた企業を選ぶ場合も出てくるかもしれません。

 また、カナディアン・ソーラーによる開発案件は全世界すべて、同じ仕様のCCTV(映像監視)とSCADA(産業用制御システム)で遠隔監視しています。本国のオンタリオのオペレーションルームと、各国のO&M拠点の両方で監視、制御する仕組みです。

 他社開発の発電所を買うときには、ここも課題です。こうしたカナディアン・ソーラー流の遠隔システムに合わせるための追加投資が数百万円に上り、どうすべきか議論したこともあります。

 このように、他社の開発案件を買いたい希望はあるのですが、実際には、簡単ではないかもしれません。O&Mだけを考えても、過去の事故歴も全部揃えて引き渡してもらえるとは限りませんが、十分なデューデリジェンスを行って、他社開発の案件も取得していきたいと考えています。

――カナディアン・ソーラー・グループによる海外の案件は組み込めないのでしょうか。

 東証のルールでは、FITに準じた制度で売電したり、それに準じたような売電契約になっている発電所は、組み込んで良いことになっています。われわれのインフラ投資法人内では、現在は国内の案件に限る規定がありますが、必要に応じて投資主の了解を得て変更できます。

 カナディアン・ソーラー・グループでは最近、台湾でも太陽光発電所を稼働させました。オーストラリアや韓国にも案件がありますので、アジア・太平洋地域の案件を組み込んで発展させられるかもしれません。資産規模の拡大だけでなく、地域を分散するリスク回避策にもなります。

 一方、いろいろな地域の案件が大々的に混在することを望まない投資家もいますので、今後は、日本を主力としつつ、アジアやオーストラリアの発電所も入っているような資産構成もあり得ると思っています。

 投資家からは、風力発電を入れて欲しいといった要望も聞くのですが、カナディアン・ソーラー・グループとして見識や経験の蓄積がない分野よりも、グループの知見がそのまま生かせる点で、海外の太陽光発電所を組み込む方が現実的だと思います。

――発電所の開発やO&Mに対して、なにか働きかけをしていくことも多いのでしょうか。

 アセットマネジメントの中で、O&Mはすべて、カナディアン・ソーラーO&Mジャパンに丸投げすることもできるのですが、実際にはそうはしていません。確かに、彼らはO&Mのプロフェショナルではありますが、純投資の観点や予算の制約もある中で、彼らの手法が、すべて最適である訳ではありません。

 そこで、カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントにも、太陽光発電所の開発、投資やO&Mの経験者に加わってもらっています。こうしたプロフェッショナルは、カナディアン・ソーラー・グループ以外の他社での職務経験者です。

 無尽蔵に資金があれば、お金をふんだんにつぎ込んだ対策や改善ができるかもしれませんが、一定の制約がある中で、より良い発電所の運用を実現するためには、アセットマネジメント側にも、太陽光発電所について知見や経験を持つプロフェッショナルを確保して、O&M側と対峙することも必要になってきています。

 カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントとカナディアン・ソーラーO&Mジャパンは、兄弟会社の関係にありますが、彼らのO&M業務に関しては、もちろん敬意を持っていますが、一方で、良い緊張関係を持って互いに接することが重要です。仮にインフラ投資法人の事情や期待値に合ってないような場合は、その旨を指摘して、こちらから別の手法を提案することもあります。

 発電所の開発でも、プロジェクトごとに普段からよく相談しています。完成してしまうと、適切でない部分があっても直すのは大変です。開発中に具体的な要望をスポンサーに伝えることもあります。

――アセットマネジメントの経験者が、発電所の開発側に指摘する内容には、例えばどのようなことがあるのでしょうか。

 例えば、土地の権利です。インフラ投資法人は資産として土地を取得するので、借地権、地上権あるいは土地保有それぞれの場合であっても、一定のルールの下で境界を確認できていることが重要になります。

 また、FITによる20年間の買取期間が終わった後も、発電を続けるつもりなので、土地の賃借などは、20年間といった地上権の契約ではなく、われわれの意向で延長できるようなオプションをつけて欲しいとか、土地は買う方が望ましいと思っているので、できれば買って欲しいといったことです。

 また、発電所は長期に亘って運営していくので、メンテナンスしやすいことが大事で、それに関連した要望も多くなります。

――ライフサイクルの点では、撤去費について、今後のFIT見直しで、外部積み立てを基本とする仕組みが導入されます。インフラ投資法人としては、事前にはなかった要件です。

 発電所を買うときには当然、撤去費を見積もっていて、現在はキャッシュフローの条件に入れています。

 われわれの場合、FITによる買取期間の終了後もずっと、発電事業を続けていくつもりなので、早期から撤去費を確保して、その資金を寝かせておくのは資金効率上どうなのかなと思っていましたが、改正FIT法で撤去費用の積み立てに関するルールが決まれば、それに従っていきますし、会計上も例えば資産除去債務のような形で反映させていくと思います。

 今回のルールでは、積み立てすべき撤去費の算出方法が明確になった点は良いと感じています。これまでは、プロジェクトコストの5%などとされていても、発電所ごとに土木工事などにさまざまな違いがあって、分かりにくい面もありました。

――ここ数年、日本では、自然災害が目立ちます。熊本県益城町の発電所は、稼動前で事業用地はほぼ被災はせず、工事を延期しつつ無事に完工できたとのことでしたが(関連ニュース)、他の発電所についてはいかがでしょうか。

熊本県益城町の太陽光パネル出力約47.7MWの発電所
(出所:カナディアン・ソーラー・インフラ投資法⼈)
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 われわれのインフラ投資法人が所有している発電所でも、2018年と2019年にそれぞれ、台風による影響を受けたものがあります。

 近年は、過去最大クラスの強風や豪雨を伴う台風が度々、国内各地に上陸、通過していますので、発電所内で、想定していた以上の雨量によって、法面や排水路に影響が出たことがあります。

 2018年7月の西日本豪雨の影響で、岡山県津山市にある太陽光パネル出力約1.96MWの発電所で、地盤が緩んだことでアレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)がズレるといった被害がありました。

岡山県津山市の発電所
(出所:カナディアン・ソーラー・インフラ投資法⼈)
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 被害の程度はさほど大きなものではなく、発電には重大な支障はなかったのですが、安全と二次被害の防止を最優先してその部分の発電を止めて、応急措置を施しました。その後、適切に復旧しました。

 2019年10月には、東海・関東・東北地方を通過した台風19号により、宮城県丸森町にある太陽光パネル出力約2.195MWの発電所で、約2カ月間売電が止まりました。

宮城県丸森町の発電所
(出所:カナディアン・ソーラー・インフラ投資法⼈)
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 発電所そのものは、大きな被害はなかったのですが、連系先の東北電力の送配電設備にに大きな影響が発生したためです。東北電力は、被災した送配電網に代わる迂回ルートを建設し、年末の12月20日にようやく売電を再開できました。

 台風だけに限らず、実際の太陽光発電所では日々、いろいろなことが起きているのが実情です。以前は時々、「太陽光発電はメンテナンスフリーである」との主張を見かけましたが、実際には、日々のメンテナンスが大事なことを実感します。

――被災などで設備が壊れた場合、どのように復旧するのでしょうか。数十年に一度という強風や豪雨に頻繁に見舞われている中で、数十年に一度のことが、もう一度起きると考えて、当初よりも強固な設備に復旧するのか、あるいは、被災前と同じように復旧するのでしょうか。

 それは悩ましいところです。安全・安心の確保と費用対効果のバランスの中で、機械的にイエス・ノーを判断できることではなく、アセットマネジメントやO&Mの実力が問われる部分です。

 例えば、50年でも持つような構造が良いのかと言われると、安全・安心だけを考えればそれは望ましいですが、それでは作れる太陽光発電所の数が限られてしまい、普及の面で制約になります。実際、太陽光発電の数が増えてきたのは、コスト競争力の向上が大きかったわけですから。

カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントの中村社長
(出所:日経BP)

 もちろん、安全・安心は一番大事です。先ほどの津山市の発電所の例のように、何かあったときには発電を止めてでも安心・安全を確保するものだと考えていて、次に二次災害を生じさせないようにアクションを取ることが重要です。その認識の中で、どういった復旧の方法が良いのかを考えています。

 場合によっては、この発電所はコストを多めにかけて直して、そのコスト増加分は、他の発電所の発電量で頑張ってもらって穴埋めし、全体でカバーするというような選択もが出てくるかもしれません。

 こういった時に、幅広い地域に多くの発電所が分散している利点が出てきます。

――九州では、九州電力による出力制御が続いています。

 予想していたよりも、早い時期から出力抑制の回数が増えている印象で、これも悩ましいところです。これから買う発電所については、出力抑制を考慮してより発電量予測をディスカウントして見積もることも必要となるでしょう。また、投資家に対しては、抑制による影響を適切に公表していくことに留意しています。

――出力抑制には、遠隔制御で対応していると思いますが、自社で制御しているのか、九州電力が制御しているのかによって、同じ30日ルールの発電所でも、1回あたりの抑制時間がかなり異なっているようです。貴社の発電所はどのような状況でしょうか。

 われわれは現在、O&M会社経由で遠隔制御しています。九州電力が遠隔制御できるシステムにはなっていません。

 該当する発電所は、前日に九州電力からの連絡を受けて、翌朝の8時に遠隔制御でPCSの稼働を停めて、16時に再稼働させています。同じ30日ルールの発電所でも、九州電力が遠隔制御できる場合は、こうしたほぼ丸一日の停止ではなく、ピーク時のみ売電が停止されていると聞いています。

 この二つの状況を比較すると、売電ロスの差は小さくないので、影響が出やすい特別高圧送電線に連系している大規模な発電所については、九州電力による遠隔制御に対応できるように設備を改造したほうが望ましいのか、費用対効果を検討中です。