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「再エネはFIT後にまた盛り返す」、再エネ長期安定電源推進協会・眞邉会長に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2020/03/27 01:00
金子 憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

  一般社団法人・再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(=REASP・東京都港区)が2019年12月に設立された。発起メンバーは、リニューアブル・ジャパン(東京都港区)と東急不動産、JXTGエネルギー、東京ガス、オリックス。固定価格買取制度(FIT)の後を見据え、再エネのさらなる拡大と、長期安定的な事業モデルに向け、残された課題について意見を集約し、関係省庁に提言していくという。同協会の会長理事である、リニューアブル・ジャパンの眞邉勝仁社長に聞いた。

4つの委員会で課題議論

ーー太陽光発電の業界団体には、パネルメーカーを主体に運営されてきた太陽光発電協会(JPEA)があり、ここ数年、再エネ発電事業者による団体もいくつか設立されています。新たに立ち上げた経緯を教えてください。

再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)の眞邉勝仁会長理事
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眞邉 太陽光の業界団体では、JPEAが長い歴史があり、重要な役割を担っており、今後もそれは変わりません。ただ、国内に事業用の太陽光発電所が急速に増えてきたなか、発電事業者の立場から課題を整理して、提言していく必要性を感じています。

 私が社長を務めるリニューアブル・ジャパンは2019年4月に東急不動産と資本提携したのですが、その際の目的の一つに、望ましい業界団体の設立がありました。さまざまな発電事業者に打診してみると、同じような意識を持つ企業が多く、再エネをさらに拡大させることを目的に、新たな団体を設立することになりました。ただ、リニューアブル・ジャパンはJPEAの会員ですし、今後も連携して活動していくつもりです。

 具体的にREASPを設立した目的を、大きく3つ掲げています。1つ目は、再エネの一層の普及・拡大です。個人的には、「2050年までに電源構成の約半分を再エネで賄う」というイメージを持っています。

 2つ目は、再エネのさらなる大量導入に向け、発電事業者として解決すべき課題を議論し、解決策などを国に提案していくことです。そのための委員会組織を立ち上げていく予定です。現時点の構想では、「長期電源開発委員会」「コスト削減委員会」「電源安定化委員会」「電源活用委員会」の設置を検討しており、各委員会を25社程度で構成して、議論してきたいと思っています。

 そして、3つ目の目的が、国のエネルギー政策の観点から解決すべき課題に関して、国とも連携しながら、解決策を検討していくことです。例えば、低圧事業用太陽光については、設立時の会員メンバーでは手掛けていませんが、再エネ政策としては、その維持・管理が大きな問題になっています。会員企業が直接的に当事者になっていないとしても、国レベルの視点から、こうした問題にも取り組んでいくつもりです。

太陽光は200~300GWも

ーー将来的な太陽光の導入目標に関しては、どのようなイメージを持っていますか。例えば、JPEAは、「2050年に200GW」という長期ビジョンを掲げています。眞邉会長個人のイメージとしている「2050年には再エネが電源構成の半分」のうち、太陽光がさらにその半分として、導入容量に置き換えると、やはり「200~300GW」という規模になります。

眞邉 国内の電力需要の水準が変わらなければ、その程度のレベルになるでしょう。導入目標については、今後、会員のみなさんと明確な数字を検討していきたいと思っていますが、個人的な見解として示している「電源構成の半分」というイメージは、現時点で会員間でも大きな違和感がないものと認識しています。

 FITの買取単価が下がるなか太陽光の新規開発は、一時に比べると大幅に減少しており、太陽光業界には暗い雰囲気もあります。ただ、これは一時的な停滞であり、今後さらなる拡大に向かっていく方向性を作りたいのです。

 太陽光の建設コストがさらに下がり、FITに頼らない買い取りスキームが実現していけば、再び普及に弾みが付き、数百GW程度の導入量も見えてきます。そうなれば一大産業に成長し、雇用をさらに増やせます。

再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)の眞邉勝仁会長理事
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 あるシンクタンクの試算では、国内の未利用地を活用すれば、500GW程度の太陽光開発の余地はあるとの見方もあります。耕作放棄地を制度的に利用しやすくしたり、鉄道線路沿いの利用など、まだまだ広大な未利用地は残されています。

ーー太陽光発電事業者による団体の活動では、FITの運用変更などによって既存発電所の事業性を損ねたり、未稼働案件の建設に不利になる変更への対応など、いわば「FIT案件の既得権」を守るための活動に熱心という印象もあります。

眞邉 発電事業者が中心の団体ですが、FITにとどまらない再エネの広がりを目指しており、それが会員間でも共通認識になっています。FIT後を見据え、長期的に再エネ発電に取り組もうとする事業者に加え、金融機関にも中心的に活動してもらいます。

 さらには旧・一般電気事業者など電力小売り事業者にも参画を打診しています。そうなると関心はFITスキームにとどまらず、より幅広い視点から長期的に再エネ普及を目指す活動になります。既存の太陽光発電事業者の団体とは異なるものになるでしょう。

 確かに、「発電側基本料金」のように既存の再エネ発電所に対し、想定していなかったコスト負担を求める制度変更は、これまでのファイナンスの枠組みを壊してしまう恐れがあります。再エネ開発事業者の立場からは好ましいものではありません。

 ただ、「発電側基本料金」について言えば、それによって送電系統が増強され、さらなる再エネ導入を促す側面が大きいことを考えれば、個人的には必要な制度変更とも理解しています。

 つまり、長期的な再エネ大量導入には必要な制度である半面、短期的にはファイナンスに影響する恐れがあり、難しい判断を迫られます。会員間でも意見が異なる可能性もあり、しっかりと議論していきたいと考えています。

ファイナンスセクターと連携

ーー金融機関の会員を積極的に募り、金融セクターとの連携を重視しているのも、REASPの特徴ですね。

眞邉 会員構成のイメージでは、40%が再エネ発電事業者で、その次に電力小売り事業者(PPS)と金融・インフラ投資法人がそれぞれ15%程度を想定しています。

 発電事業者と金融機関が一緒になって課題を解決していこうという方向性は、わたし個人のこれまでの経験によるものです。

 リニューアルブル・ジャパンを創業した2012年1月以前には、証券会社や投資銀行などで会社や立場を変えながら、海外で太陽光発電所の金融化に携わってきました。

 この時の経験を生かしてリニューアブル・ジャパンを設立し、国内で活用できるさまざまな金融手法を使い、再エネ発電所を開発・運営しています。2019年12月末までに103カ所で合計出力623MWの太陽光発電所を開発してきましたが、これを5年以内に1GWまで引き上げる計画です。

 創業当初の開発では、おもにプロジェクトファイナンスを活用することが多かったのですが、その後、国内でインフラ投資市場の環境が整ったことから、現在はファンドが所有し、公募、つまり東証インフラファンド市場への上場のほか、私募で資金調達する手法に変えてきています。開発した案件は、こうしたエクイティ調達手法をつかいながら売却し、所有しないのが基本です。ただ、O&Mを引き受けることで、開発した案件の運営に携わっています。

 つまり、案件開発からファイナンス、設計・施工から、運営・保守というトータルの流れを一気通貫で担っていけるのが特徴であり、強みになっています。大規模な再エネ開発は、ファイナンスと建設・運営が表裏一体なのです。

再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)の眞邉勝仁会長理事
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 こうした経験も踏まえ、REASPの運営でも、金融機関との連携を重視しています。

ーーREASP設立の3つ目の目的に挙げた「国レベルの再エネ政策での課題」の例として、低圧事業用太陽光の問題を挙げました。

眞邉 実は、新団体の立ち上げに際して経済産業省と会合を持った時、経産省側から真っ先にこの問題を相談されたのです。低圧事業用太陽光は、膨大な数が稼働している一方で、設計・施工と運営の両面で、安全性や信頼性が十分に確保できていない案件もあると指摘されています。経産省としても、今後、この分野の小規模な事業用太陽光をいかに維持・管理して、安定電源化していくか、悩んでいるのだと思います。

 低圧事業用の案件は、リニューアブル・ジャパンとしては取り組んでこなかった分野ですが、太陽光発電事業者の団体として活動していく以上、われわれとしてできる範囲で取り組んでいきたいと考えています。

 実は、すでにリニューアブル・ジャパンで、低圧事業用太陽光への投資を検討しています。われわれは、公募か私募のどちらかで金融面の出口を確保できない発電所は手掛けません。ですから、われわれが購入できる可能性がある低圧案件の条件や設計の基準を示したり、定めたりすることはできます。

 また、現時点では投資対象にならない低圧案件の場合、どのように改善すれば、ファイナンスにも耐え得るのか、対策案などを提案できます。

次は「コーポレートPPA」

ーーFITで再エネが急増する中、特に事業用太陽光は、そろそろ「打ち止め」という雰囲気もあります。こうした流れを打破できますか。

眞邉 2018年に国が出した「エネルギー基本計画」で、初めて「再エネの主力電源化」が明記されました。これを機に再エネを巡る状況は大きく変わりました。

 旧・一般電気事業者や石油・ガス分野の大手企業は、再エネの新部署や新会社を立ち上げて急速に投資し始めています。それは、今の世界的な再エネ大量導入の動きが、もはや不可逆的であると明確になってきたからです。今後、これらエネルギー大手が再エネへの取り組みをスローダウンさせることはないでしょう。

 エネルギー大手の再エネへの取り組みは、単なる「投資」ではなく、発電事業者として設備を持ち続け、FIT後の長期運用を前提にしています。もともと企業規模も大きく経営力もあります。こうした大手資本が本気で再エネに乗り出したことで、もう1段、もう2段の再エネ拡大が十分に可能になりつつあります。

ーー国内のFITは収束に向かいつつあるなか、次の支援策であるFIP(フィード・イン・プレミアム)の詳細はまだ見えません。一方で、住宅のほか事業用でも自家消費市場が大きくなりつつあります。しかし、屋根上自家消費だけで、数百GWもの普及は難しいように感じます。FIT後の野立て型太陽光のさらなる開発は可能でしょうか。

眞邉 FITがFIPに変わった後は、米国のようなコーポレートPPA(発電事業者と電力需要家による直接の売電契約)モデルが主流になると予想しています。米国はFITを導入せずに、最初からコーポレートPPAで発展しています。米国におけるPPAモデルの太陽光発電事業は、現在は3セント/kWh程度の売電価格で成り立っています。この売電単価でプロジェクトファイナンスを組成し、売電事業が運営されています。

 欧米で起きたことは、その後、ほぼ日本でも起きています。米国のPPAモデルも、いずれ日本でも必ず広がるでしょう。

EPCコストの透明化

ーー国内でも、FITの後の本命は、コーポレートPPAを想定しているのですね。ただ、そのためには、国内の託送料金の単価を考えると、売電単価10円/kWh以下でも発電事業が成り立つことが前提になります。

眞邉 世界の流れを見ると国内の太陽光のコストはさらに下がっていくと見ています。 日本で太陽光のコストが欧米ほどには下がらない原因の一つに、EPCコストがあります。海外ほど透明性が高くなく、例えば、太陽光パネルのコストにもEPC側の利益が上乗せされているといった状況で、正確な資材や工事の単価を把握できないのです。この状況も、少しずつですが欧米の基準に近づき、透明性が増しています。

 例えば、シャープのEPCサービスが良い例です。台湾の鴻海精密工業の傘下に入って以降、シャープの提示するEPCサービスのコストは世界基準に変わりました。海外と日本の人件費の差を考慮して、架台もプリセット(事前に調整や一部を組み立てたもの)に変えるなど工夫しています。他社のEPCサービスにも影響していくでしょう。

再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)の眞邉勝仁会長理事
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 私は、ある講演で、売電単価8.5円/kWhで太陽光発電所を開発・運営できる場合があるとの試算を示したことがあります。その試算ではEPCコストは約100円/W、O&Mのコストが約1.5円/W、金利が2%で80%の融資を想定しました。これでもエクイティの利回り(エクイティIRR=内部収益率)は約6.5%を確保できました。実際にはこのほかに土木造成などが生じるので、現時点でこれをFITやPPAでも実現するのは難しいですが、2年後であれば実現できるかもしれません。

ーー2年後を見通せば、国内でも、EPCコストが下がり、コーポレートPPAが成立すると可能性があるということですか。

眞邉 実は、すでにREASPの会員間で、コーポレートPPAの勉強会をはじめる準備を進めています。PPAモデルの再エネ市場が立ち上がるためには、まず契約内容が標準化されることが必要です。FIT初期にプロジェクトファイナンスでもこうした動きがあり、契約が定型化されたことで、一気に広がりました。

 コーポレートPPAでも、コスト削減と並行して、契約やスキームの標準化が必須になります。このために弁護士を招いて契約内容を検討したり、先行する海外の発電事業者や金融機関に自国の例を教えてもらうつもりです。

 FITの売電単価が下がると、事業性が落ちて太陽光発電の開発数が減っていくとみられがちですが、コストが十分に下がれば、同水準のIRRを確保できます。FITに頼らずにPPAでも投資対象になる案件が作れれば、再び太陽光が爆発的に開発されていく局面に変わっていくのです。

 太陽光の業界は、コスト構造や制度の変化が激しく3~4カ月が1年という感じです。こうした急速な変化の先に「電源の半分が再エネ」という時代があります。REASPの活動がこうした方向を加速させ、時代を先導できたらと考えています。