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「再エネ比率30%はスタートライン」、自民党再エネ議連・柴山会長に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2020/09/10 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテック研究所

自由民主党の「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」(会長・柴山昌彦衆議院議員)は、3年前に「2030年に再生可能エネルギーの電源構成比率を最大44%まで高める」との内容を盛り込んだ提言をまとめた。だが、現行の第5次エネルギー基本計画では、2030年の「エネルギーミックス」(あるべき電源構成)における再エネ比率は「22~24%」に据え置かれた。今秋には、いよいよ次期「基本計画」の議論が始まる。同連盟の柴山会長に、次のエネルギーミックス策定を前に、目標の上積みなど、再エネの方向性に関して聞いた。

再エネはメインストリームに

現行の「第5次エネルギー基本計画」では、再エネ目標は、前回と同じ「22~24%」のままでした。再エネ議連は「44%」への思い切った上積みを提言しましたが、ミックス目標の変更は議題にさえなりませんでした。

自由民主党・再エネ普及拡大議員連盟の柴山昌彦会長・衆議院議員
(撮影:清水盟貴)

柴山 確かに現行の「第5次エネルギー基本計画」では、2030年の再エネ比率を見直しませんでした。しかし、最終的に基本計画の文言では、「着実に22~24%を達成し、さらに上積みを目指す」という書きぶりに修正されました。これは、我々が働きかけた成果だと思っています。

 こうした修正は異例のことです。22~24%という数値は同じですが、「それ以上を目指す」という方向性を書き込めたことは大きなことで、「第4次エネルギー基本計画」に比べれば、ミックス目標は同じですが、再エネ大量導入の流れを作ったと思っています。

 つい最近まで、エネルギー業界で「再エネ」というと、一種のゲテモノ扱いでした。それがここ数年で急激に位置づけが変わり、いまやエネルギー政策のメインストリームになり、その普及策を本気で議論しています。この変化はたいへんに大きなことです。

今秋から、来年度に公表する「第6次エネルギー基本計画」に向けて、ミックス目標の見直し議論が始まります。やはり、44%への上積みを目指しますか。

柴山 地球温暖化への危機感は、世界的に高まるばかりで、日本が国連のパリ協定で約束した「2030年までに2013年比26%削減」という温室効果ガス削減目標は、絶対に達成すべきです。そうなると、原子力発電と再エネを合わせた「ゼロエミッション電源44%」の達成は必須になります。

 一方で、原発の再稼働は大幅に遅れており、2030年時点で20~22%という比率を達成するのは容易ではありません。我々は、原発ゼロを主張しているわけではありません。少なくとも、いまある原発は安全性を十分に確認して再稼働することは、経済的に利点が大きいことは間違いありません。

 しかし、地域の合意が得られず、現実的に再稼働が難しいのであれば、再エネで補っていくしかなく、現状の再エネ比率「22~24%」で留まっていていいわけがありません。「再エネで44%」というのは、そうした思いから出てきたものです(図1)。

図1●2030年のエネルギーミックス目標
(出所:経産省)
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新型コロナで追い風も

経済同友会が今年7月に、2030年のエネルギーミックスで「再エネ比率40%」を提言するなど、「40%」という目標値も、もはや普通に議論されるようになりました。

自由民主党・再エネ普及拡大議員連盟の柴山昌彦会長・衆議院議員
(撮影:清水盟貴)

柴山 いまや「44%」という目標の提言は、突飛なものではなくなってきました。次期エネルギーミックスの目標を巡る議論では、24%のさらなる引き上げは不可避です。「30%」は最低ラインで、そこから、どこまで上積みするか、という議論になると思います。

とはいえ、国内の再エネ産業は、これまで普及を牽引してきた太陽光については固定価格買取制度(FIT)による買取単価が下がる一方、次の支援策であるFIP(フィードイン・プレミアム)の詳細が見えず、暗い雰囲気も漂っています。

柴山 確かに、世界的に再エネはFITからの自立の時期に入り、欧州でも苦戦しているという声を聞きます。しかし、温暖化対策の強化やESG(環境・社会・ガバナンス)投資を推進する流れの中で追い風が吹いており、再エネの未来は決して暗いものではありません。

 新型コロナウイルスからの経済復興の中で、こうした方向性はさらに強まり、石炭火力へのダイベストメント(投資撤退)、非化石電源への投資が活発化しています。

 国内の太陽光について言えば、これまで成長を支えてきたFITが見直され、FIPに移行していくのは、むしろポジティブに捉えてほしいと感じています。発送電分離など電力システム改革が進んできた中、再エネが主力電源として普及していくうえで必要なことです。

 FIPによって再エネが市場連動型に移行することで、市場価格の高いときに積極的に売電することが可能になり、それが結果的に需給バランスを改善することになります。

エネルギー政策の議論では、FITの賦課金に象徴される「再エネのコスト」が問題になっており、特に国内の再エネは海外に比べて高いことが課題です。

柴山 再エネのコストで、常に問題にされる国民負担(電気代に加算される賦課金)について言えば、将来的には必ず減っていくものです。ただ、当面は、上がっていくため、政府は長期未稼働案件に適用する買取価格を変えるなど、新たな措置で対応しています。

 ただ、こうした事後的な措置が本当に合理的なものなのか、きっちりと監視していく必要はあると感じています。再エネ議連では、再エネ事業者から丹念に状況をヒアリングし、政策担当者に伝えていくつもりです。

 再エネのメインストリームである太陽光と風力に関しては、世界的に発電コストは着実に下がっており、国内でもまだまだコスト競争力は高まっていくと見ています。発電コストが下がり、FIPによって市場対応力が増していくことで、主力電源としてさらなる飛躍も可能になると期待しています。

洋上風力で数GWを上積み

今後、伸びしろの大きい再エネは、どんなタイプになると見ていますか。

柴山 太陽光は、大規模なものは入札制に移行していくので、売電単価は下がっていきます。そうなれば、事業性を考えると、まず自家消費型による分散電源が有望でしょう。

 また、私の地元である埼玉県所沢市は再エネに熱心で、調整池に太陽光を設置したり、ソーラーシェアリング(営農型太陽光)を推進したりしています。こうした新しい立地での太陽光は、架台の強度などの課題はありますが、都市近郊で、これまで未利用だったスペースの活用という点で有望です(図2)。

図2●所沢市が設置した水上太陽光発電所
(出所:日経BP)
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 風力発電では洋上で、少なくとも数GW程度、積み増せると見ています。洋上新法が施行されて有望海域が指定され、参入企業も増えています。今後、入札を通じて競争することによってコストも下がるはずです。

 産業的には、風力発電設備の国産化も視野に入れるべきと感じています。特に長崎県の五島列島沖では、浮体式で計画されています。こうした新しい分野では、日本企業の技術力が生かせると期待しています。

バイオマスは地産地消型に

バイオマス発電の位置づけをどのように捉えていますか。

自由民主党・再エネ普及拡大議員連盟の柴山昌彦会長・衆議院議員
(撮影:清水盟貴)

柴山 バイオマス発電では現在、海外からの輸入チップなどを使った発電専用のプラントが増えています。しかし、将来的には、地域の林業と連携し、間伐材などを利用した地産地消型で、熱も利用する小規模なタイプを目指すべきと思います。

 現在、国の審議会でも海外バイオマスのCO2削減効果が検証されていますが、海外材の中には運搬時のCO2排出を考慮するとカーボンニュートラル(炭素中立)でないものもあることが示されています。そうなると、温暖化対策としての効果も怪しくなります。

 北海道で起きたブラックアウト(系統全域停電)では、大規模火力による集中型電力系統の限界が明らかになりました。今後は、地域分散電源がレジリエンスの視点からも重要になります。自家消費型太陽光や地産地消のバイオマス発電は、こうした方向性にもマッチしており、そこにビジネスチャンスもあります。

2050年まで見据えると、日本を含む先進国は、温室効果ガス80%削減という目標にもコミットしています。しかし、日本政府は、そこに至る具体的な筋道を示していません。

柴山 「2050年80%削減」の世界では、ゼロエミッション電源は、2030年の44%を、さらに2倍に増やす必要があります。原子力に依存するには、いまの軽水炉ではなく抜本的に安全性に優れた次世代型が求められ、いくつか研究も進んでいます。こうした原子力の革新を否定するわけではありませんが、2050年段階でも商用化は難しいと見ています。

 さらによく指摘されますが、使用済み核燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物をどうするのか、という問題を解決しないと、日本が目指している核燃料サイクルは維持できません。そうなるといずれ原発は運転できなくなります。

 こう考えると、やはり消去法で再エネに対する期待は、きわめて大きいと思います。一方で、開発余地の大きい太陽光、風力は、自然変動電源なので、これらを主体に系統を安定運用するのは難しいのが実態です。

 こうした壁を乗り越えるのが、蓄電池の低コスト化です。蓄電池も含めて、太陽光と風力のコストが競争力を持つまでになれば、市場原理のなかで、再エネが桁違いに増え、原発に依存せずにゼロエミッション電源を8割以上に高められる可能性も出てきます。