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「PPAは最終的にはバーチャル型に移行へ」、中山・京大特定講師(page 3)

メガソーラービジネス・インタビュー

2020/10/22 05:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ
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電気と環境価値を分離

中山 一方、「仮想的PPA」では、電気そのものと、環境価値を分離します。

 再エネ事業者は、発電した電気を電力卸市場に販売し、環境価値については契約した買い手企業が取得します。また買い手企業は、事業運営に必要な電気は市場などから調達しつつ、締結した「仮想的PPA」を通じて継続的に追加性のある環境価値を確保できます。

 この仕組みのポイントは、買い手企業と再エネ発電事業者との間で、事前に環境価値を加味した「ストライクプライス」と呼ばれる価格を設定しておき、同プライスと電力卸市場(スポット市場)との間の差額(差金)を決済することです。

 市場価格がストライクプライスを下回れば、その差額を買い手企業が補填し、逆に市場価格がストライクプライスを上回ると、その差額を買い手企業が受け取ります。

 つまり、再エネ発電事業者は、ストライクプライスという固定価格での売電が保証されるとともに、買い手企業は、ストライクプライスを保証することで、継続的に環境価値を手に入れてCO2を削減できます。ストライクプライスは金融的な手法で決定されますが、電力のスポット市場に比べて競争的な水準になっていれば、買い手企業は、一般的な電気代のコスト水準で、追加性のある環境価値も手に入れられます。

 再エネの発電コストが十分に下がっている国々では、この「ストライクプラス」を電力の市場価格に近い水準で設定しつつ、再エネ発電事業者も一定の投資収益性を確保でき、プロジェクトファイナンスの組成が可能になっています。

 「仮想的PPA」の仕組みは一見複雑に見えますが、ストライクプライスさえ決まれば、その運用はシンプルです。ここ数年、北米などで導入されているコーポレートPPAは、「仮想的PPA」が主流になっています。

ーー現在、国内で一部の環境先進企業が検討しているコーポレートPPAは、「物理的PPA」を屋根上などオンサイト発電所だけでなく、企業の敷地外(オフサイト)の再エネ発電所と契約するというイメージです。ただ、その場合、需給バランスの管理や託送料がかかることが、大きな課題になっています。

中山 「物理的PPA」は、電気と環境価値が一体なので、分かりやすく素朴な仕組みですが、これを企業の敷地外で進めようとすると、需給バランスを維持する必要があり、たいへんな手間がかかります。また、米国では需要地と発電所が州を超えて遠隔になる場合など、制度上、「物理的PPA」が難しいこともあります。

 こうした背景から生まれたのが「仮想的PPA」なのです。例えば、メガソーラーからの変動する出力はその地域の電力卸市場に売ることで、需給調整は系統運用管理者が担うことになります。一方、需要家は事業運営に必要な電気を地域の市場から調達すれば、再エネ事業者も需要家も煩雑な需給バランス業務から解放されます。需要家は、「仮想的PPA」で継続的に得られる環境価値を使うことで、CO2を削減できます。

 ただ、こうした仕組みを日本で実現するのは現時点では難しいのが現実です。そもそも日本では需要家が直接、発電事業者とPPAを結べませんし、「仮想的PPA」の場合、電気そのものと環境価値を分離して取引する制度が前提になります。国内の場合、まずは「物理PPA」に挑戦するところから始まり、その煩雑さに直面するなかで制度への問題意識が高まり、「仮想的PPA」が可能になる制度を整えていく、という流れになりそうです。

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