「ブルー水素」より「グリーン水素」
ーー太陽光・風力という変動性再エネが主体になる日本では、再エネ比率7割から8割まで大量に導入された場合、いかに安定的に系統を運用するかが大きな課題です。
柴山 まさに、その点も、カーボンニュートラル実現に向けた壁の1つで、相当な技術革新が必要になります。エネルギーの安定供給と経済性をいかに両立させるか、産業分野と運輸、そして家庭部門を含めた、あらゆる分野で改革を推し進める必要があります。
1つ言えることは、変動性再エネの増加に伴い、蓄電池や揚水発電など、エネルギーを貯め、バックアップ電源となる仕組みが重要になります。水力発電は、防災機能や治水など国土強靭化という視点からも有用で、新増設も検討すべきです。それでも、調整電源として火力発電をある程度、残すならば、CCS(CO2 の回収・固定)が必要になります。
余剰電力を水素に変えて貯めるというシステムも、こうした方向性の中で有望な選択肢になるでしょう。ただ、水素利用に関しては、化石燃料のCCSによって海外で製造した「ブルー水素」を輸入して国内の火力発電で活用するという構想も聞きますが、国内の高い再エネ導入ポテンシャルを考えれば、こうした外部性の高い水素よりも国内の再エネによる「グリーン水素」に投資すべきことは明らかに思います。
カーボンニュートラルの実現には、現時点で実用化されていない革新的な技術も必要になりますが、「ブルー水素」のような「技術的実現可能性」に留まる技術より、すでに実用化されているもののコストが高い「経済的実現可能性」を伴う技術に対して優先度を高くし、積極的な税制優遇措置や支援制度を設けるべきです(関連記事:「再エネ比率40%目標で民間投資の促進を」、経済同友会・副代表幹事石村氏に聞く)。
