メガソーラービジネス

SBエナジー創業10年、三輪社長に聞く、次の一手

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/05/26 05:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

ソフトバンクグループで再生可能エネルギー事業などを展開するSBエナジー(東京都港区)が創業10年を迎える。同社はこれまで「Watts(電力)」「Bits(情報)」「Mobility(移動)」の3領域を融合させる「BMW戦略」を掲げ、再エネにITやEV(電気自動車)を組み合わせたVPP(仮想発電所)などにも取り組んできた。固定価格買取制度(FIT)の終了や脱炭素の本格化など、経営環境の変化にどう対応していくのか。三輪茂基社長に聞いた。

全国671MWの再エネが強み

ーーFITを軸に再エネ事業を拡大してきた企業は、太陽光のFIT終了を前に、今後の成長戦略をどのように描くのか、難しい経営判断に迫られています。

三輪 SBエナジーは2011年の創業以来、北海道から九州まで、稼働済みの再エネで48件、約671MWの太陽光と風力を運営しています。事業戦略として、今後も「Watts(電力)」「Bits(情報)「Mobility(移動)」の「BMW戦略」を進めますが、これに加え、10年間で蓄積した再エネインフラが強みになると考えています。

SBエナジーの三輪茂基社長
SBエナジーの三輪茂基社長
(撮影:清水盟貴)
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 今後も、再エネ開発には積極的に取り組みますが、並行して、こうした川上(電源)資産を生かした川中、川下分野の事業に乗り出します。具体的には、再エネ調達を目指す需要家への電力供給です。ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが企業競争力に直結するなか、再エネニーズは高まっており、全国に再エネを持つSBエナジーには追い風が吹いています。

ーー再エネ電力の供給では、すでに多くの新電力や旧一般電気事業者がメニュー化しており、利用する需要家企業も増えています。

三輪 現在、国内の事業会社が再エネを調達する場合、多くは非化石証書など環境価値付きの電力を小売電気事業者から購入する形になります。しかし、世界的には、需要家企業が再エネ発電事業者から直接、電気を購入するコーポレートPPA(電力購入契約)などで、再エネを確保する手法が一般的になりつつあります。

 もちろん日本の今の制度では、需要家が発電事業者から直接、電気を購入できません。ただ、政府は、これを認める方向で動き始めています。まずは、自己託送制度の応用で疑似的なコーポレートPPAが始まり、その後、本格的なコーポレートPPAが始まるでしょう。SBエナジーでもこうした制度改革に合わせて川下戦略を強化していくつもりです。

天候予測のノウハウも

三輪 こうした再エネ供給者として役割は、ソフトバンクグループ内でも求められていきます。データセンターなどを持つソフトバンクグループは、エネルギー多消費型の事業構造ともいえ、国内グループ企業の電力消費量は年間1.7TWh(17億kWh)に上ります。一方、SBエナジーの再エネ電源が生み出す電力は、建設中の案件を含めれば1.1TWh(11億kWh)を超える水準に達しており、規模的にはグループ企業の電力需要に近づいています。

 さらに言えば、こうした再エネ電力のダイレクトな供給は、ソフトバンクグループが携帯電話事業などでサービス提供している企業も含めた形で、供給先を増やしていくという筋道も考えられます。

ーー自己託送制度やコーポレートPPAスキームによる電力供給では、需給を一致させるバランシング業務を伴います。こうした業務には、高度なノウハウが必要ですが、こうした分野にも乗り出していくのですか。

SBエナジーの三輪茂基社長
SBエナジーの三輪茂基社長
(撮影:清水盟貴)
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三輪 需給管理は、2016年から手掛けているVPP実証事業でも、大きなテーマになっており、さまざまな形で取り組んでいます。例えば、米国のクライマセル(ClimaCell、現 Tomorrow.io)という高度な天候予測技術を持つベンチャー企業に出資しました。同社は、さまざまなデバイスが発する電波の通信状態と気象観測データを元にした緻密な天気予報システムを実現しています。

 天気予報の精度が上がると、太陽光や風力発電の発電量予測とともに、人の行動パターンを読むことで電力需要の予測精度も上がります。

 また、実際の自己託送におけるバランシング業務に関しては、この分野で実績のあるエコスタイルと協業することで、ノウハウを蓄積していきたいと考えています。

 将来的には、こうして得た知見に、ソフトバンクグループが持つ基地局の蓄電池、そして今後普及する電気自動車(EV)など、まさに「Watts」「Bits」「Mobility」の「BMW戦略」の視点から、分散エネルギーデバイスをICTで制御することで、大量の再エネを活用した需給バランシングのノウハウを高めていくことを目指します。

レドックスフロー電池企業に投資

ーー「BMW戦略」の観点から、太陽光・風力という変動性再エネの大量導入を実現するうえで、蓄電池とそれを載せたEVの役割がますます高まってきます。

三輪 蓄電池の低コスト化が経済社会を変えるゲームチェンジャーになるという見方は、もはや疑問の余地はありません。太陽光発電のコストは、すでにグリッドパリティ(購入電力料金と等価水準)を下回っており自家消費の経済性は確保されています。今後、さらに蓄電池のコストが下がり、「太陽光+蓄電池」でも経済性を出せる「蓄電池パリティ」に達すれば、太陽光はもはや変動電源ではなくなり、爆発的に普及します。

 この世界を目指して、継続的に世界の蓄電池技術をリサーチしており、すでに中国のレドックスフロー電池の大手企業に出資しています。バナジウム系材料を使った技術で定置型の蓄電池を開発している企業です。

 また、EVに関しては、バッテリー(蓄電池)交換型EVを対象にしたバッテリー交換事業を手掛けている中国企業、オルトン(Aulton)に出資しました。すでに中国のEV大手メーカーがオルトンと提携して交換型EVを生産しており、交換事業は実証ではなく、社会実装の段階になっています。バッテリー交換型EVは、交換ステーションに常時、多くの蓄電池が配備され、充放電に時間的にも地域的にも柔軟性があるため、VPPとの相性が良い面もあります(図1)。

図1●EVのバッテリー交換事業を手掛けているオルトン(Aulton)に出資
図1●EVのバッテリー交換事業を手掛けているオルトン(Aulton)に出資
(出所:SBエナジー)
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20秒でバッテリー交換

ーーバッテリー交換型EVでは、かつて米ベンチャーのベタープレイスがビジネスモデルを構築して世界各地で実証事業を行いましたが、普及に至らず破綻した経緯があります。

三輪 ベタープレイスの場合、必ずしも自動車メーカーが協力的でなかったなど、まだ社会環境が整っていなかった面もあったと思います。ただEVのバッテリーをその場で充電するのでなく、交換してしまうというアイデアは優れたもので、普及可能性は高いと見ています。

SBエナジーの三輪茂基社長
SBエナジーの三輪茂基社長
(撮影:清水盟貴)
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 先日、EVで遠出する機会があったのですが、高速道路に入るとサービスエリアでの急速充電は1回30分に制限されていました。それは、各エリアに充電器が1基しかないので、次の利用者への配慮からです。30分ではフル充電にはなりません。

 オルトンの交換システムでは、わずか20秒で完了します。交換作業は、機械化されていて無人です。急速充電器に比べ、利便性に優れるのは間違いありません。

 ベタープレイスの時代には、充電式か交換式か、という議論もありましたが、EVの大量普及時代になれば、両方式が併用されるのではないかと見ています。

 VPPの視点から見ても、交換式は魅力です。VPPの事業化では、調整力市場を対象にしたアンシラリーサービスだけでは収益性に乏しいのが現実です。例えば、EVバッテリーの交換ステーションが、その充放電機能を電力系統向けに調整力として提供し、災害時には地域のレジリエンスに貢献するなど、多重利用されることが理想です。

地熱発電の資源調査も

ーーIT企業の強みを生かした川中・川下への展開に取り組むとして、これまで成長の軸だった再エネ開発については、どんな戦略を持っていますか。ソフトバンクグループの顧客も含めた需要家への再エネ供給も視野に入れれば、新規の再エネ開発は必要に感じます。

三輪 まずメガソーラー(大規模太陽光発電所)はそろそろ立地制約が壁になる、との見方もありますが、そうは思いません。まだまだ、開発に適した土地はあると思います。例えば、政府もすでに検討を始めましたが、荒廃農地の転用を促すことで、比較的低コストで開発できる平坦な用地が大量に確保できる可能性もあります。産業構造の変化などにより、遊休地になっていく工業用地もさらに増えていくかもしれません。

 太陽光発電は、FIT終了で新規開発から撤退する企業も出てくると思いますが、FIT後こそ真価が問われると思います。これまでもEPC(設計・調達・施工)サービス企業を置かず、分離発注で建設コストを下げてきましたが、今後も継続的にコストを下げていくことで、コーポレートPPAなどFITによらないスキームで太陽光の新規開発に取り組みます(図2)。

図2●分離発注した「ソフトバンク三重志摩阿児ソーラーパーク」
図2●分離発注した「ソフトバンク三重志摩阿児ソーラーパーク」
(出所:SBエナジー)
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 加えて、長期的に開発余地の大きい再エネとして、地熱発電と洋上風力に関心を持っています。地熱に関しては、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の支援を受けて掘削による地熱資源調査を実施しています。また、地下の高温岩盤に水を圧入して蒸気を取り出す次世代型の地熱発電にも注目しています。

 地熱や洋上風力は、メガソーラーや陸上風力に比べると、投下する総資本が大きく、時間軸も長くなります。その結果、資本力のある旧一般電気事業者や商社、ゼネコンなどがチームを組んで開発することが多くなります。いずれにせよ、SBエナジーがリードしてきた分野ではないので、開発競争から脱落せずについていきたいと考えています。

 また、海外では、アジア太平洋を中心にモンゴル、台湾で再エネ開発に取り組んでおり、アフリカや中東ではファンドに投資しています。アジアの砂漠などに設置した風力や太陽光から日本に送電するアジアスーパーグリッド構想は引き続き、韓国電力などと事業性調査を行っており、地道に進めています。海外での水素製造も含めて、再エネのグローバルチェーンを目指しています。

SBエナジーの三輪茂基社長
SBエナジーの三輪茂基社長
(撮影:清水盟貴)
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