特集

「2050年脱炭素」で太陽光300G~400GW、電気代は上がる?(page 4)

RITEに加え、WWF、京大がシナリオ分析を公表

2021/06/02 05:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クルーンテックラボ
印刷用ページ

太陽光・風力の発電コスト想定に違い

 電力コストの予想に大きな違いが出てくるのは、再エネの発電コストの想定が異なること、加えて自然変動電源である太陽光と風力を電力系統に統合するための費用(蓄電池、系統増強費)の考え方が異なるからだ。

 RITEシナリオでは、太陽光の発電コストを2050年に約10~17円/kWh、風力を約11~20円/kWhと試算し、導入が進むほど適地が減るためコストが上がると想定する(図8)。

図8●RITEシナリオで想定する太陽光・風力の発電コスト
図8●RITEシナリオで想定する太陽光・風力の発電コスト
(出所:RITE・2050年カーボンニュートラルのシナリオ分析・中間報告)
クリックすると拡大した画像が開きます

 また、統合コストは、参考値シナリオでは蓄電池870GWhを導入し約4円/kWhと想定し、太陽光の電源比率が45%を超えると急速に上昇するとしている(図9)。

図9●RITEシナリオで想定する太陽光・風力の系統への統合コスト
図9●RITEシナリオで想定する太陽光・風力の系統への統合コスト
(出所:RITE・2050年カーボンニュートラルのシナリオ分析・中間報告)
クリックすると拡大した画像が開きます

 一方、WWFシナリオでは、2050年における太陽光の発電コストを8.3円/kWh、陸上風力を7.0円/kWh、洋上風力を8.1円/kWhと想定した。いずれも学習曲線によって着実に低下し、世界水準に追いつくとしている。また、系統安定化のための蓄電池は2050年に300GWhを想定し、2030年以降はEV(電気自動車)の中古品を使うことで、費用は新品の5分の1で済むと見込んでいる(図10)。

図10●WWF・再エネ100%シナリオで想定する再エネ発電コスト
図10●WWF・再エネ100%シナリオで想定する再エネ発電コスト
(出所:WWFジャパン委託研究・2050年脱炭素に向けた100%自然エネルギーシナリオ・システム技術研究所)
クリックすると拡大した画像が開きます

 こうして見ると、2050年の脱炭素シナリオでは、まず30年後の産業構造をどのように想定するか、そして太陽光・風力の発電コスト、CCS、水素・アンモニアの製造コストがどこまで下がるのか、などの想定によって、かなり異なったものになることが分かる。

 WWFシナリオでは、エネルギー多消費産業の縮小も加味してエネルギー需要を極限まで減らした上で、再エネのコスト低下を楽観的に想定し、CCSは経済性を実現できないとして採用していない。一方、RITEシナリオでは、現状の産業構造を維持しつつ、再エネとCCS、原子力、水素・アンモニアに関して、相対的に再エネのコスト低下には悲観的で、原子力、CCS、水素・アンモニアのコスト低下には楽観的な傾向がある。

 また、太陽光・風力の系統への統合費用に関しても、WWFシナリオで余剰電力による大規模な水素製造やリユース電池の活用でコスト低下の可能性を想定するのに対し、RITEシナリオでは、こうした統合コストの低下可能性を想定していない。

 変動性再エネの系統への統合は、デマンドレスポンス(DR=需要応答)やVPP(仮想発電所)、低コストのストレージ新技術や水素製造など、世界的に開発競争が盛んな分野だけに、その想定コストにはさらに踏み込んだ検討が必要になりそうだ。

 ただ、いずれにせよ、立地制約の少ない太陽光に関しては、300GWを超える導入量が期待される。WWFシナリオで想定する再エネ規模(太陽光360GW、風力153GW)の場合、必要な面積は国土の1~2%という。今後、地域環境への負荷が少なく、社会的受容性の高い立地をどのように推進していくのか、広く検討して、政策的に誘導していくことが求められる。

  • 記事ランキング