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「ノンファーム型で"つなげない"を減らす」、東電PG岡本副社長に聞く(page 3)

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/06/17 12:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ
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出力制御量の予測がカギ

ーー発電事業者の立場に立てば、「ノンファーム型ならすぐにつなげます」と言われても、実際に年間の出力制御量が分からないと、投資判断ができません。

岡本 実際にどの程度の出力抑制になるのかは、対象となる系統における「年負荷持続曲線」によって把握できます。この曲線は、1年間における、1時間ごと8760時間(365日×24時間)分の潮流を大きいものから順に並び替えたものです。

 空き容量ゼロの系統にノンファーム型接続で新たな電源がつながった場合、この曲線における年間の最大潮流は、系統の運用容量を超えることになります。この時間帯には、ノンファーム型接続の発電所に対して出力制御を要請することになります(図2)。

図2●「空き容量ゼロ」の系統にノンファーム型で新規に電源を連系した場合の「年負荷持続曲線」(左)。右図は1カ月間の想定潮流のイメージ
図2●「空き容量ゼロ」の系統にノンファーム型で新規に電源を連系した場合の「年負荷持続曲線」(左)。右図は1カ月間の想定潮流のイメージ
(出所:東京電力パワーグリッド)
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 ノンファーム型接続での発電事業を検討する際には、発電事業者が独自にこうした分析を行い、事業者自らの判断で、事業リスクを評価することになります。そのために必要な系統に関する設備や潮流の実績などの情報は公開します。ただ、こうしたシミュレーションには専門的な知識も必要になるので、場合によっては外部のコンサルタント会社などに依頼することになるでしょう(関連記事:動き出した「ノンファーム接続」、出力抑制量の推定がカギ、東大とTMEICが共同で「20年の潮流計算」に取り組む)。

ーー九電管内で実施中の、エリア全体の需給バランスを維持できないことで実施される出力制御では、各一般送配電事業者が将来の出力抑制率の試算値を公表しています。ノンファーム型接続では、こうした試算値は公表しないのですか。

岡本 九電管内で始まっている出力制御は、エリア全体の需給バランスを総量で評価するのに対し、ノンファーム型接続の場合は、対象系統に関わる潮流を長期的に評価する必要があります。将来、どの程度の電源がつながるかなど、状況によって大きく潮流が変わる可能性があり、そうしたリスクは事業者の判断で評価することが基本です。一般送配電事業者が最大制御量を試算して補償するというような仕組みにはなりません。

 ただ、ノンファーム型接続は終着点ではなく、接続する再エネ電源が増加して、将来的にも出力制御量が拡大していくようなケースでは系統増強が検討されることになります。指定席券と自由席券の例えで言えば、満員が続いて乗れない人が増え、今後も乗客が伸びることが見込まれるなら、複々線化して輸送力自体を高めるということです。

 ノンファーム型接続なのか、系統増強なのかは、出力制御で失われる再エネ電力の価値と設備増強の費用対便益を評価して決まっていくと考えています。

ーー九電管内の出力抑制では、制御指令を受けた発電事業者の手動による制御から、一般送配電事業者(九州電力送配電)によるオンライン制御に移行していく方向になっています。ノンファーム型接続による出力制御では、どのような方式になりますか。

岡本 基本的には九電管内で導入されている最新の出力制御システムを採用していきます。ただ、対象となる基幹系統につながる電源は、住宅太陽光を除いた発電設備なので、低圧配電線につながる小規模な太陽光なども含みます。そのため、数が多くなることが予想され、大規模な発電所のように専用回線を使ったリアルタイム制御は導入できません。ネット回線をつかったオンライン制御のなかでも「カレンダー方式」が基本になります。

 「カレンダー方式」とは、東電PG側で需給を予測して出力制御の必要な日時のスケジュールをあらかじめ作成しておき、各電源設備がそのスケジュールをオンラインで取りに来るイメージです。具体的には、太陽光発電なら通信機能のあるパワーコンディショナー(PCS)がリモートでスケジュールを取得し、その情報を基に自動で出力を制御します。スケジュールを取りに来なかったサイトは、出力を制御するという約束にするので、通信異常などで情報が取り込めず出力制御すべきサイトが送電してしまうようなことは防げると見ています。

 こうした制御システム自体は、高度な演算処理が必要な複雑なものではないので、ノンファーム型接続に伴うPCSの付加的な機能によって、発電事業者に過大なコスト負担が発生することはないと見ています。

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