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「ノンファーム型で"つなげない"を減らす」、東電PG岡本副社長に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/06/17 12:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

送電線の潮流が混雑する時間帯には出力を抑制することを条件に系統連系する「ノンファーム型接続」が動き出した。今年1月から基幹系統(上位幹線)を対象に全国的な展開が始まったばかりだが、すでに東京電力パワーグリッド(東電PG)管内では、70件・13MWの契約申し込み、57件・2.165GWの接続検討を受け付けるなど、順調に受付が増えている。「ノンファーム型接続」の国内での導入をリードしている東電PGの岡本浩副社長に聞いた。

指定席券か、自由席券か

ーー「ノンファーム型接続」は、カタカナ用語でもあり、分かりにくい面もあります。これまでの系統接続とは、どんな違いがあるのですか。

東京電力パワーグリッドの岡本浩副社長
東京電力パワーグリッドの岡本浩副社長
(出所:東京電力パワーグリッド)
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岡本 「ファーム(firm)」とは「しっかりした」「堅い」「確実な」と言う意味で、ノンファームはその逆です。従来の「ファーム型接続」が常に送電できるのに対し、「ノンファーム型接続」では、系統混雑の際、送電できないことを条件とした接続ということになります。

 電車に例えると「ファーム型接続」は指定席券を持った乗客、「ノンファーム型接続」は自由席券というイメージです。指定席券があればどんなに混んでいても必ず座って行けますが、自由席のお客さんは極端に混んでいたら、座れないばかりか、乗れずに次の電車まで待たなくてはならないかもしれません。

 ただ、そんなに混んでいる時間帯は稀で、ほとんど乗れることがわかっている路線の場合、混雑時に待ってもらうことを条件に自由席の乗車券を販売しましょう、という発想です。

ーー従来、系統接続のための連系協議では、「系統の容量がいっぱいで接続できない」「接続には系統増強が必要でそのための工事費負担金は●万円です」というような回答で、「混雑時の出力抑制が条件」という選択肢はありませんでした。

岡本 これまでの国内の連系ルールでは、接続している電源すべてが契約した出力を送電する場合を想定し、送電線に空きがない場合は系統を増強する、という考え方になっていました。この場合、「空き」のある間は、接続できますが、新規の接続が増えていくと、最初に系統の運用容量を超えた発電事業者が、系統の増強費用を全額負担することになります。

 こうしたルールの下では、たまたま空きを越えた時点で申し込んだ発電事業者に何百億円、場合によっては1000億円を超えるような工事費負担金を請求するようなケースも出てきます。ただ、その発電事業者の総事業費が数億円程度だった場合、これほど多額の負担金を請求するのは、事業を止めろと言うのに近く、常識的なビジネスの感覚から我々としても回答に窮していました。

 そんななか、実際の潮流を調べると、基幹系統によっては、容量を超えるような混雑は年間を通じて見るとごく限られた時間だけと分かりました。その時間帯だけ出力を抑制するという条件での接続ならば、系統増強なしに短期間で連系できます。しかし、国内の接続ルールでは発電事業者にそうした提案ができないという歯がゆさもありました。

 海外では、すでに契約上の概念として、ファーム(確実な)な送電権を持った形での接続と、そうでないノンファームでの接続という運用が導入されており、こうした概念を日本でも採用できないかと、社内的に議論していました。

 変動性電源である太陽光・風力が急速に増えていく中、ピークに合わせるファーム型の系統インフラを形成していくと、送電線の稼働率は益々、下がっていきます。人口減少社会に突入することを考えても、今後は、ノンファーム型接続を適切に導入することで、系統設備の稼働率を上げていくことが重要との問題意識もありました。

 そんなか、国の有識者会議で「日本版コネクト&マネージ」の1つとして、将来的に「ノンファーム型接続」を導入するという方向性が示されました。そこで、国で正式なノンファーム型接続のルールが決まる前に「試行的取り組み」として、先行的に導入することを国と電力広域的運営推進機関に提案して認められたという経緯があります。

「募集プロセス」から変更も

ーー国の有識者会議で公表されたノンファーム型接続での契約申し込みと接続検討の件数、容量を見ると、東電PG管内が突出しています。その背景には、そうした先行的に取り組んできた背景があったからですか。

岡本 従来の接続ルールでは、あまりにも高額な工事費負担金を請求せざるを得ない発電事業者に対しては、回答を保留して待ってもらっていたケースもありました。ノンファーム型接続の開始と同時に比較的、多くの申し込みがあったのはそうした事情からです(図1)。

図1●ノンファーム型接続の受付状況。全国展開の始まった2021年1月13日以降1カ月間の接続検討の状況
図1●ノンファーム型接続の受付状況。全国展開の始まった2021年1月13日以降1カ月間の接続検討の状況
(出所:経済産業省)
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 全国的に見て東電PG管内でこうした状況になりやすかったのは、関東地方は比較的、平地が多く、もともと火力発電所のあったエリアが太陽光発電所の適地にもなっているという特徴があります。試行的に導入した千葉・鹿島エリアが典型です。

 基幹系統に複数の火力発電所がつながっているようなケースは、それだけで系統の容量はかなり埋まってしまいます。しかし、必ずしもすべての火力発電が常時、稼働しているわけではないので、実際の潮流を見ると混雑する時間は限定的です。しかし、従来のルールでは空きがなければ増強が必要で、その場合、工事費負担金は高額になりがちでした。

ーー設備増強費用が高額になる場合、「募集プロセス」という枠組みで、複数の接続希望者が共同で負担するという方法を採用するケースもあります。このスキームも東電PGが先行的に導入した経緯があります。

岡本 先ほど述べたように、従来の仕組みだと、たまたま空き容量を超えた事業者に増強費用を全額請求することになるので、乗り合いバスのように複数の接続希望者を募って共同で負担してもらうという発想が「募集プロセス」です。群馬や茨城など太陽光の接続が集中しているようなエリアで導入が始まりました。

 ただ、募集プロセスにも限界があります。例えば、基幹系統を増強しようとすると、住宅密集地の上になるため難しく、代案として地中ケーブルにすると、数十㎞もの地下埋設になり、共同で負担しても1社何十億円もの負担で、しかも完成まで10年などというケースです。こうした場合、募集プロセス自体が成立しないこともありますが、ノンファーム型接続であれば、それほど待たなくでも接続できます。

 実際、すでに進めていた募集プロセスのなかには、ノンファーム型接続という選択肢も出てきたことから、ファーム型でいくのか、ノンファーム型に変更するのかに関し、参加者に諮っている事案もあります。

出力制御量の予測がカギ

ーー発電事業者の立場に立てば、「ノンファーム型ならすぐにつなげます」と言われても、実際に年間の出力制御量が分からないと、投資判断ができません。

岡本 実際にどの程度の出力抑制になるのかは、対象となる系統における「年負荷持続曲線」によって把握できます。この曲線は、1年間における、1時間ごと8760時間(365日×24時間)分の潮流を大きいものから順に並び替えたものです。

 空き容量ゼロの系統にノンファーム型接続で新たな電源がつながった場合、この曲線における年間の最大潮流は、系統の運用容量を超えることになります。この時間帯には、ノンファーム型接続の発電所に対して出力制御を要請することになります(図2)。

図2●「空き容量ゼロ」の系統にノンファーム型で新規に電源を連系した場合の「年負荷持続曲線」(左)。右図は1カ月間の想定潮流のイメージ
図2●「空き容量ゼロ」の系統にノンファーム型で新規に電源を連系した場合の「年負荷持続曲線」(左)。右図は1カ月間の想定潮流のイメージ
(出所:東京電力パワーグリッド)
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 ノンファーム型接続での発電事業を検討する際には、発電事業者が独自にこうした分析を行い、事業者自らの判断で、事業リスクを評価することになります。そのために必要な系統に関する設備や潮流の実績などの情報は公開します。ただ、こうしたシミュレーションには専門的な知識も必要になるので、場合によっては外部のコンサルタント会社などに依頼することになるでしょう(関連記事:動き出した「ノンファーム接続」、出力抑制量の推定がカギ、東大とTMEICが共同で「20年の潮流計算」に取り組む)。

ーー九電管内で実施中の、エリア全体の需給バランスを維持できないことで実施される出力制御では、各一般送配電事業者が将来の出力抑制率の試算値を公表しています。ノンファーム型接続では、こうした試算値は公表しないのですか。

岡本 九電管内で始まっている出力制御は、エリア全体の需給バランスを総量で評価するのに対し、ノンファーム型接続の場合は、対象系統に関わる潮流を長期的に評価する必要があります。将来、どの程度の電源がつながるかなど、状況によって大きく潮流が変わる可能性があり、そうしたリスクは事業者の判断で評価することが基本です。一般送配電事業者が最大制御量を試算して補償するというような仕組みにはなりません。

 ただ、ノンファーム型接続は終着点ではなく、接続する再エネ電源が増加して、将来的にも出力制御量が拡大していくようなケースでは系統増強が検討されることになります。指定席券と自由席券の例えで言えば、満員が続いて乗れない人が増え、今後も乗客が伸びることが見込まれるなら、複々線化して輸送力自体を高めるということです。

 ノンファーム型接続なのか、系統増強なのかは、出力制御で失われる再エネ電力の価値と設備増強の費用対便益を評価して決まっていくと考えています。

ーー九電管内の出力抑制では、制御指令を受けた発電事業者の手動による制御から、一般送配電事業者(九州電力送配電)によるオンライン制御に移行していく方向になっています。ノンファーム型接続による出力制御では、どのような方式になりますか。

岡本 基本的には九電管内で導入されている最新の出力制御システムを採用していきます。ただ、対象となる基幹系統につながる電源は、住宅太陽光を除いた発電設備なので、低圧配電線につながる小規模な太陽光なども含みます。そのため、数が多くなることが予想され、大規模な発電所のように専用回線を使ったリアルタイム制御は導入できません。ネット回線をつかったオンライン制御のなかでも「カレンダー方式」が基本になります。

 「カレンダー方式」とは、東電PG側で需給を予測して出力制御の必要な日時のスケジュールをあらかじめ作成しておき、各電源設備がそのスケジュールをオンラインで取りに来るイメージです。具体的には、太陽光発電なら通信機能のあるパワーコンディショナー(PCS)がリモートでスケジュールを取得し、その情報を基に自動で出力を制御します。スケジュールを取りに来なかったサイトは、出力を制御するという約束にするので、通信異常などで情報が取り込めず出力制御すべきサイトが送電してしまうようなことは防げると見ています。

 こうした制御システム自体は、高度な演算処理が必要な複雑なものではないので、ノンファーム型接続に伴うPCSの付加的な機能によって、発電事業者に過大なコスト負担が発生することはないと見ています。

ローカル系統でも試行

ーー東電PGでは、基幹系統(上位幹線)に加え、ローカル系統(地域内送電系統)単位でのノンファーム型接続も試行的に取り組むと発表しました。基幹系統とローカル系統では、どんな違いがあるのですか。

岡本 すでに述べたように、ノンファーム型接続では、あらかじめ一般送配電事業者が系統混雑の状況を予測して、出力制御のスケジュールを作成します。そのためには、対象となる系統につながる電源からの出力と需要の状況を予測する必要があります。

 こうした予測には、天気予報の精度が重要になります。大雑把にいうと、対象となるエリアの面積が広くなるほど、天気予報の精度は高まる傾向があります。日頃の天気予報を思い浮かべてみるとイメージできますが、市町村単位の予報よりも、都道府県単位での気象情報の方が当たる確率が高くなります。

 例えば、ノンファーム型接続の対象となった基幹系統である鹿島系統(電圧27万5000V)は千葉県と茨城県にまたがる18市町村が対象の広範な地域になります。これに対して、電圧15万Vや6万Vのローカル系統では、1つの系統は市や町、区レベルになります。

 ノンファーム型接続をローカル系統単位で適用するには、こうした狭いエリアでの天気を予測する必要があり、出力や需要を保守的に推定しつつも出力制御量を減らすという観点から、運用上の難易度が上がります。それでも、すでに空きがなくなったローカル系統も増えており、今回、試行的に実施することを国と電力広域的運営推進機関に提案し、認められました。実証プロジェクト通じてノウハウを蓄積していく予定です。

ーーローカル系統よりさらに下位となる配電系統(6600Vの高圧配電網)へのノンファーム型接続の適用を望む声も出てきました。

岡本 配電系統ともなるとさらに対象エリアが小さくなり、住所でいうと●丁目ぐらいの広さになることもあります。ここまで狭い範囲になると正確に天気予報を当てるのは容易ではなく、ノンファーム型接続の運用もかなり難しくなります。

 海外では、すでにノンファーム型接続の考え方が導入されていると述べましたが、適用されているのは、基幹系統が中心です。国内でも、まずは基幹系統でのノンファーム型接続を軌道に乗せつつ、試行的にローカル系統まで広げ、ノウハウを蓄積していく方針です。