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「既存発電所のロス解消だけで300億円超の増収」、オリックスの太陽光向けAM・O&M会社に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/06/25 18:30
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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 日本でも政府が「2050年のカーボンニュートラル」を掲げるようになり、再生可能エネルギーの活用をさらに加速させる気運が高まる中、稼働済み案件の発電ロスを最小に抑え、本来の能力を発揮させようとする予防保全型の運用に関心が集まっている。それだけロスが多く、発電量の増加余地が大きいという。オリックスのメガソーラー(大規模太陽光発電所)のアセットマネジメント(AM)とO&M(運用・保守)を担当する、オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメントの百合田和久副社長 兼 戦略責任者に聞いた。

オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメントの百合田和久副社長 兼 戦略責任者
(出所:日経BP)

――予防保全型O&Mへの取り組みは、いつごろから志向し、どのように進めてきたのですか。

 最初は正直、太陽光発電所のあるべき姿を模索するような取り組みではなく、目の前にあるオリックスのメガソーラーの状態を知って、これではいけない、という程度の認識でした。

 オリックスのメガソーラー開発が活発化し、売電を開始した案件が増えて数年が経ったころ、事業計画時の想定よりも発電効率の低下度合いが大きい例が出てきたのです(図1)。

図1●発電量が年1.68%のペースで減っていた
(出所:オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント)
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 メガソーラーの年間予想発電量は、太陽光パネルのメーカーが保証する年0.5%といった劣化率を目安に算出するのが一般的です。この数値は保証するかしないかのしきい値ですから、よほどのことがない限り、ここまで下がる製品はほとんどありません。

 ところが、当時のオリックスのメガソーラーは、恥ずかしい話ですが、年1.68%という著しく大きい度合いのペースで発電量が減少していました。

 売電開始から3年が経過した時点で、減少率の推移が年0.5%だった場合と比べて、累計逸失利益が2791円/kWに上っていました。

 このペースで経過していくと、オリックスの合計出力約400MWの太陽光発電所全体で、20年間の累計逸失利益が年0.5%の減少の場合に比べて約315億円も膨らんでしまう見通しでした。

――どうしてそのような状態に陥っていたのですか。

 分析すると、目先の利益を優先するあまり、O&Mを甘く見て予算を抑えていたことがわかりました。このためにO&Mが不十分な状況で、それが発電設備本来の性能を十分に発揮できていなかった原因でした。

 金融系の企業によるメガソーラーの開発・運営において、落とし穴となりやすい過ちの一つといえます。発電設備が置かれているのは野ざらしの環境で、計算できないことも多いのに、机上の検討がそのまま通用すると勘違いしてしまうのです。

 現地で起きることの前提条件の認識が不十分ななかで融資適格性やIRR(内部収益率)を検討し、その条件や結果を絶対視してしまうのです。

 その上、投資の回収に関しては保守的に見積もる一方、その中で投資効果をできるだけ高く見せたいために、経費を過剰に抑えてしまいます。太陽光発電所の場合、O&Mのコストを抑える傾向に現れます(図2)。

図2●机上と現地の乖離、発電事業者とO&M会社との関係性などに起因
(出所:オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント)
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 例えば、「太陽光発電設備はメンテナンスフリー」という幻想があります。メンテナンスが不要という前提では、O&Mサービスには「何かトラブルが生じた時には対応して欲しい」というような、廉価で対応が限定的なサービスを採用するでしょう。

 大きなトラブルが生じてから対応するので、その度に想定外の支出が生じることになります。これによって、運営のコストが、常に計画を上回ってしまう状況を招きます。適切なO&Mであれば未然に低コストで対応できることがほとんどです。

 また、投資系の発電事業者は、キャッシュフローの管理以外に事業の重要業績評価指標(KPI)を確立できていない傾向があります。これが原因で、O&Mサービス会社に対して、主観的な判断で指示してしまい、打ち合わせや議論が長くなりがちです。

 投資のリスク軽減を目的に、厳しい内容の契約書とすることで、EPC(設計・調達・施工)サービスや発電設備・部材メーカー側もリスク軽減のためにコストを増したり、さらに、取引会社の選別のハードルを上げてしまう弊害もあります。

 これらをひと言でいうと、「机上の空論と現実との乖離の穴埋めをサプライヤーに押し付ける」運営です。当時のオリックスも、金融系の発電事業者が招きがちな、こうした状況に陥りつつありました。

 そこで、まず、発電所の仕様を改訂し、EPCやO&Mの契約、保証などの契約も改訂し、これまでのオリックスの基準では信用力などの面で避けていたような発電設備メーカーや施工会社などとも取引できるようにしました。

 また、目線を変えることにしました。稼働してから20年間、発電事業に並走して長期にわたって関わるパートナーはAMとO&Mサービスになります。その目線で20年間の事業を構想し、長期の修繕計画の策定や、交換が想定される発電設備や部材の在庫を備蓄する体制の整備、O&M予算の大幅な増額などを講じました。

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