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「除草は獣害対策にも有効、イノシシやクマに遭ったら防御姿勢を」、長岡技術科学大・山本准教授に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/09/25 00:41
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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 近年、里山に近い地域ではイノシシやシカ、クマなどの出没情報が増えている。野生動物の生息状況や、山林などに関連する人間の活動状況の両方が影響しているといわれる。里山に近い太陽光発電所でも、これらの野生動物が侵入している。野生動物の生態や獣害対策に詳しい、長岡技術科学大学 工学研究科 生物機能工学専攻の山本麻希准教授に、対策や「もし発電所内で出会ってしまったら、どのように対処するのが良いのか」などを聞いた。

――太陽光発電所でも、イノシシやシカ、クマなどの野生動物が侵入する例があります。発電設備の損壊も心配ですが、なによりもまず、作業従事者の安全が重要です。

長岡技術科学大学 工学研究科 生物機能工学専攻の山本麻希准教授
長岡技術科学大学 工学研究科 生物機能工学専攻の山本麻希准教授
(出所:山本准教授)

 この点で、とくに強調しておきたいのは、自分で自分の命を守ること、防御姿勢をとることの重要性です。

 時々、武勇伝のような出来事が報じられますよね。里山の近くにクマが下りてきて、近くの家で妙にゴソゴソ音が聞こえるので住人が見に行ったら、クマと鉢合わせになってしまい、襲ってきたので、とっさに棒などを振り回したり蹴ったりしたら、クマの弱いところにうまく当たったのか、クマが逃げ出したというような。

 こういった武勇伝を、あまり真に受けないでください。たまたまうまくいった例の一方で、撃退に失敗して、襲われて亡くなってしまった方も多いのです。武勇伝は、運が良かった例だと思って欲しいのです。

 クマやイノシシが襲ってきた時には、しっかり防御姿勢をとることが大事です。決して戦ってはいけません。

 クマは本来、人間が近くにいることを知らせれば、クマの方から去るものです。登山者などが持ち歩いているクマ除けの鈴もそうですが、人間ならではの物音や声を聞けば、向こうから避けたり、遭遇したとしてもそのうち去ってくれます。

 怖いのは、クマにとって、人が近くにいることを気づいていない状況で出会ってしまった時です。

 クマはこういう時、逃げようと思うのですが、人間を一回、上から振りかぶって強く叩いておいてから逃げようとします。この一撃は、まともに食らったら死んでしまうほど強烈です。この打撃の衝撃から身を守る必要があります。

 一撃がくると思ったら、すぐに防御姿勢をとってください。後頭部を両手で守ったうえで、小さくかがむか、腹を地面にべったり這わせて寝そべってください。

 後ろを向いて走って逃げるというのは、良くありません。クマは足が速いので、時速40kmものスピードで追いかけられ、逃げ切れません。

 もしクマとの間が10m以上離れていたら、前を向いたままじりじりあとずさりすれば、そのうち、クマの方から去ってくれるでしょう。

 クマ撃退用のスプレーも有効です。出没する地域であれば常備すべきです。1本の単価が約1万円などと高価ですが、3年間はもちます。5mの距離に接近した時に使っても、98%はクマが逃げるくらい有効で、費用対効果も考えると安いといえます。

――北海道などでは、太陽光発電所の点検従事者は、クマ撃退用のスプレーとともに、運動会などで使われているスターターピストルを常備し、火薬で鉄砲の射撃音のような大きな音を鳴らすこともあると聞いています。これも有効ですか。

 有効です。クマの場合、人が近くに来たことを知らせることが重要だからです。

――クマが太陽光発電所に立ち入らないようにすることは、難しいのでしょうか(関連記事:ツキノワグマが太陽光発電所に! 点検時に遭遇)。

 クマの生息地に立地している場合、難しいかもしれません。クマは、高いところまで登ります。外周のフェンスを越えて簡単に入れるでしょう(図1)。

図1●太陽光発電所内に侵入した2頭のクマ
図1●太陽光発電所内に侵入した2頭のクマ
(出所:この発電所の発電事業者)

 太陽光発電所側でできる工夫があるとすると、例えば、敷地内の雑草を刈っておくことがあります。身を隠す場所がないと、寄り付かない習性があります。

 また、クマの好物は、果実やハチミツです。マスなどの魚も好物で、養魚場に侵入したり、魚粉ベースのエサを目当てに自動給餌器を壊すこともあります。

 太陽光発電所の中に、果実が実っていたり、マスが泳いでいることは、ほぼないでしょう。しかし、ハチが巣を作っている可能性はあります。

 雑草を適切に刈ったり、ハチの巣を駆除したりすることは、発電所の状態を適切に保つだけでなく、クマの侵入を防ぐ効果にもつながります。

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