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「除草は獣害対策にも有効、イノシシやクマに遭ったら防御姿勢を」、長岡技術科学大・山本准教授に聞く(page 2)

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/09/25 00:41
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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――イノシシが外周のフェンス下の地面を掘り込んで太陽光発電所内に侵入する例も多く聞きます。

長岡技術科学大学の山本准教授
長岡技術科学大学の山本准教授
(出所:山本准教授)

 イノシシについては、万能な対策は難しいのですが、太陽光発電所で比較的有効な、良い手法が出てきました。

 中国電力グループのエネルギアL&Bパートナーズ(広島市中区)が製品化した「猪ふまず」で、樹脂のメッシュを地面に置いておくと、そこをイノシシが通ると、メッシュに蹄が絡むことを嫌がって、その場所を避けるようになります。

 電力施設の中でも、とくに太陽光発電所がイノシシの侵入で困っていると知ったことが開発・事業化の大きな理由だったと聞いています。

 イノシシが侵入しないようにするには、柵や電気柵といった物理的な方法しか、有効な対策はありません。

 農地の場合、わざわざ柵を張り巡らすのは難しいですが、太陽光発電所の場合、元々、外周をフェンスで囲い、フェンスはコンクリート基礎で強固に支えている場合がほとんどですので、農地に比べると比較的、侵入を防ぎやすい状況にはあります。

 イノシシが太陽光発電所内に入ってくる場合、ほぼ決まった場所の地面を掘ってフェンスの下から潜ってきているのではないでしょうか。

 これは、イノシシの習性によるものです。イノシシは、行動範囲が狭いという習性があります。同じ場所に毎日のように行って、同じ場所で地面を掘ったりします。一度行って、安心した場所に通うのです。

 掘り込まれた場所に、この樹脂のメッシュによるイノシシ除けを設置します。すると、嫌がってこの場所を避けるようになります。

 だからと言って、来なくなるわけではありません。その隣の場所を掘るようになります。そこで、この隣の場所にも、追加します。

 すると、さらにその隣の場所を掘るようになります。そこで、この隣の場所にも、追加します。こうしてだいたい3回くらい隣を掘られて、追加して置いていくことを繰り返すと、嫌がってその場所には来なくなります。この効果に期待して使います。

 イノシシの場合、この場所の付近には来なくなっても、別の近くの場所に行き場を変えるだけです。いたちごっこに近い状態になるので、「ここだけは掘られたくない、入られたくない」という場所に、重点的に使うのに有効です。

 樹脂のメッシュの部材を置くだけなので、手軽に採用できます。この上から、雑草を刈ることもできます。ただし、樹脂でできているために、屋外に置いておくと約3年間で寿命がきます。

 設置には少しコツが要ります。わたしは、大学での研究のほかに、獣害対策を支援するベンチャー企業、うぃるこ(長岡市新産)を設立していて、この樹脂製メッシュによるイノシシ除けの販売代理店となり、現地での敷設も担っています。

 イノシシでは、太陽光発電所ができた後、少し離れた位置にある田畑でのイノシシ被害が急増したという例もあります。木を伐採した林間の発電設備で、こうした影響があるようです。これも、イノシシの習性が大きく影響しています。

 イノシシが生息している場所や近隣で、まとまった規模の木を伐採すると、そこに住めなくなったり活動できなくなったりしたイノシシは、近隣の別の場所に住処や活動範囲を移します。これによって、いままでとは違う場所にイノシシが通うようになり、その近隣の田畑で被害が増えることになります。

 逆に、耕作放棄地などを用地とした太陽光発電所で、その発電所ができたことでイノシシの活動範囲の干渉帯のような状態になる例もあります。この場合、それまでイノシシの被害に悩まされていた近隣の地域で、被害が減る効果が実際にあります。

 悩ましいのは、この場合でも、イノシシは別の場所に活動範囲を移しているだけなので、どこか別の場所で、被害が増える可能性が大きいことです。

 理想的なのは、開発計画を立案している段階で、その場所や周辺地域のイノシシなどの生態や活動範囲を調べ、影響を予想して事前に対策することです。例えば、計画的に少しずつ捕獲して駆除しておくこともできます。これによって、近隣に移った時の周辺への悪影響をゼロにはできませんが、少なく抑えられるかもしれません。

 イノシシの場合、「加害個体」と呼ばれる、人里に出入りして被害を及ぼす傾向の強い個体を選んで駆除することも重要です。人里の作物や食べ物の味を知っているので、山には戻りません。人の刺激にも強いので、田畑や住宅の近くに隠れていたりします。

 逆に、シャイな性格の個体は、人里にはでてきませんので、被害を及ぼすことは少ないと言えます。

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