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「ポジティブゾーニング」で再エネ適地を確保、環境省・小笠原課長に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/09/28 05:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

温室効果ガス削減目標「2030年46%削減」を前提にした次期(第6次)エネルギー基本計画案がまとまり、再生可能エネルギーへの期待が高まる。一方で事業用太陽光発電は、来年度以降、固定価格買取制度(FIT)による売電単価は10円台以下/kWhへの低下が予想され、1MW以上についてはフィード・イン・プレミアム(FIP)に移行するなど、開発環境はますます厳しくなる。そんななか、環境省は、地球温暖化対策推進法を改正し、自治体主導で地域共生型の再エネを積極的に開発していく方針などを公表している。環境省・地球温暖化対策課の小笠原靖課長に、今後の再エネ推進策に関して聞いた。

環境省・地球温暖化対策課の小笠原 靖課長
環境省・地球温暖化対策課の小笠原 靖課長
(撮影:清水盟貴)
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再エネ「20GW」を追加的に導入支援

政府が掲げた温室効果ガス削減目標「2030年46%削減」では、まとまった開発規模が見込める一般海域での洋上風力が間に合わず、その達成を危ぶむ声もあります。

小笠原  今後のエネルギー政策は、次期(第6次)エネルギー基本計画で掲げた内容をいかに実現するかが、大きな課題になります。2030年の削減目標に向けては、再エネの中でも、比較的、短期間で設置できる太陽光発電が追加的な導入策の中心になります。

 FITや、来年度から始まるFIPによる買取制度は引き続き、経済産業省の所管により再エネ推進を担いますが、環境省としては、これら買取制度に依存しない自家消費型や、自治体主導による太陽光の新規開発など、合計で約20GW分を追加的に推進していきます。

 20GWの内訳は、公共施設への設置で約6GW、民間企業による自家消費で約10GW、市町村主導による地域共生型再エネで約4GWになります。

公共施設に6GWという導入目標は、どのように実現しますか?

小笠原  公共施設への太陽光設置については、地球温暖化対策推進法に基づく政府実行計画の改正案に「2030年までに政府保有の設置可能な建築物の50%以上への導入」と明記しています。地方自治体についても、温暖化対策計画改正案の中に、「政府に準じて取り組む」との方向性を明記しました。現在、この目標の実効性をいかに高めるか、地方公共団体実行計画のマニュアルにどのような書きぶりにするかなど、検討会で議論しているところです。

 並行して来年度予算要求に、新たな交付金制度の創設を盛り込んでおり、自治体の取り組みを資金面でも後押ししていきます。

民間企業の自家消費型太陽光については、どのように支援しますか?

小笠原  事実上の自家消費であるオンサイト型PPA(電力購入契約)モデルによる太陽光への設置支援と、需要家企業による再エネニーズを高めるために脱炭素経営を後押しするという両面から支援します。脱炭素経営とは、例えばTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、SBT(科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標)、RE100(再エネ100%を目指す国際イニシアチブ)といった国際的な動きへのコミットや参加を促します。

 ESG(環境・社会・ガバナンス)が投資基準になり、企業はその取り組みを投資家に説明する必要があり、これら国際的な基準への賛同やコミットが最も早道になっています。個社支援のほか、これらに取り組むためのガイダンスやマニュアルを作成しています。

 自家消費型の太陽光は、CO2削減だけでなく災害時のレジリエンス向上など、幅広いメリットがあり、蓄電池を併設すればそれらの効果をさらに高められます。環境省では、2020年度からこうした自家消費型太陽光やそれと併設した蓄電池の導入を促すための支援事業を行っており、2020年度は350件で合計約74MW、2021年度は700件で合計約180MWを見込んでいます。2022年度も同様の支援事業を継続します。

 オンサイト型PPAモデルは現在、試行錯誤しているスキームと見ており、特に太陽光にとって条件の良くない立地も含めて複数案件をまとめて資金調達するなど、工夫の余地もあります。補助金制度でこうした案件も含めて、開発を促進していく方針です。

自治体が再エネ開発でワンストップ対応

野立て型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)は、地域社会や自治体から反対を受けるケースが出てきました。「地域共生型再エネ」はどんな形で推進しますか?

環境省・地球温暖化対策課の小笠原 靖課長
環境省・地球温暖化対策課の小笠原 靖課長
(撮影:清水盟貴)
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小笠原  改正地球温暖化対策推進法(改正温対法)を円滑に運用することが軸になります。改正法ではまず、自治体が意欲的な再エネ目標を定量的に設定した上で、市町村が「促進区域」を設定し、自治体が関与しつつ太陽光の適地を確保することを促します。

 「関与」の仕方は、処分場跡地やため池など自治体の持つ公共用地の活用のほか、民間企業による再エネ開発プロジェクトを認定して支援する、という形も考えられます。重要なのは、「自治体が関与する」というプロセスによって、地域の合意形成を得ることです。

 民間の再エネ開発事業者は促進区域内での再エネ事業計画を市町村に申請し、その計画が市町村から認定された場合、農地法や森林法、河川法、自然公園法など許認可手続きに関し、市町村を窓口にワンストップで進められるなどの特例措置が受けられます。

 すでに昨年度から自治体による計画策定やゾーニングを支援しています。これらの制度運用については、現在、有識者による検討会で議論されており、来年4月施行までに省令や運用指針、マニュアルを作成する予定です。

 ここ数年、地方自治体は条例などにより、再エネ設備の建設を抑制する区域を設定するなどの動きが広がっています。改正温対法では、再エネを積極的に最大限、開発する「促進区域」を指定する「ポジティブゾーニング」という考え方です(図1)。

図1●自治体による「ポジティブゾーニング」のイメージ
図1●自治体による「ポジティブゾーニング」のイメージ
(出所:環境省)
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「意欲的な目標」はどのように決めるイメージですか。自治体によってはすでに再エネ設備が多く建設されて地域の電力需要を超える電力を生み出しており、再エネ設備は「もう打ち止め」という雰囲気もあります。

小笠原  地域の電力需要に見合った再エネを開発するという発想だと、日本全体で見ると大都市のような人口密集地や大規模な工場などの電力需要を再エネで賄うことはできません。「意欲的な目標」では、その地域の再エネポテンシャルを最大限に生かす、という視点から定量的に設定することが基本になります。

 環境省では、再エネを経済的に開発・導入できるポテンシャルデータ(再エネ情報提供システム=REPOS)を地域ごとに公表しており、これも参考しながら目標を設定してほしいと考えています。

「農山漁村再エネ法」とは兄弟関係

自治体主導の再エネ開発の仕組みとしては、すでに農林水産省の所管する「農山漁村再エネ法」があります。

小笠原  自治体によるポジティブゾーニングを改正温対法で規定するにあたり、すでに同じ発想で実績のある「農山漁村再エネ法」を参考にしました。地域共生型再エネを自治体が認定して後押しするという枠組みは同じです。その意味で、改正温対法のポジティブゾーニングと農山漁村再エネ法は兄弟のような関係で、連携規定もあります。

 農山漁村再エネ法による民間再エネ事業の「認定」では、「農林漁業の健全な発展への貢献」が要件となりますが、改正温対法では、農林漁業に限定せず、「経済・社会の持続的な発展」が想定され、より幅広い貢献策がイメージされています。

 国内では、すでに440を超える自治体が「2050年ゼロカーボン」を宣言しており、改正温対法は、それを具体的に進めるツールになります。

農山漁村再エネ法の枠組みを使うと、第1種農地を転用できるという大きな利点がありましたが、改正温対法でも、同様ですか?

小笠原  改正温対法によるポジティブゾーニングには、第1種農地は含みませんが、第1種以外の農地は対象になります。また、地域への貢献内容が「農林漁業の健全な発展」に該当する場合には、連携規定により農山漁村再エネ法に乗り入れて、同法を適用することも可能で、結果的に「第1種農地の転用」が可能になります。

環境省・地球温暖化対策課の小笠原 靖課長
環境省・地球温暖化対策課の小笠原 靖課長
(撮影:清水盟貴)
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「脱炭素先行地域」は街区単位

国・地方脱炭素実現会議で掲げた「脱炭素先行地域」と、改正温対法の再エネ「促進区域」とは、どのような関係になりますか?

小笠原  「脱炭素先行地域」については、少なくとも全国100カ所の地域を指定し、2025年度までに脱炭素に向けて筋道をつけ、2030年には脱炭素を実現するとしています。こちらは、自治体全体というよりも、街区やエリアをイメージしており、その地域における民生部門のCO2排出をゼロにすることを目指します。

 ZEH(ネットゼロエネルギー住宅)の対象は、住宅の電気で、ガスや自動車は入りませんが、「脱炭素先行地域」では、ガスや運輸部門を含めた取り組みも想定しています。

 改正温対法とは別の枠組みですが、「脱炭素先行地域」のなかに、自治体が「再エネの促進区域」を設定することなど、合わせて進めてほしいと思っています。これらの運用に関しても、今後、詳細をつめていくつもりです。

 脱炭素先行地域は、2022年1月頃から公募を開始し、来春には第一弾の「先行地域」を選定・公表する予定です。すでに9月半ばから、先行地域の選定の考え方やスケジュール、予算要求状況などに関して自治体向けに説明を始めています。

国・地方脱炭素実現会議で掲げた、自治体に対する「継続的な資金支援の仕組み」に関連し、小泉環境大臣は、原発や水力発電所の立地自治体に交付されている「電源立地交付金」を例に、これを太陽光や風力発電の立地地域にも拡大する「再エネ立地交付金」というアイデアに言及しています。

小笠原  環境省では、来年度予算要求に「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を盛り込みました。これは「脱炭素先行地域」での再エネ設備、蓄エネルギー設備などの導入を支援するものですが、脱炭素先行地域以外についても、自治体の先進的な取り組みを支援する予定です。

 加えて、継続的かつ包括的な資金支援の一環として、再エネなどの脱炭素事業に意欲的に取り組む民間企業を集中的に支援するため、財政投融資を活用した出資制度の創設についても要望しています。

 小泉大臣が引き合いに出した「電源立地交付金」は、原発や水力などの設置や運営を円滑化するため、これら電源地域の自治体に対し発電量に応じて交付されるもので、電源開発促進税を原資に電気代に含めて消費者が負担しています。今回、創設する「再エネ推進交付金」はこれとは違い、設備導入時に支援する補助金です。

 小泉大臣が電源立地交付金に言及したのは、原発と対比する文脈での発言で、長期的なエネルギー政策を見据えての問題提起の1つという意味合いがあったと感じています。

「オフサイト型PPA」で8MWを支援

ここにきて、ポストFITを睨んで、民間企業による「オフサイト立地でのコーポレートPPA」スキームへの取り組みが加速しています。

小笠原  企業が全電力需要を再エネで賄おうとした場合、屋根上太陽光などの自家消費だけでは足りないことがほとんどで、外部からの再エネ電力調達が必須になります。その際、新たな選択肢として注目されているのが、「オフサイト型コーポレートPPA」です。これは、再エネ発電事業者と需要家が長期でPPAを締結し、外部に設置した再エネ設備から電力を調達するもので、FIT後に事業用太陽光を拡大させる有効な手法として期待されます。

 環境省としては、国内でこの事業モデルを構築するため、今年度に「オフサイト型コーポレートPPAのモデル創出事業」を実施し、10件、合計で約8MWを支援しました。この成果を取りまとめて公表し、他の事業者にも参考にしてほしいと思っています。

環境省・地球温暖化対策課の小笠原 靖課長
環境省・地球温暖化対策課の小笠原 靖課長
(撮影:清水盟貴)
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 来年度も、政府としてこのモデルを支援していく方針で、補助事業のほか、自己託送制度の拡大運用や、FIP制度を併用することで、さらに普及が進むと見ています。

太陽光の導入ポテンシャルは約400GW

「2050年カーボンニュートラル」を見据えた場合、太陽光は、次期エネルギー基本計画で2030年時点に想定する110~120GWを大きく上回る規模(300~400GW)が必要とのシナリオが多く公表されています。こうした規模の太陽光を目指す場合、環境省として、どのような立地誘導をイメージしているのですか?

小笠原  環境省では、経済性を加味した国内の再エネの導入ポテンシャルを調査しています。その分析では、太陽光は最大で406GWという導入量になっています。ただ、これは経済性を加味しているといっても、一定の条件を置いて機械的に計算しているので、2050年にこれだけの容量が導入されるわけではありません。とはいえ、太陽光の開発ポテンシャルは、まだまだ大きいことを示しています(図2)。

図2●日本における経済性を加味した再エネ導入ポテンシャル
図2●日本における経済性を加味した再エネ導入ポテンシャル
(出所:環境省)
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 406GWのなかには、住宅や各種建築物・施設の屋根上のほか、河川や港湾、空港、鉄道、道路などのインフラ、公園などの遊休地、耕作放棄地の転用や田畑・農用地を利用したソーラーシェアリング(営農型太陽光)も含まれています。

 例えば、2030年に向けては、政府・自治体施設の50%以上への太陽光設置を進めますが、その先の2040年には100%の達成に取り組むイメージがあります。

 今年8月、国土交通省と経産省、環境省の共管による有識者会議(脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策などのあり方検討会)で「2030年に新築住宅の6割に太陽光設置」という政府目標を掲げました。懸案だった「住宅太陽光の義務化」に関しても、いくつかの課題も指摘されましたが、「将来における選択肢の1つ」という前向きな文言が入りました。これらはカーボンニュートラル達成に向けた大きな前進と捉えています。

 「新築住宅の6割に太陽光設置」は、注文住宅に加え、現在太陽光搭載の少ない建売住宅にも設置を促すイメージで、かなり挑戦的な目標です。その実現に向け、環境省としては、ZEHに対する補助、税制改正への要望のほか、住宅を含めたPPAモデルの推進、脱炭素先行地域への集中導入などで後押ししていきます。

太陽光の国内導入を今後、飛躍的に伸ばすには、ソーラーシェアリングを含めた農地の活用がカギになるとの見方が多くあります。

小笠原  農山漁村への再エネ導入に関しては、荒廃農地の活用やソーラーシェアリングなど、農水省がさまざまな取り組みを進めています。

 環境省としても、農地の再エネ導入ポテンシャルは非常に高いと考えており、農水省と連携してソーラーシェアリングを支援しているほか、改正温対法に基づくポジティブゾーニングでも、農地法の特例を設けています。すでに説明したように農山漁村再エネ法との連携規定もあります。

 農水省と連携し、地域の合意形成を進めながら、農地の再エネポテンシャルを活用していきます。地域共生型再エネの開発目標として掲げた「2030年に約4GW」の新規開発のほか、荒廃農地の活用やソーラーシェアリングによって2030年までにさらに4GW程度の開発を上乗せするイメージを持っています。挑戦的な目標ですが、農水省、そして民間企業と連携して取り組むことで実現させたいと思っています。