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「太陽光パネル税は公平性の視点で疑問も」、乾弁護士に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/10/25 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ
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事業用太陽光発電所に対し太陽光パネル1m2当たり50円を課税する「太陽光パネル税」の導入に現実味が出てきた。屋根上を除いた連系出力10kW以上の野立て太陽光に課税するもので、岡山県美作市が法定外目的税として新設を目指し、今年3月に条例案を議会に提出した。今回は継続審査となったものの、早ければ12月の定例議会で可決される可能性もある。同法案は、一度は議会で否決されて廃案になったものの、市は改選後の議会に一部修正したうえで再提出した。こうした経緯に詳しい乾由布子弁護士(オリック東京法律事務所・エネルギーアンドインフラストラクチャーグループ)に聞いた。

実質的に「二重課税」?

ーー美作市の目指す太陽光パネル税を巡っては、固定資産税との二重課税になるのではないか、との指摘が根強くあります。二重課税となった場合は、議会で可決されても、総務大臣が同意しない可能性もあるのでしょうか。

オリック東京法律事務所の乾由布子弁護士
オリック東京法律事務所の乾由布子弁護士
(同所パートナー、エネルギーアンドインフラストラクチャーグループ)
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 二重課税ではないか、との問いに対し、市は、固定資産税の課税客体(課税の対象となるモノや事実など)が「発電設備」であるのに対し、太陽光パネル税では「売電行為」なので二重課税ではない、と説明しています。一見違うものに聞こえますし、前者が「発電設備の価格」をベースに計算されるに対し、パネル税は「パネルの面積」で課税されるということで、課税標準(税金を計算する際の算定基準)も異なるとの説明がなされています。しかし、結局同じ発電設備への課税であって、実質的に二重課税であるということは、多くの人が感じるところではないでしょうか。

 法定外目的税が導入されるには、自治体で条例が可決されたのち、総務大臣の同意が必要です。総務大臣は、以下の3点に該当する以外は、同意しなければならないとされています。それは、(1)国税また他の地方税と課税標準を同じくし、かつ住民の負担が著しく過重となること。(2)地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること。(3)国の経済施策に照らして適当でないことーーです。

 この3つの不同意事由のうちパネル税で問題となるのは、(1)の二重課税と住民の過重負担、それから(3)の国の経済施策との不整合でしょう。

 国は、再生可能エネルギーを推進するため、2012年に固定価格買取制度(FIT)を導入しました。当然ながら、これまでFITで決められた調達価格には、パネル税が想定されていません。調達価格は、発電事業者が一定の収益を得られる水準にすることで、開発意欲を持たせることを狙っています。パネル税によって収益性が損なわれることになれば、国がFIT制度でもって内外の投資家に与えてきた投資の予測可能性が完全に裏切られることとなり、日本の再エネ政策は大きなダメージを被るでしょう。

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