メガソーラービジネス

「再エネを増やし安定供給まで、調整機能にも投資」、Zエナジー安岡社長、三菱UFJ銀行・西山部長に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2021/11/29 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

三菱UFJ銀行など9社は9月1日、再生可能エネルギーに投資するファンドの創設に向けた事業運営会社「Zエナジー」(東京都千代田区)を設立した。株主のうちコアパートナーは、同行とNTTアノードエナジー、大阪ガス。年内に約300億円で「カーボンニュートラルファンド」を立ち上げ、今後、約10年で3000億円規模まで段階的に拡大していく方針だ。社長に就任した安岡克己氏と、三菱UFJ銀行でZエナジーをサポートする同行サステナブルビジネス部長の西山大輔氏に、ファンドの目指す方向性、戦略について聞いた。

事業規模は1兆円にも

――国内にはすでに東証のインフラファンド市場や太陽光を主体にした再生可能エネルギーに投資する私募ファンドがあります。300億円でスタートし、その10倍を想定するというのは、そのなかでも最大級になりそうです。

Zエナジー社長の安岡克己氏
Zエナジー社長の安岡克己氏
(撮影:清水盟貴)

安岡 創設する「カーボンニュートラルファンド」は、ステージ1から4に段階的に拡大してきいます。まず年内にはステージ1を約300億円で創設し、2020年代前半には第2ステージで約500億円とし、ステージ3で約1000億円、ステージ4で約3000億円を目指します。今後、約10年でステージ4まで拡大させる方針です。

 こうしたファンドの投資額は、再エネプロジェクトのエクイティ(資本)部分になるので、ファイナンスによるローン(融資)も加えれば、再エネ事業全体の規模としては、太陽光発電ならステージ1で出力300MW程度になります。ステージ3の段階では1000MW(1GW)に達し、ステージ4の3000億円では事業規模は1兆円に達し、再エネ設備は1GWを大きく超える規模になります(図1)。

図1●カーボンニュートラルファンドの成長イメージ。再エネ市場活性化とビジネス機会創出の両立を目指す
図1●カーボンニュートラルファンドの成長イメージ。再エネ市場活性化とビジネス機会創出の両立を目指す
(出所:Zエナジー)
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――国内の再エネ市場は、開発余地の大きい太陽光については、2022年度から固定価格買取制度(FIT)の適用がほぼなくなり、新規開発はフィード・イン・プレミアム(FIP)制度や政策に依存しないオフサイト型コーポレートPPA(電力購入契約)モデル(以下、オフサイトCPPA)が主体になり、これらのスキームでの開発難易度は不透明な状況です。

安岡 そうですね。そこでまず、ステージ1では、FITスキームで開発された稼働中のメガソーラー(大規模太陽光発電所)事業の購入を主体に据えています。FITで安定稼働している太陽光を300MW程度、買い集め、これらがカーボンニュートラルファンドの基盤になります。ただ、並行して、FITに依存しないオフサイトCPPAスキームでの太陽光プロジェクトの開発にも着手していきます。

 電力需要家からの再エネ調達ニーズはたいへんに強いのですが、現時点ではまとまった量の再エネ電気は、環境価値のないFIT電気に非化石証書を付けて「実質再エネ」として購入する手法が主流です。ただ、こうした「証書付きFIT再エネ」には、再エネ拡大に寄与する「追加性」がありません。そこで、すでに需要家の中には、FITに頼らずに新規開発した再エネから電気を調達したいという声が増えています。

 こうしたニーズに応えるため、オフサイトCPPAスキームなど非FITスキームでの開発を増やしていく方針です。投資家の考え方にもよりますが、最終的にはファンドが保有する再エネ事業の4割から5割は、非FIT案件にしたいと考えています。

蓄電池や水素製造にも投資

――Zエナジーの株主として銀行が名を連ねています。これまでのメガソーラープロジェクトでは、金融機関はプロジェクトファイナンスによる融資の提供という形で参加し、エクイティ(資本)投下による大きなリスクを避けるのが普通でした。

三菱UFJ銀行・サステナブルビジネス部長の西山大輔氏
三菱UFJ銀行・サステナブルビジネス部長の西山大輔氏
(撮影:清水盟貴)

西山 それが今回のファンドの大きな特徴になっています。これまで銀行は、ある程度開発の進んだ再エネプロジェクトを査定する、という立場でした。しかし、今回のファンドでは、銀行は、再エネプロジェクトを初期段階から一緒につくっていく立場になります。

 もちろん今後もプロジェクトファイナンスによる融資は、銀行の事業拡大にとって主業務であり続けます。ただ、「社会課題の解決に貢献しつつ成長する」という三菱UFJ銀行の掲げる経営方針をカーボンニュートラル分野で実践しようとすると、従来のようなファイナンス供与の機能だけでは、十分ではないのです。

 というは、社会がカーボンニュートラルを実現するため、その1丁目1番地である再エネのさらなる拡充には、ある程度リスクのあるプロジェクト開発も求められるからです。今後、再エネを大量に新規開発し、それを需要家に安定的に供給するには、出力の変動する太陽光や風力の電気をオフサイトCPPAやFIPのように、需給バランスを調整しつつ市場ベースの価格で取引するという仕組みを乗り越えていく必要があります。

 こうした視点に立つと、再エネの新規開発に加え、蓄電池や水素など、エネルギーストレージの導入やVPP(仮想発電所)技術などイノベーションも取り込んでいく必要があります。ファンドの最終段階であるステージ4にはこうした分野への投資も想定しています。

 金融機関としてファンドをつくり、エクイティを伴った資金が還流する受け皿を作ることで、こうした革新を促すプロジェクト初期段階に関わることができます。つまり、経営理念として掲げる「社会課題解決」の1つの糸口としてファンドを位置づけています。

 今回のファンドは、各パートナーが単にお金を出すのではなく、金融や電気小売り、データ管理などのノウハウを出し合い、まず再エネ電源を確保して、派生的なプロジェクトも含め社会インパクトのある形にファンドを育てていく方向性が、一般のファンドとは大きく異なるところです(図2)。

図2●Zエナジーの株主(パートナー)と再エネ普及・拡大に向けた課題
図2●Zエナジーの株主(パートナー)と再エネ普及・拡大に向けた課題
(出所:Zエナジー)
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安岡 さらに言えば、ステージ1で大量に買い集めた数百MW規模のメガソーラーに関しても、FIT終了後、リファービッシュ(改修・改装)して高出力の最新パネルに張り替えることで、太陽光パネルの出力は容易に約2倍にできます。

 例えば、パネル出力20MWの太陽光発電所は、同じパネル枚数で40MWに増設できます。しかし、電力系統に空きがなく最大30MWしか系統に送れないとすれば、晴天時には残りの10MW分を蓄電池に貯めたり、水素製造プラントを併設してグリーン水素を作って販売したりするなど、様々な可能性が考えられます。

 こうした分野では、Zエナジーの株主でもある三菱重工業とも、緊密に連携できるのではないかと期待しています。

 もちろん、投資家には、リターンという目線で出資してもらうので、収益性を維持することは重要です。着実なリターンという使命を睨みつつ、次の世代の電源システムを作っていくという社会課題解決の方向性とも両立していくことを目指します。

需要があるのに供給できない

――コアパートナーであるNTTアノードエナジー、大阪ガスは、小売電気事業者として将来的に大量の再エネ電気をリーズナブルな価格で仕入れるというニーズが出てきそうです。一方で、非FIT再エネを新規開発した場合、電力コストは割高になりませんか。

西山 実は銀行も、多様なステークホルダーのカーボンニュートラルを支援していくという使命から大量の再エネ電気を必要とします。ファンドで集め・増やした再エネ電源は、まず株主(パートナー)が自社事業のカーボンニュートラルのために確保することになりますが、最終的に1兆円規模の事業になれば、それ以外にも広く供給していけると思います(図3)。

図3●カーボンニュートラルファンドは、再エネ電力を「つくる」から「つかう」までをつなぐ一気通貫が特徴
図3●カーボンニュートラルファンドは、再エネ電力を「つくる」から「つかう」までをつなぐ一気通貫が特徴
(出所:Zエナジー)
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 NTTアノードエナジーと大阪ガスは、電力小売事業者としての側面があり、経済性のある再エネ電力を必要としています。ただ、現時点では、オフサイトCPPAによる新規開発は、量的にもコスト面でも需要家ニーズとギャップがあるのも事実です。

 これまで電力小売りの現場では、需要家は再エネ電気を求めるものの、旧一般電気事業者の水準と同じ価格が前提でプレミアムは払わないというケースがほとんどでした。しかし、ここにきて経営情報の開示プレッシャーやSNSでの評判リスクなどから、企業に対する国際世論の圧力は以前とは比較にならないほどに高まりつつあります。こうしたなかCO2排出の経営リスクは、「再エネは電気代が高いから」というレベルではなくなるという認識が広がっています。

 特に金融機関も含めリテール部門があり企業ブランドが経営を左右する企業にとっては、カーボンニュートラルは、「電気代が高い安い」という次元でなくなりつつあります。

安岡 実は当初、ファンドのステージ1では、FITによる既存の再エネ電源の獲得に専念して、オフサイトCPPAによる新規開発に乗り出すのは、3年程度先のステージ2からと考えていました。しかし、需要家と話していると、「オフサイトCPPAによる再エネからの電気はいつから買えるのか」「工場の近くにあるCPPA案件から電気を調達したい」などの要望がどんどん出てきました。

 これまで「再エネは供給できるが需要がない」と思い込んでいたのですが、実際には、「再エネ需要があるのに供給できない」という状況になっていたのです。

 需要家の多くは、非化石証書による「実質再エネ」は国際的な評価基準の再エネ電気としては不十分と理解しており、今からでもCPPAによる「生グリーン電力」を求めているのです。そこで、我々も、ステージ1からオフサイトCPPAの開発に着手し始めました。

「追加性」のある再エネに人気

――日本では、2032年以降、FITで開発された再エネがどっと電力市場に出てきますが、需要家の多くはそれを待ちきれない、ということですか。

西山 もちろん、これまでにFITで開発された再エネは重要なカーボンフリー電源です。現在、多くの企業が、特定卸供給を利用したFIT再エネを購入しているのは、10年後のFIT終了に備え、グリーン電力を購入する権利を確保するという意味もあります。FIT期間は非化石証書でグリーン化しておき、FITが切れた段階でグリーン電力に移行するという計画です。

 ただ、ここにきて、あらゆる業種で企業によるカーボンニュートラル宣言が相次ぎ、サプライチェーンを含めた再エネ調達の可視化に対する国際的なプレッシャーが急速に高まるなか、国際世論の求める「追加性」を持つ再エネの調達ニーズが高まっています。

 カーボンニュートラルファンドでは、当初、10年かけて非FIT再エネを増やしつつ、蓄電池や水素システムなどにも投資し、需要家にグリーン電力を安定供給していこうと考えていましたが、さらに前倒しする必要が出てきました。

 もちろん現時点では、オフサイトCPPAやFIPなどが容易に新規開発できる事業環境ではありません。今後、さらに再エネが増えると、電力市場のボラティリティ(価格変動の度合い)はさらに高まり、市場ベースでの再エネ電力の売電事業ではリスクが高まるという面もあります。一方で、もはやカーボンニュートラルの流れが戻ることはなく、再エネのさらなる拡充は必須です。再エネ開発の停滞が許される状況ではなく、政策的に何らかの推進策が打たれるはずです。加えて、再エネが増えていくに従い、エネルギーストレージの稼働率が高まり、事業性が高まるという面もあります。とはいえ、そうした政策動向や市場環境の変化を待っていたら、いざ開発環境が整った際に機動的に投資できません。

 再エネを集めて増やし、さらに調整機能まで保持していくというステージ4のビジョンに現時点で明確な解が見通せるわけではありませんが、ストレージを含めた調整機能を検証しつつ、普及段階までもっていければ、これをファンドに入れていくというのが理想です。その段階に至れば、投資家を個人にまで広げていくことも視野に入ります。

ESGの「S」と「G」も

――安岡社長は、前職で外資系再エネ・デベロッパーのトップを務めて太陽光を400MW開発し、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)にも取り組んできました。カーボンニュートラルファンドでも営農型太陽光の開発を検討していますか。

安岡 ファンドではまず1GWを目指して、再エネの規模を追うことも重要になるので、開発に手間のかかる営農型太陽光をメインに据えることは現実的ではありません。ただ、営農型には、発電に加え、「農業」という視点が入っていることは大きな意義があり、新規開発を目指しています。

 というのは、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が注目されるなか、「再エネ事業は、当然に環境面はクリアできるが、S(社会)やG(ガバナンス)という視点で貢献できないのか」と問われることもあります。その点、営農型には、農業を通じた地域活性化というプラスアルファがあります。作業者にハンディキャップのある人たちを活用できれば、社会福祉やダイバーシティ(多様性)にも貢献できます。

西山 銀行が主体的にかかわるファンドとしては、まさにそうした点も目指しています。従来の再エネファンドが、再エネを作って、リターンを得るという機能だったのに対し、今回のファンドでは、再エネを増やして安定供給するという役割に加え、それが社会にどうインパクトを与えるのか、新たな評価軸を模索して、それに共鳴してくれる投資家に届ける仕組みも、ステージ2、3、4と上がっていく段階でチャレンジしていきたいと考えています。

 例えば、営農型太陽光でグリーン電気を作って使う中で、それが地方創生に与える影響とか、ダイバーシティに与える影響とか、再エネ事業によって生まれる社会インパクトの価値を明確化して評価軸を立て投資家を募る仕組みも入れることができれば、さらにファンド事業が社会の課題解決に寄与する仕組みになります。

――西山部長は、総合商社で20年間、発電・送配電・小売りという電力業界の多方面で事業経験を積み、グループ企業トップとしてエネルギー業界の変革を牽引してきました。

西山 いまの日本は、エネルギー・トランスフォーメーションの大きなうねりのなかにあります。総合商社は、再エネ開発や電気小売りなど個別事業を日本に根付かせる過程で大きな役割を担ったと思いますが、いまのような大きな社会変革を伴うステージでは、世の中の様々なステークホルダーと接点のある金融機関の役割が重要に感じます。

 商社は、未知の領域での巨大プロジェクト開発などに力を発揮しますが、いまの再エネのように先行事例によって実効的なツールと分かった後は、社会活動としてどんどん進めていく必要があります。多方面のパートナーと連携し、投資家の受け皿を作ることや、地域と密着する再エネを作っていく事業者を育成していく必要があることなどを考えると、商社よりも銀行やファンドを中心にしたサポートの方がより効果が大きいと感じます。

三菱UFJ銀行・サステナブルビジネス部長の西山大輔氏(向かって左)、Zエナジー社長の安岡克己氏(向かって右)
三菱UFJ銀行・サステナブルビジネス部長の西山大輔氏(向かって左)、Zエナジー社長の安岡克己氏(向かって右)
(撮影:清水盟貴)
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