メガソーラービジネス

接続箱に「1500Vの壁」、ヒューズを使い国内メーカーが打破

大電流の1000Vメガソーラーにも需要

2021/12/08 19:25
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 国内のメガソーラー(大規模太陽光発電所)で、太陽光パネルを接続した直流回路を1500V対応で構成する試みがはじまって数年が経つ。

 太陽光パネルやパワーコンディショナー(PCS)については、続々と対応製品が発売されてきたが、その割には、国内で直流回路を1500V対応で設計した太陽光発電所は限定的で、一般的に広まっているとはいえない。

 直流1500V対応の太陽光パネルを採用しつつ、直流回路を1000V対応で構成していることが多い。太陽光パネルの接続枚数を一定以下に抑えた設計となる。

 直流1500V対応の回路の構成がいまひとつ広まらない原因の1つに、接続箱の問題を挙げる声がある。直流1000V対応と1500V対応では、接続箱が大きく変わるためである。

 近年では、小容量のPCSを使った、いわゆる分散型の手法を採用するメガソーラーもある。一般的に、初期の分散型のメガソーラーでは、太陽光パネルを接続した直流回路を、接続箱を介さずに直接、小容量のPCSに入力されてきた。

 しかし、最近では小容量のPCSといえども定格容量が50kW、100kWなどと、容量が大きくなってきている。規模の大きなメガソーラーでは、こうした容量の機種を使うことが増えている。

 そして、こうした機種の場合、従来の集中型のPCSと同じように、直流回路をまず接続箱に入力し、そこで一定の電流に束ねてPCSに入力する構成は変わらない。

 直流回路を1500V対応で構成した場合、太陽光パネルの出力が大きくなることから、接続箱の入力側は、25~30Aの電流に対応する必要がある。ここが1000V対応と1500V対応で大きく変わる点になる。

 直流600Vや1000Vに対応した接続箱の多くは、直流の入力側の遮断器としてスイッチと半導体(逆流防止ダイオード)を備えている。

 この遮断の手法では、これまでのヒューズに比べて交換の手間が省ける利点がある。

 ヒューズの場合、電流が逆流すると、溶け切れることで回路を遮断する。溶け切れたヒューズを交換しなければ復旧しない。スイッチの場合はレバーが倒れて回路を切り離して遮断する。レバーを元のオンの位置に戻せば復旧する。

 直流1500V対応の回路を採用する場合に、接続箱の入力側の遮断器に求められる25~30Aの電流への対応は、スイッチと逆流防止ダイオードによる手法では難しいという。

 このような中、配電盤などの電気設備メーカーである電巧社(東京都港区)が、ヒューズを使った直流1500V対応の接続箱を製品化した(図1)。

図1●直流1500V対応の接続箱
図1●直流1500V対応の接続箱
(出所:電巧社)
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 海外の大手メーカーと競合する製品となる。1000Vまでの接続箱を製品化してきた国内の大手メーカーは、1500V対応の接続箱を製品化していない。ダイオードを使って1500Vに対応する接続箱はあるが、現実的には大電流に対応できず、競合しないのではないかとみている。

 電巧社の場合、自社で屋外設置用の筐体(エンクロージャー)や配電盤などを製造しており、その環境や技術をそのまま生かせるのが大きいようだ。

 海外メーカー製が樹脂による筐体を採用しているのに対して、同社は高耐食めっき鋼板(ZAM)による筐体を採用している。重塩害の環境でも錆びにくく、切断面などが錆びたとしても、錆びが広がりにくい。

 海外メーカーの方が単価は安いが、保証期間は1年が多く、電巧社製と同じように2年間の製品保証を付けた場合、同社製の方が安くなり、一定の価格競争力はあるという。

 直流1500V対応の接続箱の難しさの1つには、1500V対応で、かつ、25~30Aの電流に対応できるヒューズの調達がある(図2)。これを国内で入手するのは難しいという。一方、中国では比較的入手しやすい。同社の場合、中国の子会社が現地で直接、仕入れているために比較的安価に入手できる。

図2●直流1500V対応のヒューズを収めた例
図2●直流1500V対応のヒューズを収めた例
(出所:日経BP)
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 同社の直流1500V対応の接続箱は、こうしたヒューズの採用によって、定格入力電流は最大で30Aとなっている。

 仕様を超えた大きな電流が流れてヒューズが切れると、ヒューズのフォルダのランプが赤く点灯する。これによって、溶断した回路がひと目でわかる(図3)。

図3●ランプが点灯
図3●ランプが点灯
(出所:電巧社)
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 入力できる直流回路は12回路または16回路となっている。ここは、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のPCSに対応した仕様とした。他のメーカーのPCSでは、20回路以上が必要になることもあり、現在、開発を急いでいる。

 TMEICからの要望で、PCSの稼働停止時に接続箱からの出力を止める機能も追加できるようにする。PCSからの信号を受信し、出力を止める。この機能は、2022年3月に実用化できる予定。

 この接続箱は、直流1500V対応としているが、実際には直流1000V対応のメガソーラーで採用されることもあるのではないかと期待している。現状の直流1000V対応のメガソーラーでも、直流回路の電流が大きいために接続箱が、十分に対応できていない場合があるためという。

I-V測定器の価格は約3倍

 直流1500V対応の回路には、もう1つ大きな課題がある。点検である。

 太陽光発電システムの点検では、従来の電気設備向けの点検機器を使える場合と、太陽光発電専用に近い点検機器を使う場合がある。

 これまで国内において、直流1500V対応の電気設備は、鉄道くらいしかなかった。このために点検機器が限られているようだ。

 直流1000V対応と1500V対応の点検機器では、例えば、コンデンサーを共通化できない。1500V対応では、これまでにない大きなコンデンサーを使う必要がある。

 コスト増につながる上、販売数量が比較的少ないことが見込まれる。このために、点検機器メーカーはなかなか製品化できない。

 太陽光発電システムの点検を多く担っているエネテク(愛知県小牧市)によると、直流1500V対応のメガソーラーの点検で課題となったのは、I-V(電流-電圧)特性の測定だった。絶縁抵抗測定に関しては夜間に実施し、機器や手法はこれまでと変えずに、なんとか対応しているという。

 しかし、I-V特性の測定を夜間に実施するわけにはいかない。そこで、直流1500Vに対応したI-V測定器を新たに購入し、使っている(図4)。日本カーネルシステム(大阪市中央区)製で、価格は1000V対応器よりかなり高くなったという。

図4● 1500V・30Aの計測が可能
図4● 1500V・30Aの計測が可能
(出所:日本カーネルシステム)

 現在のところ、直流1500V対応の点検の回数は限られるものの、どのような発電設備でも点検できる対応力を持つという方針から、購入に踏み切った。今後、こうした検査機器の低価格化が望まれる。

■変更履歴
3ページ目、7段落目で価格・販売方式の記載で誤りがあり、修正いたしました。 [2021/12/17]