メガソーラービジネス

ポストFITと菅政権下の市場展望、豪雪の爪痕、本格化する大規模蓄電池――メガソーラービジネス・2021年回顧

2021/12/25 00:16
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がはじまってから、9年目に入った2021年。「メガソーラービジネス」に掲載された記事の年間閲読数ランキングから、この1年を振り返る。

 1位は、次世代のエネルギーシステムに関する記事となった。水素原子が融合する際に放出される膨大な熱を利用する「量子水素エネルギー」を応用するもので、エネルギーを生み出す原理は、核融合によるものだ。

 再生可能エネルギーと組みわせ、グリーン水素を燃料にした場合、カーボンニュートラルを実現できる。まずは、工場向けのボイラーとして高温を取り出す装置として製品化が進んでいる。

第1位:
「核融合・熱」によるボイラーが実用化へ、金属積層チップで熱を取り出す(10月4日公開)

 2位は、年初に公開した、2021年の市場を展望した記事となった。こうした市場の動向に関する記事では、3位にも、国内のメガソーラーの規模別ランキング、4位には、ソーラーフロンティアの太陽光パネル製造事業の撤退に関する記事が入った。

 このほか、太陽光発電をめぐる環境の変化や、市場の変化を解説する記事が上位に入った。太陽光の推進策が移行期にあるなか、事業環境の変化にどのように対応し、どのように工夫することによって、今後も太陽光発電事業を伸ばしていくのか、関連事業者の関心を集めた。

 また、2020年9月の政権交代を機に、「2050年までに温室効果ガスを実質ゼロ」にするカーボンニュートラル宣言や、再生可能エネルギーをより大規模に導入する施策を進めていく動きを見せている。こうした動きを紹介する記事も上位に入った。

 市場取引を盛り込んだフィード・イン・プレミアム(FIP)の導入や、FITを前提としない自家消費、コーポレートPPA(電力購入契約)スキーム向けが主軸となるなか、従来以上に、事業者の持つノウハウや工夫が試されることになる。地域の基幹的な電源として根付かせていこうとする意欲の高さが伺える内容も多く読まれた。

第2位:
太陽光発電市場――2021年の展望~FITに駆け込み? 市場規模、卒FITモデルの動向(1月12日公開)

第3位:
「メガソーラーランキング・TOP40」2020年版、100MW超が6サイトに(2020年11月19日公開)

第4位:
ソーラーフロンティア生産撤退で「日の丸太陽光」は風前の灯(12月8日公開)

第9位:
2020年の世界太陽電池市場、シェアトップ5社は?(5月24日公開)

類似するテーマの他の上位記事:
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「PPAは最終的にはバーチャル型に移行へ」、中山・京大特定講師(44位、2020年10月22日公開)
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2020年の太陽電池市場、「単結晶」が市場を独占(58位、2020年12月8日公開)
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太陽光「電気主任技術者の2時間ルール」を緩和へ、経産省が保安規制を見直し(64位、6月17日公開)
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先行する欧州のリサイクル事情、国内企業にも働きかけ、ガラス再資源化協議会に聞く(69位、2月10日公開)
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三重県にあるメガソーラー
三重県にあるメガソーラー

豪雪の爪痕

 次いで、トラブル事例を紹介した記事が上位に入った。

第5位:
「令和3年豪雪」が太陽光発電所に残した"爪痕"、雪解けで明らかに(5月14日公開)

第7位:
「すべてのパネルを交換したい」、ずさんな工事の低圧太陽光(6月17日公開)
第8位:
豪雨の後、「太陽光パネルに、おびただしいカエルの死骸」(7月29日公開)

 毎年のように見舞われる、豪雪や記録的な強風や豪雨を伴った台風に伴う被災、施工の不良、自動車が通行することが難しい立地でのトラブル対処の大変さ、水上太陽光発電所ならではの動物による被害、出力抑制のための遠隔制御システムの導入に伴うトラブルなど、さまざまな例の記事が関心を集めた。

このほかのトラブル関連の上位の記事:
まるで「マチュピチュ」、尾根筋の太陽光が損壊、歩荷のような修理作業(27位、9月9日公開)
太陽光の盲点、「アースの不良」、地面から外れて錆びている例も(34位、2020年2月12日公開)
屋根上太陽光の知られざるセルの過熱、原因は「金具の影」(63位、3月18日公開)
続・「マチュピチュ」のような尾根筋の太陽光、発電事業を止めて撤収(67位、9月23日公開)
「過剰な太陽光パネル廃棄、過剰な保険金の風潮を改めよう」、豪雪の被害調査に「EL」を持ち込んだワケ(74位、4月30日公開)
住宅太陽光の接続箱に5羽の「スズメ」、侵入経路は?(80位、4月1日公開)
水上太陽光で警報、原因は「ヌートリアがかじって短絡」(81位、2月18日公開)
まるで「ラピュタの城」、雑草に覆われた太陽光、集電箱は水浸しで、あわや売電停止に(96位、2020年1月16日公開)
千葉・水上メガソーラー火災、破損原因は「揺動による応力集中」、京セラTCL報告(104位、2020年2月6日公開)
発見例が増えてきた、「雨が降ると漏電する」太陽光パネル(105位、8月19日公開)
豪雪で、アレイごと地面に押し潰された、東北の低圧太陽光(111位、6月3日公開)
九電のルール変更の余波、「なぜか全日100%で抑制」(126位、11月23日公開)

豪雪で損壊した例
豪雪で損壊した例

巨大案件の稼働、自家消費、水素の製造

 次いで、国内各地の太陽光発電所を訪問し、開発の経緯や運営の方針、独自の工夫などを紹介するコラム「メガソーラー探訪」や「新エネ・システム最前線」の記事が入った。

 新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を優先する状況の影響を受ける中、この状況を、太陽光発電所の運営やこのコラムの取材への応対まで、新たな工夫を講じる機会としている発電事業者やO&M(運用・保守)サービス事業者も少なくない。

第14位:
日本最大・260MWのメガソーラー、美作市に稼働(2020年7月21日公開)

このほかの上位に入った関連記事:
20MWのメガソーラーを「自家消費」、浪江町で水素製造(43位、2020年5月12日公開)
「再エネ水素」と「再エネ酸素」で陸上フグ養殖(52位、2020年12月29日公開)
「山間メガソーラー」における先端的O&M、久米南町サイトの5年(87位、5月26日公開)
日向市の特高太陽光に見る、三菱UFJリース子会社の再エネ戦略(92位、1月19日公開)
「竹チップをまく」、「自動車で踏み潰す」、雑草対策を模索するエンバイオ(93位、10月29日公開)
津の51MWに見る、オリックスの「デジタル・メガソーラー管理術」(113位、4月13日公開)
関西最大121MWのメガソーラー、パシフィコ・エナジーが着工(116位、8月4日公開)

「メガソーラー裁判」を読み解く

 次に上位に入ったのは、法律関係の記事となった。FIT導入から年数がたち、同制度による事業開発や制度にかかわるトラブルが増えており、訴訟にまで発展するケースが増えているようだ。

第17位: ・「メガソーラー裁判」を読み解く、市による「不許可」の有効性は?(2020年7月10日公開)

第22位: ・メガソーラー建設を巡る裁判はどのような動向ですか(2020年5月29日公開)

このほかの上位の関連記事:

太陽光発電所の譲渡に際し、特約が「公序良俗」違反に(36位、10月20日公開)

「メガソーラー裁判」を読み解く、地裁の判断はなぜ覆ったのか?(前半)(63位、6月23日公開)

米国現地情報の上位に、蓄電池の併設

 次に上位に入ったのは、米国の現地情報を紹介するコラムの記事となった。

 米カリフォルニア州やハワイ州などは世界的にも太陽光の導入で先行しており、需給調整機能として大規模なエネルギー貯蔵施設の導入が本格化している。太陽光発電の拡大には大型蓄電池が不可欠になりつつあることを示している。

第32位:
米加州も「太陽光への出力抑制」急増、回避策も着々(10月7日公開)
第35位:
風力と太陽光で2035年に「1100 GW」、電力部門の脱炭素に現実味(5月7日公開)
このほかの上位の関連記事:
ハワイ大手電力、住宅蓄電池の放電時間を指定、火力廃止へ(59位、9月6日公開)
「原発」跡地に690MWのメガソーラー建設へ、蓄電池を併設(99位、5月6日公開)
「カーボンゼロ」に本気の米電力、「系統蓄電池」導入を加速(109位、4月6日公開)
太陽光パネルのコスト、数年ぶりに上昇、案件開発に遅れも(110位、11月11日公開)
米「メガ蓄電池」3年で10GW、太陽光併設が急増(124位、11月16日公開)