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「波の力で水を汲み上げ水力発電、離島で事業化、MW級も視野に」、音力発電・速水代表取締役

メガソーラービジネス・インタビュー

2022/01/12 18:17
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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波のエネルギーを使った新たな発電技術として、「波力揚水発電」がある。文字通り、波のエネルギーを使って水を汲み上げておき、落差を利用して水力発電を行う。この発電技術に取り組んでいるのが、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)発のベンチャー企業である音力発電(神奈川県藤沢市)である。同社の速水浩平代表取締役に、波力揚水発電への取り組みの現状や将来性について聞いた。

――発電床や波力揚水発電など、さまざまなエネルギー関連の技術開発や事業化に取り組んでいます。経緯などを教えてください。

音力発電の速水浩平代表取締役
音力発電の速水浩平代表取締役
(出所:音力発電)

 高校時代から起業への関心が高く、発明が好きな学生でした。まず音と発電に着目した研究をはじめました。

 音などの振動によるエネルギーは相対的に小さいですが、センサーや通信の端末など小型・省力の機器の駆動に適した電源にできる可能性があります。ここでは振動力発電などが有望で、その応用の1つが発電床です。

 発電床は、人などの通行に伴う振動を使って発電します。

 発電できる電力はわずかですが、IoT(モノのインターネット化)では、あらゆる空間にさまざまなセンサー端末がばらまくように置かれるようになり、こうしたばらまき型のセンサー端末の消費電力は極限まで微小になり、かつ、電線を敷設しないでその場で電力を得ることが必須になるので、こうした将来のIoT向けセンサー端末の電源の1つになりえます。

 このような、その環境にある微小なエネルギーを使って発電する、いわゆるエネルギーハーベスティング(環境発電)に関心があり、波の活用もその1つでした。

 波を使って揚力発電をする波力揚力発電は、2017年ころに手掛けはじめました。国も着目し始めた時期で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、総務省、国土交通省が関連プロジェクトを実施しています。

 とくに、太陽光・風力発電という変動の大きな再生可能エネルギー発電の「しわ取り」への活用に関心があります。

 脱炭素化を目指して太陽光や風力発電を導入しているはずなのに、その変動の解消のためにガス火力発電が使われているという状況は、現状では仕方がないにせよ、おかしな話です。蓄電池の大規模な活用は、筋が良いのですが、コストが高く現実的な策としての採用は難しい状況にあります。ここに波力揚水発電を使えないかという構想です。

 われわれは現在、NEDOのプロジェクトを通じて、「しわ取り」やベース電源への応用も想定した波力揚水発電の開発に取り組んでいます。

――開発している波力揚水発電システムの仕組みを教えてください。

 発電システムは、船のような外観で海上に浮かべます(図1)。波の取り込み口があり、ここから波が入ってきます。波が上下に動くエネルギーを使ってフロート式のピストンを動かし、発電システム内の真水を揚水管内から上のプールに引き上げます。この水をもう一方の管を通じて下に流してその勢いでタービンを回して発電します。

図1●設置のイメージ
図1●設置のイメージ
(出所:音力発電)
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 揚水に使う真水は、発電システム内を循環しています。このため、「循環型の波力揚水発電」と呼んでいます。

 揚水に真水を使う理由は、海洋生物の影響を抑える目的です。海水を使うと、発電システム内にフジツボなどが付着してしまう恐れがあります。

 落差が2mの実験機を使って技術を検証してきました(図2)。今後は、3月に島根県隠岐の島で、落差が20mと10倍にした実験機を使い、自然の波を使って実験します。揚水発電は、揚水の落差が大きいほど出力が増します。この実験機の出力は約100kWです。

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図2●実証機の1/10となる落差2mで実験
図2●実証機の1/10となる落差2mで実験
下は今後の展開 (出所:音力発電)
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 その後、沖縄県の久米島に実証機を設置し、8月から1年間、実証する予定です。この実証機は、落差が20m、出力は330kWです。この実証は、自己資金で賄います。

 この実証機の波の取り込み口は幅が20m・高さは約1mで、船のような筐体全体の奥行きは約30mです。

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