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FITの「落札件数ランキング」、トップは88件・国内最安8.99円を付けたベンチャー

大手デベロッパー老舗や、営農・水上型も上位に

2022/03/27 21:21
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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 2017年度に太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)に入札方式が導入されてから約4年が経った。当初、出力2MW以上で始まった入札は、2019年度から500kW以上、2020年度からは250kW以上に広げられて対象範囲を拡大してきた。

 それに従って、落札する件数も急増した。当初は、募集容量に達しないことも多く、第2回は非公表の上限価格を下回る案件がなく「落札ゼロ」になるなど、必ずしも狙い通りの運用と効果が実現できなかったものの、2021年度から従来の年2回を4回に増やすとともに、事前に決める上限価格を公表する形にして以降、参加者が増え、価格低減効果がはっきりと表れてきた。

 回数を重ねていくにつれて、落札価格の低下以外にも、国内における太陽光発電所の開発を巡る方向を象徴するような動きがみられるようになってきた。そこで今回、11回実施された入札で落札された案件の件数順のランキングを作成した(図1)。第2回は落札がゼロ件だったため、表からは外した。

 国内の太陽光デベロッパーには、FIT初期の40~30円台/kWhまでで新規開発を止めたケースも多い中、ランキングに名を連ねた企業は、FIT本来の趣旨に沿って継続的に低コスト化に取り組み、太陽光開発で高いコスト競争力を持っているとも言える。

図1●FIT入札で落札件数の多い企業・上位15位まで
図1●FIT入札で落札件数の多い企業・上位15位まで
(出所:日経BP)
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 落札した件数が最も多かったのは、エネグローバル(東京都千代田区)で、88件だった。2位との差が16件と多く、断トツのトップだった。

 最新の第11回の落札では、最低落札価格が8.99円/kWhまで下がったが、この価格で落札したのもエネグローバルだった。

 同社は、出力297.0kWと495.0kWの2つの案件を、最低落札価格となった8.99円/kWhで落札した。そのほかにも9円台で38案件を落札した。

 同社の李力欧(リ・リオ)社長 兼 最高経営責任者(CEO)は、中国の東北部・黒竜江省の寒村の出身で、日本に移り住んだ後、欧米のIT(情報技術)関連の大手で要職を務めた。

 その後、太陽光発電所を初期段階から開発・運営するエネグローバルを設立し(関連コラム:両面ガラスの6年半、信頼性を上げつつも30枚に割れ、笠間市の太陽光発電所)、第5回以降の入札で継続的に多くの案件を落札してきた。

 とくに第11回では、44件も落札した。これが同社の88件の落札の半分を占めている。

 継続的に入札に参加し、落札価格の低下をけん引してきた企業の中には、同社のようなベンチャーや中小企業も少なくない。

 大手だけでなく、地域の企業や中小・ベンチャー企業など、多様なプレイヤーがそれぞれの強みをいかして関わることができる、太陽光発電ならではの市場の特徴を示す一例といえる。

 第2位は、72件を落札したプロメディア(東京都千代田区)となった。

 同社は、太陽光発電所などを開発して分譲しているアドバンス(同)のグループで、太陽光発電所の開発・運営を担っている企業のようだ。

 アドバンスは、大手不動産のヒューリックと再生可能エネルギーの開発で提携している。ヒューリックは、再エネ100%への転換を目指すRE100に加盟しており、2020年12月に、追加性のある新規再エネに1000億円を投資すると公表している(関連ニュース)。

 第3位は、65件を落札したJAG国際エナジー(東京都千代田区)となった。同社は、FITスタート前から野立て太陽光を開発してきた太陽光デベロッパーの老舗だが、FIT価格が低下するなかでも、新規開発に取り組んできた。自治体と連携した案件では、系統停電時にも発電可能な自立型システムを部分的に導入するなど、地域活用電源のコンセプトを先取りしてきた。

 大手デベロッパーの中では、格段に多い件数を落札している。ただし、毎回のように落札しているのではなく、第6回と第9回にそれぞれ25件ずつ落札しており、この2回での50件が大半を占めている。開発の効率も考慮して、固め打ちのような手法で開発と入札を手掛けているようだ。

 第4位は、43件を落札した2社となった。レーベンクリーンエナジー(東京都中央区)と、ジェネックス(愛知県碧南市)である。

 レーベンクリーンエナジーは、現在はタカラレーベングループに入り、現社名となっているが、以前のACAクリーンエナジー、さらに以前のくにうみエナジーの時代から、継続的に落札を続けてきている。

 くにうみエナジーの設立当初から、いわゆるミドルソーラーと呼ばれる50kW以上、1MW未満程度の太陽光発電所に注力して開発・運営してきている特徴のある企業である(関連コラム:「年100カ所・40MWを開発」、函館の太陽光に見るミドルソーラー専業の実力)。

 ミドルソーラーは、メガソーラー(大規模太陽光発電所)ほど広い土地でなくても開発できることから、今後、開発が活発になることが期待されている分野である。

 落札件数は、くにうみエナジー時代に4件(第4回)、ACAクリーンエナジー時代に27件(第6回~第8回)、レーベンクリーンエナジーとなってから12件(第9回~第10回)となっている。

 一方、ジェネックスは、太陽光発電に加え、風力発電やバイオマス発電、熱供給にも取り組んでいる企業で、グループ会社のジェネックスパートナーズの開発分も含めて43件となっている。

 ジェネックスが35件、ジェネックスパートナーズが8件となっている。

 第6位は、35件を落札したクリーンベンチャー21(京都市伏見区)。同社は、松下電器産業(現・パナソニック)の技術者でPV研究開発センター所長も務めた室園幹男代表取締役が設立したベンチャー企業である。

 球状シリコンというユニークな太陽電池技術が特徴で、これを採用した集光型セル(発電素子)による太陽光パネルで知られるが、太陽光発電所の自社開発を含め、業容を広げている。

 第7位は、29件を落札した富士テクニカルコーポレーションとなった。

 同社の場合も、富士テクニカルコーポレーションによる24件に、同じ代表者である太平洋電力(茨城県鹿嶋市)による5件の落札分を含めて29件とした。

 富士テクニカルコーポレーションは、第1位のエネグローバルの開発・運営を支えていた時期もあった企業である。

 第8位は、27件を落札したファームランド(群馬県前橋市)だった。

 同社は、現地で農業関連を営む岩井雅之代表取締役が設立した企業で、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に注力している特徴がある。

 第9位は、26件を落札した大和ハウス工業である。グループの発電子会社である大和エネルギーも16件を落札して第12位に入っている。

 第10位は、22件を落札したFRESH UP(東京都新宿区)だった。同社の場合も、同じ代表者の2社による合計5件も加えて22件とした。

 第11位は、21件を落札したENEOSが入った。同社は本業の石油関連に加えて、太陽光発電など、再生可能エネルギー事業を強化している。

 第11回の入札では、10.10円/kWhで5案件を落札した。このうち3案件は出力400.0kW~1.5MWの高圧配電線に連系する案件だが、残りの2案件は出力12MWと18MWの特別高圧送電線に連系する大規模案件となっている。

 第12位には、16件を落札した3社で、前述した大和エネルギーのほか、特定目的会社とみられる合同会社桜道32ほか(桜道33/31/30/23/19/15分も加算)、日本ベネックス(長崎県諫早市)が入った。

 日本ベネックスは、板金加工にはじまり、各種の機械製造などを軸に、近年では屋根上設置を主体に太陽光発電所の開発・運営に注力している企業である。

 ここ数年、オンサイト型PPA(電力購入契約)モデルによる屋根上太陽光が増えているなか、同社は一貫して全量FIT売電による「屋根借り太陽光」を開発しており、入札案件も、屋根上設置と見られる。逆に言うと、相対的に施工費用を抑制できる屋根上設置型太陽光のコスト競争力の高さを示しているともいえる。

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