記録的な豪雨が国内各地で毎年のように続いている中、何らかの理由によって斜面が崩れる、土砂が流れて敷地外に流出する、そこまでの大きな被害には至らなくても地面の特定の場所を水が流れ続けることで浸食されて水みちができてしまう、といった太陽光発電所が増えている。
崩れた斜面などは、再び土木工事を講じて復旧することになる。基礎の周辺の土が削られて、本来の地耐力が損なわれてアレイ(太陽光パネルを架台に固定した単位)が損壊し、やはり復旧工事が必要になった例も少なくない(図1)。
山林や斜面を太陽光発電所の用地とする場合でも、林地開発許可などで求められる内容を適切に踏まえ、かつ、適切に切土や盛土を行い、適切に土を締め固めるといった設計と施工によって適切な雨水の排出を実現できていれば、ある程度、安定した状態を保つことができる。
しかし、土を敷地外に排出しないことを優先して過剰な盛土をする、盛土した後の土の処理が十分でない、といった例が、太陽光発電所では多く見られる。これが運転開始後の土木系の事故につながる理由の1つとなっているようだ。
こうした中、太陽光発電設備と同じように、定期的に敷地内の状態を把握することで、土木系のトラブルを最小限に抑える、いわゆる予防保全を重視する運営を目指す動きが出てきた。トラブルの予兆を察知した時点で適切な対処を施すことで、大きな損壊や事故など土木系の大きなトラブルを未然に防ぐことができる。
その方が、コスト面でも、大きな事故から復旧するよりも簡単かつ低コストで済み、売電ロスが生じる可能性も少ないだろう。なにより、近隣地域からの信頼を損なわずに済むことは、長期間の運営の上でかけがえのない利点となるだろう。
このような太陽光発電所向けの土木系の予防保全を実現できるサービスも登場している。公共工事などで多くの実績があるジオシステム(大阪市西区)が提供している。
同社は、土木系の事前調査から開発計画の立案、設計・施工、完成後の定期点検や保守まで、一貫して手掛けている。土木工事に必要な資材や工法も開発・提供しており、こうした企業が太陽光発電向けにサービスを展開することは、まだ珍しい。
近年に起きた土砂災害を契機に、山林の土砂崩れなどのリスクが大きいと見受けられる太陽光発電所の開発への懸念が高まっている。こうしたなか、都道府県から林地開発許可を得て開発している案件を手掛ける発電事業者に対して、土木・構造に関する点検や評価、是正を求める通達が発されている。この対応にも寄与する取り組みといえる。