メガソーラービジネス

雨水による土削れ・侵食リスクに対応、太陽光発電所の土木評価・対策サービス

重機なしで侵食を防げる工法や土を侵食しない植生フィルターも

2022/05/26 14:23
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 記録的な豪雨が国内各地で毎年のように続いている中、何らかの理由によって斜面が崩れる、土砂が流れて敷地外に流出する、そこまでの大きな被害には至らなくても地面の特定の場所を水が流れ続けることで浸食されて水みちができてしまう、といった太陽光発電所が増えている。

 崩れた斜面などは、再び土木工事を講じて復旧することになる。基礎の周辺の土が削られて、本来の地耐力が損なわれてアレイ(太陽光パネルを架台に固定した単位)が損壊し、やはり復旧工事が必要になった例も少なくない(図1)。

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図1●太陽光発電所向けの土木系の調査や復旧サービスの例が増えてきた
図1●太陽光発電所向けの土木系の調査や復旧サービスの例が増えてきた
(出所:ジオシステム)
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 山林や斜面を太陽光発電所の用地とする場合でも、林地開発許可などで求められる内容を適切に踏まえ、かつ、適切に切土や盛土を行い、適切に土を締め固めるといった設計と施工によって適切な雨水の排出を実現できていれば、ある程度、安定した状態を保つことができる。

 しかし、土を敷地外に排出しないことを優先して過剰な盛土をする、盛土した後の土の処理が十分でない、といった例が、太陽光発電所では多く見られる。これが運転開始後の土木系の事故につながる理由の1つとなっているようだ。

 こうした中、太陽光発電設備と同じように、定期的に敷地内の状態を把握することで、土木系のトラブルを最小限に抑える、いわゆる予防保全を重視する運営を目指す動きが出てきた。トラブルの予兆を察知した時点で適切な対処を施すことで、大きな損壊や事故など土木系の大きなトラブルを未然に防ぐことができる。

 その方が、コスト面でも、大きな事故から復旧するよりも簡単かつ低コストで済み、売電ロスが生じる可能性も少ないだろう。なにより、近隣地域からの信頼を損なわずに済むことは、長期間の運営の上でかけがえのない利点となるだろう。

 このような太陽光発電所向けの土木系の予防保全を実現できるサービスも登場している。公共工事などで多くの実績があるジオシステム(大阪市西区)が提供している。

 同社は、土木系の事前調査から開発計画の立案、設計・施工、完成後の定期点検や保守まで、一貫して手掛けている。土木工事に必要な資材や工法も開発・提供しており、こうした企業が太陽光発電向けにサービスを展開することは、まだ珍しい。

 近年に起きた土砂災害を契機に、山林の土砂崩れなどのリスクが大きいと見受けられる太陽光発電所の開発への懸念が高まっている。こうしたなか、都道府県から林地開発許可を得て開発している案件を手掛ける発電事業者に対して、土木・構造に関する点検や評価、是正を求める通達が発されている。この対応にも寄与する取り組みといえる。

 同社がとくに強みを持つのは、斜面や法面などに補強土擁壁を築く工法という(図2)。緑化タイプやコンクリートタイプの擁壁を築く。公共工事で1万8000件以上、壁面の面積で300万m2以上の実績があるとしている。災害で被災した場所の復旧工事でも約4000件の実績がある。

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図2●緑化タイプやコンクリートタイプの擁壁(上)に強み
図2●緑化タイプやコンクリートタイプの擁壁(上)に強み
(出所:ジオシステム)
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 このほか造成の工法として、さまざまな手法に対応できる。自社で開発した手法や資材だけでなく、幅広く対応しているのは、自社の手法や資材だけにとらわれずに適材適所の工法や資材を使うことが重要なためとしている。

 このうち「ジオセル工法」とは、コンパクトに運べるハチの巣状の樹脂の型枠に、現地にある土と砕石を詰めていくことで地面や斜面を固め、地表の土の侵食を防ぐ手法である(図3)。大きな重機やミキサー車なしで施工できる。

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図3●大きな重機やミキサー車がなくても、人手で土と砕石を使って施工できる
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図3●大きな重機やミキサー車がなくても、人手で土と砕石を使って施工できる
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図3●大きな重機やミキサー車がなくても、人手で土と砕石を使って施工できる
(出所:ジオシステム)

 稼働中の太陽光発電所に向く工法で、調整池の側壁や法面の補強や復旧、管理用の通路の形成などに使われている。

 また、土壌侵食防止機能付きの植生マットを使う工法も太陽光発電所で多く使われている(図4)。これは、地表の土に密着させることで土の侵食を防ぐ。雨水はフィルターの中を通過させるように流していく。これによって、土をそがずに雨水が流れていくので、水はきれいなままである。

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図4●侵食を防ぐ植生マット
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図4●侵食を防ぐ植生マット
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図4●侵食を防ぐ植生マット
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図4●侵食を防ぐ植生マット
(出所:ジオシステム)

 太陽光発電所では、水みちができてしまった場所に、この工法を適用することが多い(図5)。施工後は水みちが形成されなくなる。

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図5●太陽光発電所での植生マットの使用例
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図5●太陽光発電所での植生マットの使用例
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図5●太陽光発電所での植生マットの使用例
上は斜面を覆った例、2段目はそれぞれ左が敷設前、右が敷設後で、3段目は敷設できなかった場所には再び水みちができていることで効果がわかる(出所:ジオシステム)

 排水路にも応用できる。普段は水が流れず、大雨の際にだけ流れるような排水路を、普段は緑あふれる溝として管理できる。

 太陽光発電所の土木系の点検とは、具体的に、どのように実施しているのか。最近では、稼働済みの太陽光発電所を他社に売却するセカンダリー市場での売却向けの評価での活用も増えてきている。

 まずドローンで空撮する(図6)。これは太陽光パネルの点検と同じ狙いで、全体を俯瞰しつつ、土木造成面での異常や、異常の兆候のある場所を探す。

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図6●ドローンを使った空撮で水みちがわかる例
図6●ドローンを使った空撮で水みちがわかる例
(出所:ジオシステム)
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 ドローン点検では、太陽光パネルの異常の発見を目的とする熱分布画像の空撮にも対応している。パネルの空撮では、オリックスグループのオリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント(OREM:東京都江東区)のO&M(運用・保守)サービスをサポートしている(関連ニュース)。

 ただし、太陽光パネルの下の地面の様子は、ドローンでは空撮できない。土木系のO&Mサービスでは、空撮したアレイ間の状況から判断し、太陽光パネルの下のうち、異常を生じている可能性のある場所を、歩いて確認することになる。

 こうして把握した土木系のトラブルの状況と原因を突き止め、解決策を提案する。復旧工事も受託できる。

 例えば、「ガリ浸食」と呼ばれる、水みちによる溝ができている場合、再発を防ぐ措置を提案する(図7)。しかし、発電設備を設置済みの状況のため、アレイの前後方向に排水路を形成するような手法を採ることが難しい。そこで、アレイ前後の場所に東西方向に簡易的な排水路を追加して、相対的に小規模な工事で比較的有効な対策を実現する。

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図7●太陽光発電所におけるガリ浸食の例と、新設する水路の提案の例
図7●太陽光発電所におけるガリ浸食の例と、新設する水路の提案の例
(出所:ジオシステム)
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 こうした水路でも、大きく3つの手法を使い分ける。コンクリート二次製品のU字溝を使う場合、重機が入れなければ施工できない。この条件が可能な場合に限られる。同じU字溝でも、樹脂によるものもある。これなら人手で作業できる。布の袋にコンクリートを注入する手法もある。

 また、地面が陥没して穴が開いていたり、水路から水があふれて周囲が削れてコンクリートのU字溝が傾いていたり、さらに、排水路の下の土まで削れて大きく陥没していたり、水路が土砂で埋まって塞がってしまっていたりといった場合にも、これらの手法で復旧を提案する(図8)。

図8●水路から水があふれて削れていた例
図8●水路から水があふれて削れていた例
(出所:ジオシステム)
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