――日本は海に囲まれています。外洋はむずかしいにしても、護岸の内側など、波の比較的小さい海水面で、水上太陽光発電所を開発するのは難しいのでしょうか。
構想はしています。池に比べて発電所の規模を大きくしやすいので、面積当たりの事業性は高めやすいと期待しています。
ただし、現在製品化しているフロートは、設計上、高さ1m以上の波がある場所での使用には損壊のリスクがあるため、波の状況で場所が制約されます。

類似した例として、台湾で汽水湖に水上太陽光発電所を建設し、稼働実績が約3年あります。海水面でのフロート活用は、実績がゼロでこれからトライ&エラーを重ねていくという段階ではなく、われわれにとっては先行の利点があります。
ただし、太陽光パネルや金具には、塩分を含む海で使うことへの課題が残っています。
また、池が自治体の所有だったのに対して、海の場合は国の所有になります。この交渉に伊藤忠商事の力を借りることができる利点があります。
海を活用した再生可能エネルギー発電で課題となる漁業権との兼ね合いは、洋上風力発電と同様、課題となるでしょう。
フロートの係留に関して、船舶と同じ基準や料金で取り扱われないようにしてもらうことも課題の1つです。
――ほかにも、これまでにない新たな設置場所はあるのでしょうか。
学校のプールに注目しています。鹿児島県で実績ができています。学校のプールを使った発電所は、世界で初めてだと思います(図3)。
学校のプールは、過疎などで休廃校された場合だけでなく、水泳の授業を校外のスイミングスクールなどの施設を活用して実施することも多く、使われなくなっている例が増えています。
しかも、学校は災害時の近隣地域の避難所になっているため、太陽光発電の需要がある場所です。
水上太陽光発電所は、プールに水を満たしておくだけで、造成などの大掛かりな工事をせずに導入できますので、親和性が高いのです。パワーコンディショナー(PCS)は、更衣室に設置できます。
鹿児島の廃校である旧津貫小学校のプールでは、エルム(鹿児島県南さつま市)が水上太陽光発電設備を設置し、2021年9月に完成しました。出力370W/枚の太陽光パネルを160枚浮かべています。