メガソーラービジネス

「水上太陽光を10.05円/kWhで実現できる理由」「学校のプールも活用」、シエル・テール日本法人に聞く

メガソーラービジネス・インタビュー

2022/06/16 17:18
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 固定価格買取制度(FIT)に入札制度が導入されて以降、落札件数・容量の上位に、水上太陽光発電所を開発しているCiel Terre Japan(シエル・テール・ジャパン:東京都中央区)が入り、注目を集めている(ランキングのコラム)。同社は太陽光パネルを水面に浮かべる部材であるフロートの大手、フランスCiel et Terre International(シエル・テール・インターナショナル)の日本法人で、発電事業も手掛けている。ステルフェルド・レミ・タケユキ(武雪)社長に現状やコスト低減の工夫などを聞いた。

Ciel Terre Japanのステルフェルド・レミ・タケユキ(武雪)社長
Ciel Terre Japanのステルフェルド・レミ・タケユキ(武雪)社長
(出所:日経BP)

――フロート販売の実績などの近況を教えてください。

 大規模な水上太陽光発電所は、世界的に見ても日本で立ち上がった分野です。日本法人の設立から数年間は、世界全体の中で日本がトップの販売先でした(関連コラム)。

 日本では、未着工の案件を含めて約130カ所、合計出力約205MWを受注済みです。規模が最も大きいのは、太陽光パネルの出力が約14MWの案件です。このうち約54MWは、自社グループの発電事業です(関連ニュース)。

 世界では約250カ所、合計出力約620MWとなっています。これは日本を含んでいるので、日本以外では約120カ所、合計出力約415MWとなります(図1)。

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図1●日本と世界の受注実績
図1●日本と世界の受注実績
(出所:Ciel Terre Japan)
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 本国のシエル・テール・インターナショナルに、東京センチュリーが11.48%、伊藤忠商事が5.88%出資していることも、日本との縁を深めています。

 海外では、台湾やタイ、米国、インド、ブラジルなどで拡販が進んでいます。いずれも日射に恵まれた地域で、水上太陽光発電の事業性を高めやすい環境にあります。

 インドでは、工場のほか、開発や技術の拠点も持ち、最も従業員が多い地域となっています。従業員は全世界で約200人、このうち日本が約30人となっています。

――現在でも、フロートでは世界でトップなのでしょうか。

 採用されている水上太陽光発電所の件数・容量ともに世界一です。

 ただし、今後は、中国のメーカーに抜かれてしまう日がくるかもしれません。中国には大型の案件が多く、シエル・テールでも出力約80MWの案件に関わったことがあります。しかし、与信の問題のほか、コピー製品の流通などのリスクも大きいため、中国の市場には相対的に力を入れていません。

――FITの入札では、売電単価10.05円/kWhという意欲的な水準で落札した案件も出てきました。どのようにコストを低減しているのでしょうか。

 日本は世界の中でも太陽光発電所の設計ガイドラインが厳しい国のため、コスト面で難しさがありますが、さまざまな工夫によって売電単価が10.05円/kWhでも事業性を満たせる場合が出てきました。

 フロートそのものでは、従来の「Hydrelio(ハイドレリオ)クラシック」から、よりコストを下げられる「Hydrelioエアー」を製品化しました(図2)。

図2●より少ない部材で低コスト化した新製品(上)
図2●より少ない部材で低コスト化した新製品(上)
(出所:Ciel Terre Japan)
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 浮力や安定性、長期信頼性などは維持したまま、樹脂材料を減らすといった変更点があります。しかも、より大型の太陽光パネルを支えられるようにしています。

 製造プロセスをより自動化したり、設置時の組み立てを簡易化したりして施工コストも下げるなど、多くの工夫を積み重ねていることでコストを削減できます。

 こうした効率化は世界共通ですが、一方で日本では必要でもブラジルでは不要な要素があるなど、地域ごとで異なる面もあるため、世界共通の製品を供給しているわけではありません。使用される地域ごとの状況に合わせてカスタマイズしています。

 これら地道な努力によって売電単価10.05円/kWhで落札しましたが、その後、太陽光パネルやその他の資材コストが上がって、入札時の事業計画が崩れてしまい、現在の状況で改めて算出すると、事業性がギリギリになりつつあるのが実態です。

 今後は、より大型の太陽光パネルを採用することで、使うフロートの数量も減らしていく方向性をさらに強めていくことになります。そうなると、フロートには、より浮力を向上させる工夫が必要になります。

 また、フロートの施工や電気配線などEPC(設計・調達・施工)サービスの一部を担当し、稼働後のフロートやアンカーのO&M(運用・保守)まで任せてもらえれば、さらに事業性が高い水上太陽光発電所を実現できるようになります。

 この一環として、電気工事のライセンスを取得する予定です。逆に言うと、ここまで担当できないと、より売電単価が安い案件に対応できないとみています。

 今後は、コーポレートPPA(電力購入契約)に基づく売電向けが増えてくると思います。ここでは株主である東京センチュリーや伊藤忠商事の力も借りながら需要を開拓できればと考えています。例えば、彼らの顧客の中には太陽光発電電力をより多く使いたい需要家企業もあります。

 また、池は土地と違って、個人や企業の所有ではなく、自治体が所有して地域の水利組合や管理組合、地域自治区が管理している場合がほとんどです。自治体などから相談や引き合いは続いていて、今後は売電単価10.05円以下を想定しながら事業性を満たせる案件を目指していきます。

――日本は海に囲まれています。外洋はむずかしいにしても、護岸の内側など、波の比較的小さい海水面で、水上太陽光発電所を開発するのは難しいのでしょうか。

 構想はしています。池に比べて発電所の規模を大きくしやすいので、面積当たりの事業性は高めやすいと期待しています。

 ただし、現在製品化しているフロートは、設計上、高さ1m以上の波がある場所での使用には損壊のリスクがあるため、波の状況で場所が制約されます。

Ciel Terre Japanのステルフェルド・レミ・タケユキ(武雪)社長
Ciel Terre Japanのステルフェルド・レミ・タケユキ(武雪)社長
(出所:日経BP)

 類似した例として、台湾で汽水湖に水上太陽光発電所を建設し、稼働実績が約3年あります。海水面でのフロート活用は、実績がゼロでこれからトライ&エラーを重ねていくという段階ではなく、われわれにとっては先行の利点があります。

 ただし、太陽光パネルや金具には、塩分を含む海で使うことへの課題が残っています。

 また、池が自治体の所有だったのに対して、海の場合は国の所有になります。この交渉に伊藤忠商事の力を借りることができる利点があります。

 海を活用した再生可能エネルギー発電で課題となる漁業権との兼ね合いは、洋上風力発電と同様、課題となるでしょう。

 フロートの係留に関して、船舶と同じ基準や料金で取り扱われないようにしてもらうことも課題の1つです。

――ほかにも、これまでにない新たな設置場所はあるのでしょうか。

 学校のプールに注目しています。鹿児島県で実績ができています。学校のプールを使った発電所は、世界で初めてだと思います(図3)。

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図3●廃校のプールの水上太陽光発電所
図3●廃校のプールの水上太陽光発電所
(出所:Ciel Terre Japan)
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 学校のプールは、過疎などで休廃校された場合だけでなく、水泳の授業を校外のスイミングスクールなどの施設を活用して実施することも多く、使われなくなっている例が増えています。

 しかも、学校は災害時の近隣地域の避難所になっているため、太陽光発電の需要がある場所です。

 水上太陽光発電所は、プールに水を満たしておくだけで、造成などの大掛かりな工事をせずに導入できますので、親和性が高いのです。パワーコンディショナー(PCS)は、更衣室に設置できます。

 鹿児島の廃校である旧津貫小学校のプールでは、エルム(鹿児島県南さつま市)が水上太陽光発電設備を設置し、2021年9月に完成しました。出力370W/枚の太陽光パネルを160枚浮かべています。