特集

世界初、風車を点検・補修する日本のロボット(page 4)

見過ごされてきた発電ロスを最小化

2020/05/13 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
印刷用ページ

見過ごされてきた発電ロス

 ロボットを使った点検や補修による利点として、同社が挙げている発電ロスの最小化とは、どのようなことを指すのか。

 風車は、自然環境の中に常にさらされていることから、何らかの飛来物が当たって表面が損傷したり、泥などが付着して固まってしまうことがある。ブレードにこうした損傷や付着が生じると、程度によっては、風を受けて回る際の抵抗が大きくなる。これによって、回転の効率が下がり、発電のロスとなる。

 比較的短い間隔で定期的に点検してこうした状態を発見し、適切に補修するのが理想の運営といえる。しかし、人手による高所作業にともなう安全性やコストの問題から、多くの風力発電所において、この点検の間隔を引き延ばし、4年に1度といった頻度になっているという。発電ロスがはっきりわかるほど大きくなると、ようやく実施される(図7)。

図7●予防保全で発電ロスを減らす
(出所:LEBO ROBOTICS)
クリックすると拡大した画像が開きます

 この点検や修繕で難しいのは、費用対効果を示しにくい点にある。太陽光発電と異なり、風力発電は風の具合を長期的に予測することが難しいので、発電量の予測と実績の関係や、発電ロスの要素との関係を示すことが難しいことによる。

 このため、運用者には、発電量の実績などではなく、稼働時間が評価の基準となっていることも多く、点検や修繕の重要性について認識が薄い場合もあるという。

 しかし最近では、欧州の風力発電所のアセットマネジメント(投資用資産の管理)において、これまで見過ごされてきた発電ロスも把握し、資産価値を最大化する動きが出てきており、世界的に広がるのではないかとみている。

 こうした環境の中、ロボットを使うことで、安全性やコストの問題を解消できれば、4年に1度程度だった点検や補修を、例えば毎年実施する発電所も出てくると見ている。これによって、ブレードの状態を適切に保ち、予防保全の視点で運営し、発電ロスを大幅に抑えられると強調している。

 風力発電の全世界における導入容量は、2018年の591GWから30年には2000GWに拡大すると予想されている。同社によると、この導入容量から試算すると、ロボットを使った点検・補修サービスの潜在的な市場は、2018年時点で1600億円あり、2030年には3000億円に拡大すると予想している(図8)。

図8●市場規模
世界の風力発電導入量はGlobal Wind Energy Councilの予測を活用(出所:LEBO ROBOTICS)
クリックすると拡大した画像が開きます

 風車1基あたりのサービス単価を40万円として試算したもので、2018年の導入量591GWは約40万基に相当し、この時点でロボットによるサービスが年1回ずつ採用されていれば、1600億円の市場になっていたというものである。

 2030年の導入量2000GWは76万基に相当するので、ロボットによるサービスが年1回ずつ採用されると3000億円の市場になると期待している。

  • 記事ランキング