PVロボット最前線

ドローンでカラスを撃退! 「嫌がる音」で空中戦

佐賀の太陽光と鳥獣撃退のベンチャー2社が開発

2019/07/17 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 国内のさまざまな施設が、カラスに悩まされている。その対策として、佐賀県にある太陽光発電所で、これまでにない手法が導入されて、成果を上げている。ドローン(無人小型飛行体)と地上に置いた定置型のスピーカーを組み合わせ、地上と上空からカラスが嫌がる音声を拡声するというものだ。

 太陽光発電関連やドローンのスクール運営などを手掛けている日本環境テクノ(佐賀市)が、自社で開発・運営している出力約930kWの太陽光発電所で、効果を確認した。

 スピーカーを備えたドローンが、太陽光発電所の上空を、カラスの悲鳴などの音声を鳴り響かせながら飛び回ると、発電所内や近隣の樹木にとまっているカラスが、慌てて右往左往して飛び去っていく(動画1)。この太陽光発電所の周囲には、数百~1000羽程度のカラスの群れが日常的に飛来していた。

動画1●数百羽のカラスが逃げ出していく様子
(出所:日本環境テクノ)

 この動画は、初めてドローンを飛ばしてカラスが嫌がる音声を拡声した時のもので、カラスの大群が一斉に逃げ出している様子がわかる。ドローンと地上の定置型のスピーカーによる拡声を組み合わせたカラス撃退法の効果は持続性があり、現在では、この太陽光発電所の周辺にカラスが寄り付かなくなったという。

 日本環境テクノでは、この手法の有効性の認知度を高めようと、地元の佐賀に拠点を置く新聞社やテレビ局を招いて、デモンストレーションを披露する機会を設けた。この際、太陽光発電所の周辺には、すでにカラスが寄り付かない状況になっていた。そこで、近隣のカラスが残っている山を探し、そこでデモを実施しなければならなくなっていたほど効果があると強調している。

 新手法でカラスを撃退している太陽光発電所は、唐津市佐志の山間部に立地している(図1)。

図1●山間部に立地している
手前は、はじめて試したときに使った小型のドローン(出所:日本環境テクノ)
クリックすると拡大した画像が開きます

 設置した約3200枚の太陽光パネルのうち、カラスが石などを咥えて飛来し、太陽光パネルの上に落とすことで、これまでに7枚のパネルが割られていた。さらに、フンによる被害やさまざまな悪戯も含めて、カラスによる被害に悩まされてきた。

 太陽光パネルの下に植えている約3000本のシイタケの木に糞尿をかけられたり、カバーガラスが割れていた太陽光パネルの上に、割れた茶碗がのっていたこともある。

 近隣の農家なども、カラスの被害に苦しんできた。イチゴを栽培しているビニールハウスに穴をあけたり、栽培中のタバコの苗を引き抜いたり、豚舎や牛舎では、飼料を食べるだけでなく、エサの中にフンを落としていくため、家畜が病気になる原因にもなっている。

 同社はこれまで、別の太陽光発電所で追尾式の架台システムを採用するなど、小室光春代表取締役のアイデアを積極的に事業化してきた。

 カラス対策でも、これまでさまざまな既存の手法を取り入れ、効果を試してみた。

 例えば、カラスがとまりやすい、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の最上部に釣り糸を張り、足に釣り糸が絡むことを嫌がる効果を狙ったり、カラスが嫌がるタイプのフラッシュ光をLEDで上空に向けて発する機器を設置したりしたほか、爆竹やロケット花火、エアーガン、反射テープなど、さまざまな方法を試した。しかし、どの手法も決め手となるような効果は得られなかった。

 このうち、フラッシュ光を上空に向けて発する機器は、電柱の営巣対策向けに開発・製品化されたもので、電力会社に広く採用されているだけでなく、国内のメガソーラー(大規模太陽光発電所)でも採用が広がっている。

 しかし、この太陽光発電所では、十分な効果を発揮したのは当初だけで、持続的な効果はなかったという。カラスが飛散したのは設置後、約1週間にとどまり、その後は、慣れてしまい再び寄りつくようになり、この機器の上にカラスがとまったり、さらには、LEDの発光部の上にフンを落とし、光が出ない状態になったという。

 こうした状況の中、日本環境テクノの小室代表取締役は、鳥獣害防止システムを開発しているベンチャー企業である、ECO-5(佐賀市)の開発した「音声によるカラス撃退法」を知り、太陽光発電所に導入して効果を確かめることにした。

 ECO-5は、カラスだけでなく、イノシシやシカなど、さまざまな動物による被害への対策に、鳥獣による音声を使った鳥獣害防止システムを開発・販売している。おもにスピーカーを備えた定置型のシステムを使い、天敵の声や、天敵に襲われている時に発する鳴き声などを組み合わせ、さまざまな場所から流す(動画2)。

動画2●カラス撃退向けの音声サンプルの例
(出所:日経BP)

 同社の永野洋一代表取締役によると、そうした音声もただ拡声するだけでは効果が長続きせず、定置システムを置く場所を頻繁に変えたり、流す音声をスピーカーごとに変えたり、音声そのものも時折変えていくといった、鳥獣が慣れない工夫が重要と言う。

 どこから、どのタイミングで、どのような音声が流れてくるのかわからない環境を作ることが、効果を持続させるコツの一つのようである。

 カラス対策では、タカやハヤブサ、ワシなどの天敵の鳴き声のほか、猟銃の音、カラスの怯えた時の鳴き声だけでなく、意外なところでは、ウミガモの声など、幅広い種類の音声を拡声している。カラスは特に頭が良く、効果的な音の種類や出し方がポイントとしている。

 日本環境テクノの太陽光発電所では、地上に10台の撃退用スピーカーを置いている。このうち8台はカラス、残りの2台はイノシシ向けとなっている。近隣の山の斜面をイノシシが頻繁に掘っており、この行動を防ぐ目的で、夜間に犬が吠える声を拡声している。

 この定置型スピーカーを導入したところ、カラスが怯えて逃げ出し、急激に少なくなった。置く場所や拡声する音声を変えていくことで、効果が持続することもわかった。

 こうした経緯から、日本環境テクノでは、自社のもう1つの事業の柱であるドローンを組み合わせれば、より効果的なカラス撃退法を実現できるのではないかと考えた。小室代表取締役によると、定置型とドローンのどちらかに偏った手法では、効果に限界がり、両方を組み合わせることで、初めて持続的な対策を実現できる。

 冒頭の動画は、初めて発電所で試した時の様子で、小型のドローンを使った。音声の効果は確認できたものの、ドローンが小型なために、カラスがアタックすることも観察された。また、小型ドローンが備えているスピーカーの出力が、カラスを怖がらせるレベルに拡声するには不十分なこともわかった。

 そこで、ドローンを、より適切なものに変え、拡声器の出力を上げた。この拡声器を搭載しながら、安定して飛行するためには、より大きなドローンの機体が必要になった。この機体の大型化は、カラスによるアタックを抑制する効果にも繋がった(動画3図2)。

動画3●現在使っているドローン。大きな拡声器を搭載している
(出所:日経BP)
図2●現在は月に2回飛ばしている
(出所:日本環境テクノ)
クリックすると拡大した画像が開きます

 また、反射光を発しやすい部材を機体に後付けするなど、視覚的にもカラスが嫌がる工夫を加えた。

 ドローンの飛ばし方にも、コツがある。高速で飛ばしながら拡声するのではなく、ゆっくり飛ばしたり、ホバリングさせたりすることを組み合わせる方が効果的という。対策の対象がイノシシやシカに変わると、また飛ばし方が変わってくる。

 こうして確立した新たなカラス撃退法によって、日本環境テクノの太陽光発電所では、カラスがほとんど寄り付かなくなり、フンによる被害も目に見えて減った。

 周辺の農家や畜産家は、当初、音声の不気味さと大きさには驚いたものの、カラス対策の恩恵を受けられることから、協力的としている。

 カラスが寄り付かなくなる効果を見て、定置型スピーカーによる拡声のタイミングは1分間隔から5分間隔に広げ、ドローンによる拡声も1カ月に2回に減らした。それでも、同様の効果が持続している。

 日本環境テクノとECO-5では、このカラス撃退法に必要な機材やノウハウを広く拡販していく構想もある。