PVロボット最前線

素早く刈れる「ラジコン草刈機」登場! 除草剤の散布で「1台2役」も

九州のベンチャー2社が協力して開発

2021/08/19 16:45
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 太陽光発電所における草刈りを効率化できる手法の1つが、「ラジコン型草刈機」である。その名の通り、草刈機をラジコン操作で動かし、走った範囲の雑草を刈る。

 操作する作業担当者は、炎天下に繁茂する雑草に分け入って作業する必要はない。雑草から離れて操作できることはもちろん、場合によっては冷房の効いた車中からでも草を刈れる。

 しかし、ラジコン型草刈機には、課題もある。1つは価格が高額になりがちなこと。先行する欧州メーカーの製品は、高級スポーツカー並みの数百万円という設定が多い。もう1つは、作業の速度が遅めなこと。これは安全性の重視による面が大きい。

 比較的安くて、素早く雑草を刈れる「ラジコン型草刈機」はないのだろうか。

 そんな良いとこ取りとも言える機種が、太陽光発電所で使われ始めている(動画)。活用し始めたのは、太陽光発電関連やドローンのスクール運営などを手掛けているベンチャー企業の日本環境テクノ(佐賀市大和町)である。



動画●素早く手軽に雑草を刈れる様子がわかる         

(出所:日本環境テクノ)

 同社は、佐賀県内を中心に30カ所以上の太陽光発電所のO&M(運用・保守)サービスを手掛けている。

 ベンチャー企業でもあり、人手は限られる。できるだけ省人化や効率化を進めたい。この意向はベンチャーほど切実である。そして、創意工夫への発想や構想も浮かびやすく、すぐに実行しやすい。

 同社の小室光春代表取締役は、太陽光発電所において、素早く手軽に雑草を刈れそうなラジコン型草刈機に出会った。

 APEX JAPAN(大分市大在北)が開発した機種だった。

 ただし、農業向けの仕様だったため、そのまま太陽光発電所で使うのは難しいとも感じた。APEX JAPANの溝部弘之代表取締役と話してみると、改良やカスタマイズに対応できるということだった。そこで提携して、太陽光発電所向けの機種を開発した(図1)。

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図1●太陽光発電所向けに車高を低く、蓄電池は大容量のものに
図1●太陽光発電所向けに車高を低く、蓄電池は大容量のものに
(出所:日経BP、下は日本環境テクノ)
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 日本環境テクノによる太陽光発電所の草刈りは、まずできるだけ広い範囲に乗用型草刈機を利用する。アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)間や外周といった、走りやすい場所に乗用型を使う。

 乗用型で対応できない場所の筆頭が、アレイの下だった。架台の構造などから難しかった。ここをラジコン型草刈機で刈れないかと考えた。

 そこで、APEX JAPANに依頼した太陽光発電所向けの機種では、アレイの下を通り抜けられるように、車高は約40cmと低くした(図2)。

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図2●車高は約40cm
図2●車高は約40cm
(出所:日経BP)
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 農業向けの元の機種に比べて、タイヤを小型化して車高を抑えた。

 四輪駆動なので、水で地面がぬかるんでいる場合や、多少の凹凸にも比較的強いという。四輪それぞれがモーターを備え、電動で駆動する。

 この駆動用の蓄電池も、大容量のものに替えてもらったという(図3)。満充電時の連続走行時間は約40分間まで伸びた。予備の蓄電池を持参し、交換することで作業時間をさらに延ばすことができる。

図3●蓄電池は大容量化した
図3●蓄電池は大容量化した
(出所:日経BP)
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 四輪駆動の利点として、傾斜にも強いことがある。

 仕様では20度まで対応となっているが、実際には、もっと急な傾斜地でも十分に走行して除草できているという。日本環境テクノでは、独自に35度の斜面でテストしたところ、走行も除草も問題なかったとしている。

 草刈りは、車体の下に備える回転刃で刈る。この回転刃はエンジンで駆動する。

 走行は蓄電池、回転刃はエンジンと、駆動源を分けているのは、稼働時間を長くするための工夫である。

 例えば、走行の駆動源もエンジンとした場合、搭載できるガソリンタンクの制約から、頻繁にガソリンを補給する必要があり、蓄電池と使い分けた場合に比べて、作業の効率が悪くなってしまう。

 価格は、基本の仕様で約165万円という。

 日本環境テクノでは、このAPEX JAPAN製の太陽光発電所向けの機種を導入する以前にも、別のメーカーによるラジコン型草刈機を購入し、太陽光発電所で使っていた。

 価格はAPEX JAPAN製の約半分だったが、APEX JAPAN製を導入して以降、以前使っていた機種は、まったく使わなくなってしまったという。

 APEX JAPAN製の機種が、それだけ素早く手軽に雑草を刈れるためである。

 以前、使っていた機種は、走行速度が相対的に遅く、安全機能が過敏に働きすぎるために、頻繁に稼働が止まってしまうなど、使い勝手が悪いと感じていた。

 また、以前、使っていた機種は、エンジンのみで走行と草刈りユニットの駆動を賄っていたが、ガソリンタンクの容量が小さいために、頻繁にガソリンを補給しなければならず、これも使い勝手の悪さを感じる要因だった。

 日本環境テクノでは、APEX JAPAN製のラジコン型草刈機に、さらに新たな機能を追加することを構想している。

 それは、粒状の除草剤の散布である。粒状の除草剤用のタンクと散布ユニットを用意し、除草剤の散布に使う時に、APEX JAPAN製のラジコン型草刈機に取りつける。

 除草剤用のタンクには、約1kgの粒状の除草剤を収納できる。このタンクを2つ取り付けるので、一度の補充で2kgの粒状の除草剤を搭載できる。

 こうした「1台で2役」を担えるのも、ラジコン型草刈機の新たな可能性といえる。