PVロボット最前線

「ロボットの自動除草」に最適設計したLIXILのメガソーラー

パワコン周辺のエラー対策に、ワイヤー敷設の工夫と夜間の走行

2020/08/26 15:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 三重県伊賀市の丘陵にある工業用地の一角に、住宅設備や建材の大手であるLIXILの青山サービスパーツセンターがある。この敷地内に、太陽光パネルの出力が約2.448MW、連系出力が1.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある。

 同社は、本業における建物向けの太陽光発電設備の販売に加えて、自社での発電事業にも積極的に取り組んでいる。おもに遊休地を活用し、8カ所・合計出力約31MWの太陽光発電所を開発・運営している。

 2019年11月には、再生可能エネルギー100%で事業運営を賄うことを目指す国際イニシアティブ「RE100」に加盟した。これによって、自社の太陽光発電事業はさらに重みを増している。今後は「再エネ100%」の達成に向けて、自家消費用の太陽光発電所の開発も検討していく。

 開発した太陽光発電所のうち、京都府綾部市の綾部工場跡地のメガソーラーは、東京ガスグループに売却している(売却のニュース2016年5月掲載のメガソーラー探訪)。

 青山サービスパーツセンターの敷地内のメガソーラーは、2019年11月に売電を開始した、比較的新しい発電所である。

 敷地内の遊休地を活用した。太陽光発電所の面積は、約2万7000m2となっている。

 EPC(設計・調達・施工)サービスはきんでん、O&M(運用・保守)はアドラーソーラーワークス(横浜市港北区)が担当している。太陽光パネルは中国の無錫サンテックパワー製、パワーコンディショナー(PCS)はサンケン電気製の小型機を採用した。いわゆる分散型のPCSで構成する発電所となっている。

 固定価格買取制度(FIT)上の売電単価は24円/kWh(税抜き)で、中部電力に売電している。

 このメガソーラーの特徴は、自律的に稼働するロボット型の芝刈機を使うことを前提に設計したことである(図1)。

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図1●LIXILの青山サービスパーツセンターの太陽光発電所
(出所:日経BP)
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 長期にわたる発電事業において、多くの費用や手間を要す雑草対策を考慮して発電所を設計することは、国内のメガソーラーのあるべき方向性ともいえる。初期投資を抑えることを最優先する場合よりも、長期的に投資収益性が高まる可能性もある。

高台上の充電ステーションで浸水を防止

 国内各地の多くの太陽光発電所が雑草に悩まされる中、LIXILの各地の太陽光発電所でもこれまで、「砕石を敷き詰める」「防草シートと地表改質の併用」「スラグを敷き詰める」など、さまざまな手法による対策を試みてきた。それぞれ効果はあったものの、決め手となるような手法はなかった。

 このため、それぞれの発電所の状況に合わせて、「刈払機や乗用型機を使った草刈り」「除草剤」などを併用している。いずれも定期的な作業が必要になり、人手による作業が最小になる手法を模索してきた。その手法になりうると期待して、伊賀市の発電所では、「ロボット芝刈機」を採用した。

 採用したのは、スウェーデンの林業・農業・造園向け機器メーカーであるハスクバーナのロボット型「芝刈機」である。企業の一般的な事業所や住宅の庭などで広く使われている。

 無人で敷地内を自律的に動き回り、草を刈るという仕様で、太陽光発電所の除草対策として、理想的なものだ。

 米iRobotの室内用ロボット掃除機「ルンバ」による室内の清掃のように、自律的に草を刈りながら敷地内を動き回り、充電の残量が少なくなると充電ステーションまで戻る。満充電になると再び走行して草を刈り始める。このような手間いらずの除草を実現する(図2)。

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図2●ロボット芝刈機の概要
ワイヤーで設定した境界内を自律的に走りながら刈る。充電残量が減ると充電ステーションに戻ってくる(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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 伊賀市のメガソーラーは、事業所の敷地内にあり、ほぼ平坦である。現状のロボット除草機にとって、こうした地形は重要となっている。大きな傾斜や凹凸が多い土地への導入には制約がある。

 LIXILがこの機種を知ったのは、太陽光発電関連の展示会だった。日本法人のハスクバーナ・ゼノア(埼玉県川越市)が出展し、ロボット芝刈機を紹介していた。

 付き合いのあった西武造園(東京都豊島区)グループからも、太陽光発電所で安全に活用できそうだとの情報を得て、伊賀市の発電所での採用を想定して、他の工場内の太陽光発電所で試してみた。

 伊賀市の発電所におけるロボット芝刈機の導入も、西武造園グループが担った。子会社の西武緑化管理(埼玉県所沢市)が担当した。

 LIXILが他の太陽光発電所でハスクバーナのロボット芝刈機を試した結果、草刈りの効果、安全な運用とも、十分な水準であると確認でき、伊賀市の発電所での採用を決めた。また、広い芝のある他の工場にも、芝の管理用に導入した。今後、他の工場や太陽光発電所でも導入していく可能性があるという。

 こうして伊賀市のメガソーラーは、ハスクバーナのロボット芝刈機を導入する前提で設計した。

 この発電所では、アレイ(太陽光パネルの設置単位)を地上に固定する基礎には杭基礎、架台はLIXILのアルミニウム材による製品を採用している(図3)。

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図3●杭基礎の円盤はロボット芝刈機を挟まない高さに
(出所:日経BP)
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 杭基礎は、ロボット芝刈機の走行を妨げないように、円盤の部分を地上約40cmに上げて敷設した。ロボット芝刈機が地面と円盤の間に挟まってしまい、抜け出せなくなくことを防ぐためである。

 分散型PCSから集電箱、昇圧変圧器への電線は、地中に埋設した。これも地表の障害物が少なくなり、ロボット芝刈機の効果を高める狙いからだ。LIXILの太陽光発電所では元々、人手による除草作業時の安全性などを考慮して地中埋設を採用してきたが、ロボット芝刈機の活用でも利点となる。

 ロボット芝刈機の充電ステーションを置く場所には、土を盛りあげて高台のステージ状にし、そこに人工芝を敷いた(図4)。この工夫は、ロボット芝刈機を採用した他の発電所と比べても珍しい。

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図4●ステージ状の高台に充電ステーションを配置
悪天時にはここで待機する(出所:日経BP)
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 ステージのような高台を築いて、その上に充電ステーションを配置した理由は、雨水を避けるためである。地面に雨水がたまってぬかるんだときでも、ロボット芝刈機が待機する高台の充電ステーションは水に浸からない。

 万が一、この高さまで水が浸るようなことがあったとしても、人工芝を敷いているので、水はけは良い。設置したのは太陽光パネルの下なので、パネルが屋根代わりになって機体が濡れることも少ない。導入を前提に設計したメガソーラーならではの特徴といえる。

充電ステーションを近接、メンテナンス性を重視

 ロボット芝刈機を敷地内でどのように走行させるか。ここでは、西武緑化管理のノウハウが生きているという。

 ハスクバーナ・ゼノアによると、国内の販売代理店の中で、最もロボット芝刈機の販売実績が多いのが西武緑化管理で、伊賀市の発電所では、この機種の特性を理解し、うまく生かしている点が多いという。

 面積が約2万7000m2ある敷地に、5台のロボット芝刈機を導入した。1台当たりの作業範囲の目安が約5000m2という仕様の機種に対して、このサイトでは、1台当たりが受け持つ区画がそれぞれ4000m2以上という、仕様に対して余力が比較的少ない使い方をしている。

 太陽光発電所の場合、公園や緑地の芝のような、均一な高さできれいに刈り揃えた状態を維持する見栄えは求められない。どの場所もある程度の頻度で刈られていれば問題ない。雑草の高さに関しては、それほど厳密さが求められない用途ならではの使い方といえる。

 それぞれの機体がGPS(全地球測位システム)を備えており、その日に走行して刈った場所を記録している。その日に走行せずに刈り残した場所は、その翌日、優先的に走行するように設定している。

 これによって、どの場所も最長でも2日に一度程度の頻度で刈られる。これ以上、刈る頻度が開いてしまうと、雑草を刈りにくくなる恐れが出てくるという。

 それぞれの区画にある充電ステーションは、敷地の中央を通る通路に近い位置で、それも隣接する区画の充電ステーションに近い位置に設置されている(図5)。

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図5●2カ所、3カ所の充電ステーションを近接
(出所:上はLIXIL、そのほかは日経BP)
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 5つの区画のうち、南の2つの区画の充電ステーションは、通路を挟んでほぼ隣り合う位置に、残りの3つの区画の充電ステーションも、同じように通路を挟んでほぼ隣り合う位置に設置されている。

 これは、ロボット芝刈機のメンテナンスの効率を考慮した配置としている。清掃や刃の交換などは、同じようなタイミングで実施することが多い。その時に、ほぼ2カ所の移動だけで、5台を保守・点検できる。充電ステーションの位置が広く分散していると、それだけ歩き回る負担が増える。

パワコンや電線付近の受信エラーを防ぐ

 ロボット除草機を太陽光発電所で使う場合、問題となるのが、PCSの周辺やPCSからの電線の周辺で、ロボットの走行に必要な信号を適切に受信できず、走行停止となる場合があることである。発電量が多い時などに、走行用の信号の送受信を妨げる何らかの現象が起きるようだ。こうした現象は、太陽光発電所に特有の事情といえる。

 これは、ロボット芝刈機を活用している多くの太陽光発電所で生じている。逆に言えば、太陽光発電所における活用で工夫のしどころとなっている。

 LIXILでも、他の太陽光発電所でテストした時から起きていた。やはり発電量が多い日時ほど、この現象が生じやすい傾向にある。

 ハスクバーナのロボット芝刈機は、充電ステーションを発着点として、設定した範囲の中をランダムに走って草や芝を刈っていく。この走行範囲は、ワイヤーを地面に張って囲んで設定する。このワイヤーが境界となる(図6)。

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図6●雑草の状況の違いで境界がひと目でわかる
フェンス際などには近づけず、人手で刈る(出所:日経BP)
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 ロボット芝刈機は、走行中にこのワイヤーから信号を受信して、走行区域の境界を把握している。信号は充電ステーションから発し、ワイヤーを通じてロボット芝刈機に届けている。

 発電量が多くなってくると、PCSや電線の近くでは、この信号を機体が適切に受信できなくなり、走行を停止してしまうようだ。

 伊賀市の発電所では、この対策としてまず、走行範囲の外周に位置するワイヤーを、通路の上に配置した。通路には、PCSや電線はない。

 このメガソーラーでは、小型のPCSを多数、設置している。アレイごとに架台に固定されている。南北方向にまっすぐ並ぶような配置となっている。これによって、その下の地中埋設の経路が2本と少なくでき、施工コストの削減につながっている。

 この小型PCSと地中埋設の電線は、ロボット芝刈機が走行する5つの区画のそれぞれにおいて、中央付近を南北方向に直線を描くように配置されている。

 ここでロボット芝刈機の信号の受信エラーが生じることを避けたい。そのためにワイヤーの敷設と機体の設定を工夫した(図7)。

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図7●PCSの周囲と地中埋設の場所もワイヤーで囲って受信の感度を上げる
(出所:上はLIXIL、そのほかは日経BP)
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 ワイヤーは、走行範囲の外周を囲うだけでなく、PCSと地中埋設の電線も、真ん中の1カ所を除いて囲うように敷設した。走行範囲の外周を囲いつつ、途中でPCSと地中埋設の電線のある場所を囲って、また外周に戻るように一筆書きで敷いた。

 地中埋設の経路のうち、真ん中だけは囲わずに開けてある。これによって、どの区画も、左右の2つの島があり、2つの島は真ん中だけつながって通れるような形状となっている。

 ロボット芝刈機は、ワイヤーに近づくほど信号の受信感度が高くなる。この仕様を生かして、PCSと電線の近くにワイヤーを敷設することで、この付近での受信エラーを減らすことを狙った。

 地中埋設した場所の上に走行範囲の境界を設定すると、ロボット芝刈機が走らなくなり、雑草を刈り残してしまう場所が生じかねない。

 それを防ぐために、地中埋設した場所の上では、ワイヤーを15cm開けて敷設した(図7の下)。ロボット芝刈機は、ワイヤーに対して10cm外まではみ出して走行する設定となっているため、それぞれ10cmはみ出して走って刈ることで、2本のワイヤー間の15cmの隙間も問題なく刈ることができる。

 1台当たりの走行範囲が広いため、充電ステーションに戻るときには、できるだけ最短距離で戻したい。このために、補助線となるガイド役のワイヤーも敷設した。

 充電残量が少なくなって充電ステーションに戻るときに、このガイド役のワイヤー付近を通ると、ランダムに走行することを止めて、幅1mの範囲でガイド役のワイヤーに沿うようにまっすぐに充電ステーションに戻るように設定している(図8)。

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図8●ガイド役のワイヤー(上の点線)
(出所:上はLIXIL、下は日経BP)
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動画●充電ステーションにまっすぐ戻るロボット芝刈機

(出所:日経BP)

 このガイド役のワイヤーは、アレイ間に敷設しているので、ロボット芝刈機は、杭基礎にぶつかって不要な方向転換などをすることがなく充電ステーションに戻る。

 充電ステーションは、高台のステージ状の場所の上にある。ガイド役のワイヤーに沿えば、まっすぐに充電ステーションに戻れるが、充電ステーションの後ろ方向を走っている時に戻り始めてしまうと、後ろから高台を登って向こう側に下り、また戻ってくるといったロスの多い走行で、その間に充電量が尽きて止まってしまう恐れがある。

 こうした後ろ側からの無駄な走行をなくすために、PCSと地中埋設の場所と同じように走行範囲の境界となるワイヤーの敷設を工夫した。高台のステージのうち、充電ステーションの後ろ側の場所をすべてワイヤーで囲んで、走行しない場所にした。

 しかし、これだけで後ろ側から充電ステーションに戻ろうとする動きは防げない。充電ステーションからはパルス信号も発しているためである。

 充電ステーションの後ろ側でこのパルス信号を受信して戻る走行を開始すると、ロボット芝刈機は後ろ側から戻ろうと走行しつつも、ステージの後ろ側にある走行範囲の境界のワイヤーでそこが走行範囲でないことを検知し、向かっては戻ることを繰り返して右往左往することになる。

 そこで、充電ステーションが発するパルス信号の範囲を、最短の1mに狭めるように設定した。これによって、後ろから充電ステーションに戻る動きをなくした。

 走行範囲の外周、PCSと地中埋設の場所、ステージの後部は、すべて1本のワイヤーを一筆書きで敷設した。しかし、外周からPCSと地中埋設、ステージの後部にそれぞれ入り込みはじめる場所に走ってきたロボット芝刈機は、必ずそのままワイヤーに沿ってPCSと地中埋設などに向かって走るのかというと、そのようにはならない。ここにも工夫がある。

 この「外周から入り込み始める場所」では、ワイヤー2本を、間隔を開けずに地面に敷設している(図9)。PCSに近づいた場所ではじめて2本が分かれるように広がる。ワイヤーは、1本だけ単独で敷設されている時には走行範囲の境界として機能するが、2本を間隔を開けずに敷設した時には、ロボット芝刈機が信号を相殺して境界と認識せず、そのまま上を走り抜ける。この機能を活用して、PCSや地中埋設、ステージ付近ばかりを集中して走ることを防いでいる。

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図9●間隔を開けずに2本敷設した場所は、そのまま走り抜ける
(出所:上はハスクバーナ・ゼノア、下は日経BP)
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夜間のみ走行、受信エラー防止とシカの抑制効果にも期待

 LIXIL側の運用面でも、PCSや地中埋設した電線に関連した走行停止を防ぐ工夫を施している。日中はロボット芝刈機を走行させず、夕方18時30分~翌朝6時といった時間帯に限り夜間のみ走行している。太陽光発電設備が発電しない時間帯のため、この問題を根本的に防げる。

 こうしたワイヤーの敷設の工夫と運用時間の工夫が奏功して、いまのところ受信エラーによる走行停止は起きていない。これによって、予期せぬ走行停止時に、復旧のために敷地内に出向いて作業する回数を最小化できている。

 夜間のロボット芝刈機の走行によって、もう1つの効果に期待している。シカなどの動物の侵入を防ぐ効果である。

 伊賀市のサイトは、森に近い立地から、太陽光発電所の設置前には、敷地内にシカが侵入してくることがあった。導入したロボット芝刈機は、夜間に走るときには、LED照明を光らせて走行する。この光をシカが嫌がり、侵入を防止する効果にもつながればと期待している。

 現在のところ、シカは侵入しなくなっている。ただし、その理由がロボット芝刈機の走行時のLED照明によるものか、雑草が短くなっていることによってシカのエサとなる食べ物が減った効果によるものかはわからないとしている。

 以前は、モグラの生息も見られたが、ほぼいなくなった。これは、ロボット芝刈機の走行範囲を設定するために地表に張ったワイヤーによる効果とみられる。


【ロボット除草機を活用している他の太陽光発電所の例】