PVロボット最前線

除草剤の散布で新手法が続々、ドローンや草刈機を活用

30kgを背負う重労働から解放

2021/09/08 14:30
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 太陽光発電所における除草剤の散布を、ロボットを使って効率化する動きが出てきた。化学薬剤を散布する作業では、効率化の大きな余地が残っている。

 今回は、ドローン(無人小型飛行体)やラジコン式草刈機を使った手法を紹介する(図1)。

図1●ドローンで除草剤を散布している様子
図1●ドローンで除草剤を散布している様子
(出所:日本環境テクノ)
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 農業などでは、無人航空機や無人ヘリコプターなどを使って、除草剤の散布作業を効率化している場合がある。空中から化学薬剤を散布する。

 しかし、この手法を太陽光発電所で採用するのは難しい。空中から散布した除草剤の多くは、太陽光パネルにかかってしまうからだ。

 地面に散布される割合が減る上、パネル表面の汚れにもつながりかねない。太陽光パネルメーカーは、化学薬剤のかかったパネルに何らかの異変が生じたとしても、保証の対象外とすることがほとんどである。

 地上を走りながら除草剤を散布する農業向けのロボットもあるが、構造物のない広い農地を想定しているために、車体が大きい。現状では、太陽光発電所で使うのは難しい。

 ロボットを使った除草剤の散布の利点は、大きく2つある。1つは、散布の作業における身体的な負担が大きく軽減されることにある。

 従来のような、すべて人手による散布作業は、化学薬剤が入ったタンクを背負い、このタンクの下に接続されたブロワーのような機器を使って、地面に除草剤を散布するという手法である。

 この「背負い式」は、背負う機器の重さだけで10kgある。除草剤をタンクに入れるので、さらに重量が増す。例えば、合計30kgを背負って、メガソーラーの広い敷地を歩き回るのは、かなり重労働である。

 ロボットを使えば、この背負う負担がなくなる。さらに、散布する速度も速くできる。

 もう1つの利点は、散布を自動化することで、作業者に求められていた経験や感覚に依存する度合いが減ることである。誰でもできる状況に近づく。

 従来の「背負い式」による粒状の除草剤の散布では、面積当たりの適量を散布し続けることが難しく、濃淡が生じる場合があった。

 例えば、散布を始めて間もない時間には、心理的に、適量よりも少なく散布する傾向がある。こうした散布エリアでは、粒状の化学薬剤が適量より少ないため、除草効果が十分に発揮されないこともある。

 ロボットであれば、ずっと同じペースで除草剤を散布でき、人手によるばらつきを解消しやすくなる。

汎用の機種で散布、太陽光ならではの注意点も

 ドローンでは、汎用の機体を使うことができる。ドローンの世界最大手である中国の大疆創新科技(Da-Jiang Innovations Science and Technology:DJI)製の農薬散布向けの機体を利用できる。

 太陽光発電所では、粒状の除草剤が多く使われている。粒状の化学薬剤を散布する場合、この農薬散布向けの機体と、粒状の除草剤を散布するためのユニットを組み合わせる(図2)。

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図2●太陽光パネルに除草剤がかからないように低く飛ぶ
図2●太陽光パネルに除草剤がかからないように低く飛ぶ
(出所:日本環境テクノ)
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 ドローンの飛行と同じコントローラで操作できる利点もある。

 また、粒状の除草剤向け散布ユニットは、最大で10kgの化学薬剤を搭載できる。

 この機種を、太陽光発電関連やドローンのスクール運営などを手掛けているベンチャー企業の日本環境テクノ(佐賀市大和町)が活用し始めた。

 日本環境テクノの小室光春代表取締役によると、太陽光発電所における粒状除草剤の散布に、このドローンを使いこなすコツは2つある。いずれも、太陽光パネルに化学薬剤がかからないようにするための工夫である(動画1)。



動画●ドローンで除草剤を散布している様子            (出所:日本環境テクノ)

 1つは、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の間を低く飛び、太陽光パネルからの距離も約50cmという近さで飛ばすことである。パネルに除草剤をかけない距離で、かつ、パネルにぶつからないように飛行する。

 もう1つは、除草剤の散布ユニットの向きなどである。タンクに搭載した粒状の除草剤は、設定した速度と量で散布される。化学薬剤を放出する吐出口に粒状の除草剤を送り込む部材の回転数、吐出口付近にあるシャッターの開放時間の設定で、散布する速度と量が決まる。

 太陽光パネルに薬剤がかからないようにするためには、吐出口が特定の方向を向くように飛行する必要がある。また、吐出速度の設定を誤ると、一定範囲への散布量が過剰に多くなったり、少なくなったりしてしまう。

 日本環境テクノでは、粒状の除草剤をドローンで散布する作業は受託しない方針という。ただし、同社のドローンスクールの卒業生が、卒業後に同社からこの機体を購入する例が多いといい、需要が多そうだとしている。

ラジコン型草刈機が「1台で2役」、除草剤も散布

 ドローンを使う方法は、この機種を保有するか、保有者に委託しないと実現できない。汎用機とはいえ、農薬散布を目的とする機種のため、保有している太陽光発電事業者やO&M(運用・保守)サービス事業者は限られる。

 日本環境テクノでは、より一般的に太陽光発電事業者が保有している機器を使って、効率的に粒状の除草剤を散布できないか、模索してきた。思いついたのは、ラジコン型草刈機を使う方法だった。

 同社では、太陽光発電所において、素早く手軽に雑草を刈れるラジコン型草刈機を採用している。

 APEX JAPAN(大分市大在北)が開発した機種で、日本環境テクノのアイデアで、太陽光発電所向けに改良した機種である(関連コラム)。APEX JAPANは、このように用途に応じた改良やカスタマイズに強みがあるという。

 日本環境テクノでは、カスタマイズできる強みを生かして、APEX JAPAN製のラジコン型草刈機に、粒状の除草剤を散布できる機能を追加できないか、検討してきた。

 粒状の除草剤向けタンクと散布ユニットを用意し、除草剤の散布に使う時に、ラジコン型草刈機に取りつける(動画2)。草刈りの際には、取り付けない。



動画●草刈機で粒状の除草剤を試験的に散布している様子         (出所:日本環境テクノ)

 粒状の化学薬剤は、草刈りの後に散布するのが最も効果が高くなると言われる。刈った状態の茎から、除草剤の成分が吸収されやすいからである。

 草刈りの翌日、粒状の除草剤を散布するといった使い方ができる。こうした「1台で2役」を担えるのも、ラジコン型草刈機の新たな可能性といえる。

 除草剤用のタンクには、約1kgの粒状の除草剤を収納できる。このタンクを2つ取り付けるので、一度の補充で2kgの粒状除草剤を搭載できる。

 試作機が完成し、テストをはじめている。