PVロボット最前線

基礎やフェンスの際、雑木や竹まで刈れる、電動ならではの多機能草刈機

アタッチメントを換えるだけで機能が変わる

2019/10/30 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 太陽光発電所において、究極的な草刈りは、人は何もせず、全自動の草刈機が敷地の中を走り回り、隅々まで雑草を刈るというものである。しかし、現状では、このような理想からは遠い。

 現状で最も作業効率に優れる乗用型草刈機は、面積当たりの処理効率が高い一方、基礎やフェンスの間際に生えた雑草を刈りにくい。

 運転席の下に回転刃があるため、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)に近づいて雑草を刈ろうとすると、車体がぶつかってパネルを損傷させたり、逆に運転者が負傷したりする事故につながる。

 そこで、現在は、アレイ間などの広い場所で乗用型草刈機を使い、基礎やフェンスなどの直近は、後から刈払機や鎌で手刈りするという手法が一般的となっている。

 作業者が遠隔操作するリモコン型でも、やはり車体下に回転刃があり、刃を基礎やフェンスに当てて、間際まできれいに刈るのは難しい。

 こうしたなか、リモコン型でも、「基礎やフェンスの際まで、雑草を刈りつくす」ことができる機種が登場した(動画1)。

動画1●基礎やフェンスの脇まで刈れる
(出所:ササキコーポレーション)

 農業機械や除雪機メーカーのササキコーポレーション(青森県十和田市)が製品化した電動式リモコン型草刈機「smamo(スマモ)」である。アタッチメントと呼ぶ回転刃のユニットを付け替えることで、「広い場所」と「基礎やフェンスの際」の両方に対応できる。

 元々、全長約1mの走行ユニットの前方に、草刈り用のアタッチメントを装着する仕様で、設備の際まで刈るときには、専用のアタッチメントに換える(図1)。

図1●際刈りアタッチの概要
(出所:ササキコーポレーション)
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 「基礎やフェンスの際」用のアタッチメントは、この秋に製品化した。同社では、際刈りアタッチと呼んでいる。

 同社によると、アタッチメントの着脱によって、異なる条件の草刈りに対応できることは、電動の草刈機ならではの利点で、開発当初から、この特徴を生かすことを狙っていた(関連コラム)。

 同社によると、電動の利点は、いくつかある。まず、誰でも扱いやすい。エンジンを搭載した場合、その運用には、一定の知見が必要になる。

 また、機械の高さを低くできるため、草刈機の場合、太陽光パネル低部の下を走行できる機種を設計しやすくなる。運用面では、相対的に傾斜に強くなる。エンジンに比べ、ガソリンを送り込む機構などの制約が少ないからである。

 アタッチメント方式も、電動の良さを生かしたものである。エンジンの場合、用途が変われば、ギアの組み替えなど、複数の変更や調整が必要になる。電動なら、モーターの仕様さえ合えば、何も変更せずに転用できる。

 こうしたアタッチメントを付け替えて多機能化した最初の例が、基礎やフェンスの「際刈り」となった。

 このほか、太陽光パネルの下から伸びてきた雑木や竹を刈れる「竹刈りアタッチ」も試作済みである。今後、太陽光発電所などでテストを重ね、実用化したいとしている。

 製品化した「際刈りアタッチ」は、太陽光発電所だけでなく、果樹園などの課題も解決できる。果樹園では、樹木の病気を防ぐため、幹の際まで雑草を刈ることが重要という。しかし、乗用型では、際まで刈れないので、後から手刈りしている。

 果樹の脇を、草刈機で刈る場合、果樹を痛めるリスクがある。機械や刃との接触が、どの程度まで寛容されるのかは、木によって異なる。例えば、リンゴやブドウ、他の品種でも、幼木の段階では、最もダメージが大きいという。

 「際刈りアタッチ」の回転刃には、ナイロン刃を使い、カバーに収まるように設計されている(図2)。このため、通常は刃が樹木に当たることはない。カバーが樹木に触れると、回転刃ユニットの根元についているバネが機能し、樹木に反発するように回避する仕組みとなっている。

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図2●刈払機で一般的なナイロン回転刃を取り付けて使う
(出所:日経BP)
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 回転刃は、刈払機でも使われている一般的なものを使う。手動切り出し方式と呼ばれるナイロン刃である。ホームセンターなどでも販売されているが、信頼性や安全性を維持するために、同社が推奨している製品を使って欲しいという。

 推奨している回転刃の製品とは、例えば、ナイロン刃をまとめ、かつ、回転に追随させる役割を担う中央部の留め具は、金属でできている。

 一般的に販売されているナイロン刃の場合、この留め具もナイロン製が多い。ナイロンの留め具の場合、際刈りアタッチで使うと、地面や構造物に通常よりも接近して回転し続けるために、熱で損傷する恐れがあり、金属の留め具を推奨しているという。

 ナイロン刃が接触しても問題ない用途の場合、刃を引き出す長さを調整して、カバーの横からはみ出すように伸ばして使うことで、より効率的に草を刈れる(図3)。

図3●ナイロン刃をカバーの外まで伸ばすように調整
(出所:日経BP)
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 太陽光発電所における基礎やフェンスは、まさにこうした構造物である。ナイロン刃が接触しても損傷することがなく、刃を直接当てて雑草を刈る利点が大きい。

 この「際刈りアタッチ」の刈幅は340mmで、走行部から最大で横に210mmオフセットさせることができる。

 また、回転刃は地面の凹凸に追従するように動く。移動時などには、走行ユニットの上に折りたためる。折りたたみの支点部には、安全スイッチを備え、折りたたんでいる時には刃を回転させない。

 「際刈りアタッチ」の希望小売価格は26万5000円(税抜き)で、同社が供給するナイロン回転刃は同3000円(同)となっている。

 「際刈りアタッチ」で作業した場合の稼働時間は、「広い場所」向けアタッチメントを取り付けている時より2倍以上も長い。これは、草刈り時の刃への抵抗の違いによる。通常の草刈時は刈った草を粉砕するが、際刈り時は粉砕しないなどの違いによる。「際刈りアタッチ」での稼働時間は、蓄電池・1個時で約150分、2個時で約300分となっている。

ノコギリ刃を回して竹を刈る

 竹を刈るアタッチメントは、太陽光パネルの下から、パネルを突き破るような勢いで竹が伸び、困っている発電所を知って着想した(関連コラム:竹が伸び、太陽光パネルを下から突き破る!?)。

 既存の草刈アタッチメントは、親指ほどまでの太さであれば、雑木や竹を刈ることもできる。ただし、カバーの中で刃が回っているので、木を巻き込んで刈る点では限界がある。

 竹だけでなく、比較的、太くなる前の雑木も刈れるアタッチメントを製品化できれば、全体を効率的に刈りつつ、竹や雑木のように、本数は少ないものの、強く太い植物も、同じ1台の草刈機で刈れる。O&M(運用・保守)サービス事業者など、除草を担う企業に需要があるのではないかと考えている。

 試作した竹刈り用のアタッチメントは、「際刈り用」と同じような折り畳みの構造だが、カバーが半分、空いていて、回転するノコギリ刃を竹や雑木に直接、当てられる(図4)。これによって、素早くスパッと切り倒せるという。

図4●竹刈り用にはノコギリ状の回転刃
(出所:日経BP)
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 試作した竹刈り用のアタッチメントは、竹林だけでなく、すでに太陽光発電所でも使い、効果を確かめている。

 同社の近隣に、太陽光パネルの裏側に、竹が伸びてパネルに触れている状態の発電所があることを知り、協力を得て試験的に刈った(動画2)。竹の太さは約20mmだった。

動画2●試作した竹刈り用のテストの様子
(出所:ササキコーポレーション)

 この太陽光発電所は、元々、敷地内に竹は伸びていなかった。稼働後に、近くの竹林から、侵食してくるように広がり、気づいた時にはこの太陽光発電所にも竹が生えて伸び、パネルの裏に届くようになってしまった。

 こうした推移や現在の様子を見る限り、今後、敷地内にはより多くの竹が伸びるようになり、パネルの裏側まで伸びてくる本数も増えると予想される。

 単管による架台の支柱は、約1mおきに配置されている。この間を十分、走行でき、パネル裏に伸びている竹は、すべて安全、かつ正確に刈れたとしている。