PVロボット最前線

「安全確保」が主な狙い、傾斜地のメガソーラーでドローン点検

採用の決め手は、バイパスダイオード故障の発見

2020/12/09 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 関西の山あいに立地する太陽光パネルの出力で約5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)において、9月末にドローン(無人小型飛行体)を使ったパネルの点検が実施された(図1)。

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図1●ドローンによる空撮の様子
(出所:日経BP)
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 このメガソーラーは、大規模に造成せず、元々の斜面を残して開発された。1万7000枚以上の太陽光パネルが、傾斜はそのままで、杭基礎と架台の調整によって土地なりに設置されている。

 大きく3つの区画にわかれ、敷地面積は合計で約10万m2と広い。

 こうした傾斜を残す地形で、かつ広い太陽光発電所では、平坦でかつコンパクトな発電所に比べて、点検にドローンを使う利点が大きい。

 点検作業者にとって、傾斜が大きいほど敷地内を歩いて巡回したり、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の下に潜りこむ際にも身体的な負担が大きい(図2)。広い点も同様に負担が増す要因となる。

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図2●傾斜面が多く、敷地面積は広い
(出所:日経BP)
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 ドローンによる点検では、赤外線カメラで熱分布の画像を空中から撮影する。これによって得た太陽光パネルの熱分布の画像から、過剰に発熱しているなどの異常を示す場所を見つけ出す。

 ドローンを使わずに、赤外線カメラを持って撮影しながら歩き回る手法もあるが、今回のような斜面では、安全管理、コストの両面から現実的ではない。

 そこで、このメガソーラーでは、昨年からドローンによる点検を採用した。1回目は2019年10月、約1年後の2020年9月末に、今回の2回目を実施した。

 このように、定期的にドローンで空撮し、太陽光パネルの状態を確認して経時変化を把握する発電事業者が増えている。人間の定期健診のような位置づけになる。

一次情報としての「熱」の有用性

 太陽光パネルの不具合は、発電ロスだけでなく、火災などにつながる恐れもある。いち早く発見し、適切に対処することが、事業性と安全性の両面を高めることになる。

 今回の斜面にあるメガソーラーは、特別高圧送電線に連系しており、第二種の電気主任技術者の有資格者が電気保安管理業務を専任で担当している。

 この電気主任技術者は、売電ロスの最小化といった事業性以上に、安全性の担保の面でドローンを使った点検が有効と考え、点検の実施に大きくかかわった。

 火力発電など既存の電源でも、異常の可能性を発見するために、「熱」に関する状態を一次情報として利用する手法が一般的に採用されている。同じように、太陽光発電でも「熱」の状態を積極的に利用することは理にかなっているという。

 太陽光パネルについては、できれば1枚ずつ点検・管理したい。管理システム上で、発電所内の配置を地図状にイラスト化し、パネルごとに「地番」をつけてマッピングしておき、発電状況を色分けして表示したり、蓄積した過去のデータを参照したりして監視や管理できることが望ましいと考えている。

 ドローンで空撮した熱分布の画像と、異常が見つかった場合の状態や推測される原因、その状態の深刻度といった情報も、こうした太陽光パネルの配置図上で容易に確認できるのが理想である。

 こうした発電設備の詳細まで把握する運営は、火力発電などの既存の電源や、大規模なプラントや工場などでは、比較的高い水準で実現されていると思われる一方、歴史の浅い太陽光発電では、知見やインフラが限られているため、現時点でこうした運営を実現できている発電所は少ない。

 一部、ベンチャー企業や同族経営の中小企業などで、企業トップがこのような発想を強く持ち、トップダウンでこうした運営を志している例があるものの、現時点では少数派といえる。

 このような中、今回のメガソーラーでは、初めて実施した2019年秋のドローン点検の結果、想像していた以上の有効性を実感したという。

 電気主任技術者によると、バイパスダイオードの故障を的確に発見できたことが、とくに決め手となった(図3)。

図3●バイパスダイオードの故障を発見
赤枠内がその場所(出所:エナジー・ソリューションズ)
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 ドローン点検の作業は、エナジー・ソリューションズ(東京都千代田区)が担当した。

 同社は2010年に設立されたベンチャー企業で、IT関連のシステム開発やサービスを得意とする。ドローンによるパネル点検サービスは、123カ所・合計出力1.5GWに対して実施済みで、複数回受託している発電所もあることから、回数としては165回の実績という。

 異常個所の特定だけでなく、状況や原因分析、その異常の深刻度合い、対応に向けた助言まで迅速に提供する点に特徴がある。この分析や助言ではとくに、太陽光パネルメーカー経験者の知見が強みとなっている。

 ドローン点検で発見されたのは、バイパスダイオードが故障したことによって、その太陽光パネルの上側の3分の1が、過剰に発熱していた状態だった。これが熱分布の画像によってひと目でわかった。

 この状態は、遠隔監視システムによる管理では、気づかなかったという。このメガソーラーでは、ストリング(太陽光パネルを接続する単位)ごとに電圧と電流の数値を遠隔で監視しているが、それでも見つけることは難しかった。

 太陽光発電は気象や雲の影などさまざまな環境要因によって出力の状態が刻々と変わるため、このメガソーラーに限らず、一般的にストリング監視でこうした太陽光パネル内の部分的な故障を発見しようとしても限界がある。

 ドローン点検によって、このバイパスダイオードの故障を発見し、該当する太陽光パネルを現地で点検したところ、バイパスダイオードを収めているジャンクションボックスは変形し、焦げていた。ジャンクションボックス周辺のバックシートにも焦げが見られた(図4)。

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図4●ジャンクションボックスが溶けて焦げていた
右のパネル。左のパネルはカバーガラスが割れていたもの(出所:日経BP)
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 バイパスダイオードの故障が、ジャンクションボックス全体の過熱に発展し、樹脂でできたボックスが熱で溶けて変形したり焦げたりする状態にまで至っていた。

 このメガソーラーの電気主任技術者によると、太陽光パネルの弱点の1つがジャンクションボックスにあるとみている。

 しかし、これを特高クラスのメガソーラーの遠隔監視や定期的な目視点検の中で、的確に発見することは現実的に難しい。ドローン点検によりそれが簡単に発見できた。安全面を特に重視するという方針の中、極めて有用であると評価している。

 発電所全体で見れば、発電ロスは、ほとんど感じない程度ではあった。それでも、安全面から放置できないと判断し、すぐに交換した。

誘導雷による過電圧も発見

 落雷によるものとみられる不良、ガラスの割れも発見できた(図5)。

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図5●誘導雷による異常(上)、ガラスの割れ(下)
赤枠内がその場所(出所:エナジー・ソリューションズ)
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 落雷による不良は、発電設備に直接、落雷する「直撃雷」ではなく、設備の近くに雷が落ちた際の電磁界によって発生する「誘導雷」によるものと推測された。

 「誘導雷」は、落雷による電気エネルギーが空間を伝搬し、送電ケーブルや通信線などに雷サージ(雷の影響により、瞬間的に発生する過電圧や過電流)が侵入し、電気機器に定格を大きく超える電圧がかかり、損傷することを指す。

 太陽光パネル全面に、過熱を示す熱分布がまだら模様のように広がり、それがパネル1枚だけでなく、ストリング全体に分布していた。

 このメガソーラーは、いわゆる分散型とよばれる小容量のパワーコンディショナー(PCS)を採用している。この機種が備えている雷対策を大きく超える電圧が侵入し、太陽光パネルまで高電圧がかかったために、セルが過熱していると推測された。

 他の一般的な工業製品と同じように、太陽光発電設備も、安全性で完璧な製品はないと考えて管理すべきだという。

 その中で、ドローンをはじめとする、人間では難しい作業を得意とするロボットやシステムを活用しつつ、できるだけ安全性の高い運営を模索べきと強調している。