PVロボット最前線

「ルンバ」のような自律走行型ロボットが草刈り、姫路の低圧太陽光

無人の敷地内を毎日こまめに走行して自分で充電

2019/12/25 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 兵庫県加西市のスポーツ用グラウンドの跡地に、太陽光パネルの出力約126.3kW、連系出力49.9kWの太陽光発電所がある。低圧配電線に接続し、関西電力に売電している。固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価は、21円/kWh(税抜き)となっている。

 この低圧太陽光発電所には、他にはあまり見ない、いくつかの特徴がある。その1つが、「理想的な除草の実現」で先行していることである(図1)。

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図1●毎日刈っているので、芝生のようにきれいに
(出所:日経BP)
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 米iRobot社の室内用ロボット掃除機「ルンバ」による室内の清掃のように、自律走行型の「ロボット除草機」が草を刈りながら敷地内を動き回り、充電量が減れば充電器まで自分で戻り、充電した後に、再び刈り途中の持ち場に戻って草を刈りはじめる――こんな手間いらずの除草が実現している。

 草を刈るために走行する時間帯はあらかじめ設定し、無人でも、その時間帯は敷地内を自律的に走り回り、草を刈るという仕様は、太陽光発電所の除草対策として、理想的なものといえる。

 グラウンドの跡地という、傾斜がなく平らな土地に立地していることで、実現した面が大きい。傾斜や凹凸の大きな場所では、なかなか難しいだろう。

 採用したのは、企業の一般的な事業所や住宅の庭などで使われているロボット型「芝刈機」である。スウェーデンの林業・農業・造園向け機器メーカーであるハスクバーナが製品化した(関連コラム)。

 発電事業者の姫路インザイ(兵庫県姫路市)が、先進的な発電設備やO&M(運用・保守)に取り組むなかで、このロボット除草機もいち早く採用した。

 同社は、地元で8カ所の太陽光発電所を開発・運営している。いずれも低圧の発電所で、1カ所ずつ、さまざまな工夫を試しながら、開発・運営している。

 自律走行型のロボット除草機による草刈りを採用したのは、7カ所目となる野立て型の低圧太陽光発電所だった。

 それまでのほとんどの発電所では、防草シートの上に砕石を敷き詰める手法で、雑草の繁茂を防いできた。しかし、今回の7カ所目の発電所は、グラウンドの跡地という、きれいで平坦な土地だったこともあり、「できるだけそのままの状態で活用したかった」という。

 防草シートの上に砕石敷き詰める代わりに、以前から関心を持っていた自律走行型のロボット除草機を採用した。

 この採用は、借地の条件にも、うまく合った。

 グラウンド跡地の敷地内には、太陽光発電所として借りている場所のほか、その隣には倉庫として活用されている場所がある(図2)。発電事業者の姫路インザイは、グラウンド跡地の敷地内で、この倉庫に向かう通路も除草することを、地主から求められている。

図2●中央に見えるネット付きの柵から右が倉庫への通路
(出所:日経BP)
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 ロボット除草機を使うと、ちょっとした工夫で、この通路まで除草できる(図3、動画)。

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図3・動画●柵の下から出入りして倉庫への通路側も刈る。杭の円盤は車体を挟まない高さに上げた
(出所:日経BP)

 太陽光発電所と通路の間を隔てる柵の横木を、地面から高めに設定したことで、ロボット除草機は、柵にぶつかることなく下を自由に走行できる。これによって、太陽光発電所と倉庫までの通路の間は、ロボット機が自在に行き来できる状態にできる。

 逆に、杭基礎は、円盤の部分を35cm以上に上げておかないと、ロボット除草機が地面と円盤の間に挟まってしまい、抜け出せなくなく恐れがある。

 このため、EPC(設計・調達・施工)サービスを担当したエネテク(愛知県小牧市)に、その意向を伝えて設計に反映させた。

 グラウンドの跡地全体は、元々、高く強固なフェンスで覆われていて、門は施錠できるので、関係者以外は自由に出入りできず、誤ってロボットが外に出て行くことはない。

 こうした環境のため、発電設備の設置前に本格的に除草した以外は、ずっとロボット除草機が、きれいに除草している。これまでのところ大きなトラブルはないとしている。

 冬になると、雑草は枯れる。このため、ロボット除草機は発電所から引き上げて本社で保管し、春になると再び発電所に“派遣”する。

 このハスクバーナのロボット除草機は、伸びた芝や草を刈るというよりも、不要に伸ばすことを防ぎ、常に一定の高さに保つことに向く。

 リチウムイオン蓄電池を使って駆動し、四輪の間に回転刃を備えている(図4)。回転刃は、乗用型草刈機が備える鎌のような刃ではなく、かみそりの刃のような薄いもので、これを3枚備えている。この刃で芝や草を刈る。

図4●回転刃は薄い
(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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 自律走行しながら刈る範囲は、充電ステーションを発着点として、走行時のガイドとなるワイヤーを地表に張って囲んで設定する。ワイヤーはペグで打ち込む。このワイヤーで囲まれた区域の中を、ランダムに走行しながら草や芝を刈っていく(図5)。

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図5●ワイヤーで設定した区域を自律的に走って刈る
充電量が減ると充電ステーションに戻ってくる。下段は、今回の太陽光発電所における充電ステーションやワイヤーの様子(出所:上から3枚はハスクバーナ・ゼノア、下段の3枚は日経BP)

 地表に張ったワイヤーを通じて、信号を発している。ロボット除草機は、この信号を受信して走行区域の境界を把握している。

 太陽光発電所において、このロボットを使うのに向かない場所があれば、ワイヤーの敷設の工夫によって避けられる。また、柵や杭などを設置しておけば、その前で停止して向きを変え、そこを避けて移動する。

 日本法人のハスクバーナ・ゼノア(埼玉県川越市)によると、地表の状態や走行区域の水平方向の形状などにもよるが、一般的な条件では、満充電時には約2時間走行でき、その間に1時間に約135m2の範囲で草や芝を刈れる。充電ステーションでは、約1時間で満充電となる。

 約2時間、稼働して刈り、その後、1時間かけて充電するというサイクルを繰り返すと、一般的な条件であれば、1日に約3200m2を除草できる。

 刈っている最中に、他の場所よりも草や芝の伸びが大きい場所を検知すると、スパイラル(螺旋)状に走り、重点的に刈りこむモードに変わる。この場所を刈り終えると、通常のランダムな走行に自律的に切り替わる。