特集

来訪者を2倍に増やした米子のメガソーラーのヤギ、現在は「マスコット役」に専念(page 3)

ヒツジとの性質の違いを把握し、適切に活用

2019/11/27 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ
印刷用ページ

ヤギとヒツジで癒しと除草の効果を検証

 ヤギだけでなく、ヒツジがいた時期もある。いずれも、近隣地域の人々とともに同県の目指す「再エネや自然環境が溶け込んだ街づくり」を、多角的に体感でき、同館の活動を癒しの側面から支える要素となってきた。

 ヤギやヒツジを除草に活用する試みは、メガソーラーの売電開始から半年が経ったころにはじまった(図5)。メガソーラーの除草を担当している地元企業、大協組(鳥取県米子市)と取り組んだ。

クリックすると拡大した画像が開きます
クリックすると拡大した画像が開きます
クリックすると拡大した画像が開きます
クリックすると拡大した画像が開きます
図5●2016年の検証時の様子
(出所:日経BP)

 ヒツジやヤギによる除草を試すきっかけとなったのは、「とっとり自然環境館」の周囲に雑草が伸び、予定外の除草が必要になったことだった。メガソーラーの発電設備の設置区域については、当初から除草作業を事業計画に組み込んでいる。しかし、同館の周囲でも、すぐに雑草が伸び、来館者の見学にも影響するほどとなった。

 環境館周囲の除草なので、できるだけ環境保全に配慮した手法を検討した。この意向に対して、大協組がヤギやヒツジの活用を提案。環境館の周囲だけでなく、太陽光パネル設置区域のフェンス内外にも、活用の対象を広げていった。

 ヤギやヒツジによる除草の検証時は、草刈機や除草剤を用いた除草に比べ、騒音や二酸化炭素の排出、土壌汚染といった面での環境負荷の低減効果を挙げていた。除草の効果、草刈機による除草との安全面の比較、除草の品質、来館者や通行者に対する癒し効果も検証した。

 その結果として、一定の除草効果のほか、採食の嗜好性、歩行して踏み倒された草が枯れることによる予想外の除草効果などを公表している。

 ヤギやヒツジは、草を刈るのではなく、食べるので、草刈りで生じる「刈った草の後処理」が不要という利点もある。フェンスに絡みつくように伸びて対応に難渋する発電事業者の多いツル性植物のクズも、ヤギやヒツジは好んで食べる。

 ヒツジにGPS(全地球測位システム)の受信器を取り付け、日ごとの移動距離や行動範囲、頻繁に滞在する地点などのデータを採って、その場所の植生情報と照合し、好んで食べる植物の種類や特徴が、事前の予想とどの程度、合致するかも調べた。

 「斜面」については、ヒツジは苦手だが、ヤギは得意だ。太陽光パネルに近い場所には、ヒツジは近づけられるが、ヤギは近づけられない。ヤギは、パネルの上に登ってしまうためで、ヒツジにはこうした心配がなく敷地内に放しておける。

 動物が相手なので、どの面積で、どの植物を除草するために、どのタイミングで、どの期間、ヒツジを何頭、ヤギを何頭入れれば除草が完了するのかといった、机上の計算だけではうまくいかない。実際に試してみると、わからないことばかりで、一つ一つ確かめていったという。

  • 記事ランキング