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南相馬の農業を「半農半エネ」で復興、収益の基盤に

ソーラーシェアリングで風評被害を乗り越え、農地を次世代に引き継ぐ

2020/02/06 05:00
金子 憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ
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「次世代に農地を残したい」

 福島県南相馬市は、市域の多くが福島第一原発から30km圏内にあり、原発事故の後、20km圏内は住民が避難し、作付けも制限されていた。加えて、風評被害もあり、農業から離れる人が増え、避難指示の解除後も農業の担い手不足が続いている。

 「このままでは、農業の再生は容易でない。次の世代に農地を残していくために、何ができることはないか」――。一般社団法人・えこえね南相馬研究機構の高橋荘平理事長は、同市内でソーラーシェアリング(営農型太陽光)を始めたきっかけをこう話す(図1)。

図1●えこえね南相馬研究機構が南相馬市で運営している営農型太陽光
(出所:日経BP)
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 南相馬市は、2012年10月に「南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン」を策定し、2030年に市内の電力需要をすべて再エネで賄う、いわゆる「RE100」(再エネ100%)目標を掲げた。

 えこえね南相馬研究機構は、こうした市のエネルギー政策と呼応し、再エネ導入による街づくりを市民の視点から考え、実践していくことを目的に2013年3月に設立された。

 同市内では、すでに鹿島・原町地区の複数サイトにメガソーラーが稼働し、現在、建設の進んでいる小高区の3サイトを合わせると、沿岸部には、合計で約200MWのメガソーラーと9.4MWの風車が軒を連ね、全国有数の再エネ設備の集積地帯になる。

 こうした大規模な再エネの集積によるクリーンエネルギーの生産は、長期的には原子力災害による風評被害を払拭していく効果が期待できるものの、その売電収益は、直接的に地域の住民や農業従事者に還元されるものではない。

 えこえね南相馬研究機構の高橋理事長は、「農業の再生が停滞するなか、農家自身が副業として固定価格買取制度(FIT)による太陽光発電事業を行えば、その売電収入が、農家の収益基盤を下支えできる。農業収入の目減り分を補い、南相馬の農業が継続できるのではないか」と考え、営農型太陽光に目を付けたという。

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