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活用に悩む「休廃校のプール」で水上型太陽光、養殖や自家消費にも期待

14円/kWhで鹿児島から広がる

2022/07/01 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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 鹿児島県の南西部で、使われなくなった学校のプールを活用した水上太陽光発電所が次々と稼働を始めている(図1)。

図1●鹿児島県南さつま市の旧・久木野小学校の例
図1●鹿児島県南さつま市の旧・久木野小学校の例
(出所:エルム)
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 学校のプールを活用した水上太陽光発電所を開発・運営しているのは、電子機器などを手掛けるエルム(鹿児島県南さつま市)である。

 同社の本社がある南さつま市周辺で、休廃校した小中学校のプールの水面に太陽光パネルを浮かべている。すでに3カ所で売電を開始し、ほかに4カ所で設置を進めている。

 学校のプールを使う利点は、設備をそのまま使うことができるため、造成などの大規模な工事が不要なことである。初期投資は、太陽光パネルを水面に浮かべるほかには、ほぼ電気工事のみに限られる。

 太陽光パネルはプールの水面に浮かべ、パワーコンディショナー(PCS)は更衣室に置く。

 固定価格買取制度(FIT)に基づく太陽光発電所では、部外者が発電所内に立ち入れないようにすることが求められているが、これも学校の敷地が塀や門、フェンスで囲われている上に、プールもフェンスで囲われている。これも好都合である。

 稼働してからも、地上設置型で苦慮する雑草に悩まされることがほぼない。プールの水中に藻などが過剰に発生することも少ない。もし藻が過剰に発生する環境だった場合でも、農業用ため池とは異なり、水を他の用途に使ったり敷地外に排出することがないので、薬剤を使って対策できる。

 エルムによると、学校のプールの水面を太陽光発電に活用しようと考えたきっかけは、同社が事業化していた追尾型の太陽光発電システムに対して、水上に設置したいという相談を受けたことだった。

 検討した末、水上での追尾型は実現しなかったものの、同じ時期に、休廃校した公立の小中学校・高校のプールの活用に関する相談を受けたことで、アイデアが相互補完的に広がり、使われなくなった学校のプールでの太陽光発電事業につながった。

 国内では少子化などの影響により、主に地方において公立の小中学校・高校の休廃校が増えている。文部科学省によると、2021年5月時点で8580校が廃校しており、その数は年平均約350校のペースで増えている。鹿児島県内でも235校の廃校がある。

 こうした旧小中高校の施設のうち、その後も比較的に活用されているのは校舎だった建屋である。地域の福祉施設をはじめ公共的な施設などとして広く活用が進んでいる。

 しかし、プールが活用される例は少ない。当然ながら、水泳以外には使いにくいことが大きい。

 駐車場やテニスコートに転用している例はあるが、水を張っていた場所は埋めなければ転用できない。主にコンクリートで埋められており、その施工費は数千万円を要するとされている。悩ましい設備となっているのだ。

 このようにして最初の設置例となったのは、同社の本社のある南さつま市にある旧・津貫小学校のプールだった。市からプールを借りて発電設備を設置した。

 2021年1月に売電を開始した。固定価格買取制度(FIT)上の売電単価は14円/kWhである。

 PCS出力は49.5kWで、低圧配電線に連系している。オムロン製を採用し、出力5.5kW機・9台を更衣室に置いた。

 太陽光パネルの出力は59.940kWで、ハンファQセルズ製を採用した。出力370W/枚・162枚を導入し、大プールに99枚、小プールに18枚を浮かべ、プールサイドにも45枚のパネルを並べた。

 旧・津貫小学校のプールは、近隣の人たちにとって思い入れの強いプールだった。子供たちのために近隣地域で資金を出し合って建設を実現したという経緯があった。

 しかし、休校となって使われなくなってしまった。そうしたところに、再び水を張ってプールの状態に戻り、太陽光発電に使われた。

 近隣地域から、思い入れの強いプールを再び活用してくれたことへの感謝が伝えられたという。

 地上設置型の太陽光発電所が、災害への危惧や景観問題などで反対運動を招いている例がある中、プールの場合、このように地域に感謝されることが多いという。それだけ他の用途での活用が難しいことの裏返しとも言える。

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